昨今、会計処理に限定されず、統合管理が可能な「会計ソフト」が増えています。クラウド対応が多く、安価で導入できることから徐々に注目を浴びています。しかし、そうした会計ソフトを「ERP(エンタープライズ・リソース・プランニング)」として導入しようとすると、コンセプトの違いから失敗することも少なくありません。
そこで今回は、会計ソフトとERPの違いについて、詳しく解説していきます。
会計ソフトはあくまで経理領域、ERPは複数業務をカバー
会計ソフトとは、その名の通り、会計処理や財務諸表作成など、経理業務を効率化するためのソフトウェアです。従来の会計ソフトと言えばPCにインストールして利用するのが一般で、価格は数千円台から10万円以上と、企業の規模や経理業務内容を合わせて選んでいました。
一方最近の主流になっているのは「クラウド型会計ソフト」です。「クラウド」とはインターネット上で提供されるサービスの総称で、ソフトウェアをPCにインストールすることなく利用できます。近年は「社内にインフラを持たず、システム運用を効率化する」という考えが一般になってきたので、クラウド型会計ソフトを導入する企業も増えています。
調査会社の株式会社MM総研によれば、会計ソフトを導入している企業のうち、13.2%がクラウド型会計ソフトを利用しているようです。
引用:株式会社MM総研「クラウド会計ソフトの利用状況調査(2017年3月末)」
前述の通り、会計ソフトの領域は経理業務に限定していて、統合管理が可能な会計ソフトであってもその特徴は変わりません。「バックオフィスを効率化する」というコンセプトで、ERP化した会計ソフトという製品もあります。しかし、そうした製品も往々にして業務領域は限定的です。
対するERPの業務領域は、「組織全体」です。たとえばNetSuiteでは、次のような業務領域をカバーしています。
≪NetSuiteがカバーする業務領域≫
これでもまだ一部です。NetSuiteでは製品の組み合わせによって、組織全体の業務をまんべんなくカバーできます。もちろん、すべてのERP製品がこのように全体をカバーするわけではありません。
「会計ソフト」について詳しくは、こちらの「会計ソフトの種類とそれぞれの特徴とは」記事で是非ご覧ください。
ERPは複数業務アプリケーションの一元管理ができる
ERPを導入するメリットの一つに「業務アプリケーションの一元管理」があります。これは、先に紹介した複数の業務領域(システム)を、すべて統合して管理できるという意味です。
会計ソフトでは、一部の業務を統合管理できても、ERPのように組織全体の業務を管理できません。分断化されたシステム環境によって、運用負荷が課題となっている企業は多いのではないでしょうか?
こうした課題を解決できるのは会計ソフトではなく、ERPなのです。
例えばERPでは、これまで個々に運用管理を行ってきた業務アプリケーションに対し、管理を一ヵ所で集中的に行えます。セキュリティポリシーの適用も、アクセス権限設定も、すべて同一管理画面から行えるのです。
これにより運用負荷を大幅に軽減し、情報システム担当者を本来業務に集中させられます。
NetSuiteのように、クラウド型ERPなら尚更、管理効率がアップします。システム運用は提供事業者が行うので、ユーザー企業としてはノータッチで業務アプリケーションを運用できるのです。
[RELATED_POSTS]ERPはBI(ビジネス・インテリジェンス)でデータ分析ができる
ERPにできて会計ソフトのできないこと。その一つが「BIによるデータ分析」です。ERP製品の多くは、BIを標準搭載しています。ちなみにBIとはデータ分析基盤であり、専門家でなくともデータ分析を効率良く行えます。
BIを搭載している、あるいは連携できることで、企業のデータ分析を促進できます。従来のシステム環境では、各業務システムから生成されるデータを集計・加工・分析するために、かなりの手間と時間を費やしていました。そのため、1ヵ月前のデータを分析している、といった状況が少なくありません。
ERPとBIがあれば、こうした問題は一気に解消します。ERPは各業務システムから生成されるデータを一元管理し、BIでそれを分析します。このため分析作業が非常に迅速で、リアルタイムなデータ活用が実現します。
「経営ダッシュボード」という機能では、経営者が必要な情報を必要なときに取得するために、カスタマイズ可能な情報管理画面を提供します。
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会計ソフトでは海外展開に対応できる製品が非常に少ない
海外展開をする企業において、会計ソフトだけではあまりに不十分です。中には、海外拠点の会計処理も行える製品もあります。しかし、あくまで会計処理に限定しているので、海外展開を支援するようなソフトウェアにはなり得ないでしょう。
一方、クラウド型EPRは、海外展開におけるシステム基盤として広く注目されています。クラウドなら、社内インフラを整えなくとも、本社と海外拠点で同一のシステムが容易に導入可能です。さらに、インターネット経由での情報共有も促進します。
例えばNetSuiteでは、海外展開に対応するための機能を多数備えています。19種類の言語、190種類以上の多通貨対応に加え、海外拠点を含めたマーケティング管理や顧客管理など、企業の海外展開を協力に支援します。
会計処理に関しても、各国の会計基準に対応したり、グループ会社全体で単一の勘定科目一覧表を作成したりなど、グローバル対応ならではの機能が豊富です。
今後、海外展開をするのであれば、会計ソフトを見直すのではなく、システム環境全体を根本から見直し、海外展開に対応したERPの導入がおすすめです。
会計ソフトからERP活用へ
現状の会計ソフトからERPへ移行するメリットは、海外展開における支援機能だけではありません。ERPを導入して既存システム環境を見直すことで、組織全体の業務効率化や情報システムの運用負担軽減など、様々なメリットがあります。
従って、現在会計ソフトの見直しを行っている場合、ERP導入も視野に入れてみてはいかがでしょうか?組織全体の業務をカバーするERPで導入することで、まったく新しいビジネス環境を構築し、企業成長のための一手にできます。
「おすすめの会計ソフト17選」について調べてみよう!
まとめ
会計ソフトとERP、その境界線は近づきつつあると考えられています。しかし実際は、明確な違いと隔たりがあり、会計ソフトの導入とERPの導入とでは、そのコンセプトからまったく違います。今後会計ソフトやERPを導入する企業は、これらの違いを明確に理解した上で、自社に最適なシステム環境を構築していきましょう。
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