年に1度の決算では「財務諸表」を作成し、会社の経営状況を利害関係者(ステークホルダー)に開示します。この財務諸表に対して「数字が多くて難しそう…」というイメージを持っている方が多いかもしれません。しかし、財務諸表についてしっかりと理解すればそこから会社の経営状況を簡単に読み解くことができます。
ビジネスパーソンにとって財務諸表について理解しておくことは、今や当たり前のスキルになりつつあります。「財務諸表って結局何なの?」という方は、本稿で分かりやすく解説しているのでぜひ参考にしてください。
財務諸表とは?
会社が1年に1度、それまで記帳した帳簿をしめて成績を数字として示すことを「決算」といいます。その成績表として作成するのがいわゆる財務諸表です。財務諸表は「学校の期末テスト」に例えると分かりやすいかもしれません。
期末テストではそれまで行ってきた勉強の成果が出ます。その成果をしっかりと受け止めて、問題点等を洗い出せば次のテストに活かすことができますね。しかし問題点を放置したままにすると苦手分野を克服することはできず、次の期末テストでは悪い点数が付く可能性があります。
つまり財務諸表とは利害関係者に会社の経営状況を知らせると同時に、会社にとっての総合的な「成績表」のようなものでもあります。
[RELATED_POSTS]財務諸表の種類
財務諸表とは特定の書類を指すのではなく、決算に必要な書類をまとめて財務諸表といいます。その種類を紹介しましょう。
賃借対照表
賃借対照表とはある時点において、会社がどれくらいの資産を保有していて、どれくらいの負債があるかを明示するための書類です。賃借対照表を観ればその会社がどこから資金を調達して、それをどう使用したかが判断でき、会社経営の安全性や健全性を把握することができます。
たとえば「会社が今持つ資産の中で現金化できるものはどれくらいあるか?」や「事業に必要な資金を過度に調達していないか?」などの情報を、賃借対照表を見るだけで理解できます。
損益計算書
事業年度間に会社がどれくらいの費用を投じ、どれくらいの利益を得たかを示すのが損益計算書です。その中でも利益ごとにいくつかの種類が分かれていることが通常で、以下が代表的な指標になります。
売上総利益
商品の販売やサービスの提供によって得た売上高から、売上られた商品またはサービスにかかった原価を差し引いた金額のことです。企業にとって最も基本的な利益の考え方となります。
営業利益
売上総利益から仕入れ以外の人件費、広告費、光熱費等の販管費を差し引いた金額のことです。「商品や原材料を仕入れて販売する」という本業で稼いだ利益を指します。
経常利益
営業利益以外に預金利息や為替差損金など、会社の本業とは異なる財務活動によって得られる利益と費用を含めて計算した金額のことです。会社の本業で利益を創出していたとしても、利息の支払いや為替レートで大幅な損失が出ている場合、その会社経営は健全とは言えません。これを判断するためにも経常利益の開示が大切です。
当期純利益
事業年度に計上されるすべての収益からすべての費用を差し引き、当期に得られた最終的な純利益のことです。経常利益に対して特別利益と特別損失を加減し、法人税などを控除して計算されたものが当期純利益になります。
キャッシュフロー計算書
文字通りお金(キャッシュ)の流れ(フロー)を計算するための書類です。会社の一定期間における収入(キャッシュイン)と支出(キャッシュアウト)を捉えて、キャッシュフロー計算書を見えることでお金がどのように増え、どのように減ったかが把握できます。
たとえば営業活動によるキャッシュフローがプラスであれば、その会社の営業活動から得られた利益で会社にお金が入ってきたことを示します。この場合会社の経営状況は良好と判断できます。これに対して投資活動によるキャッシュフローがプラスであれば、固定資産や有価証券などを売って会社にお金が入ってきたことになります。この経営状況は必ずしも良好ではなく、必要に迫られて現金化した可能性があります。従ってキャッシュフロー計算書はプラスであれば経営状況が良好とは必ずしも言えません。
さらに、財務活動によるキャッシュフローがプラスの場合、借入や増資によってお金が増えたことを意味するので、これも経営状況が良好とは言えません。逆にマイナスの場合は借入を返済する資金に余裕が生まれたと考えられます。
こうしたキャッシュフロー計算書を作成する義務を持つのは、株式市場で株式を公開している会社のみです。しかしながらキャッシュフロー計算書を作成することでお金の増減を確認でき、会社の経営状況を細かく評価できるので株式を公開していない会社でも作成することをおすすめします。
財務会計で押さえておきたいポイント
こうした財務諸表を作成するための業務を「財務会計」といいます。1949年に会計基準の1つとして企業会計制度対策調査会が発表した「企業会計原則」によって、財務会計を実施するにあたっての原則が示されています。
真実性の原則
企業会計は、企業の財政状態及び経営成績に関して、真実な報告を提供するものでなければならない。
正規の簿記の原則
企業会計は、すべての取引につき、正規の簿記の原則に従って、正確な会計帳簿を作成しなければならない。
資本利益区別の原則
資本取引と損益取引とを明瞭に区別し、特に資本剰余金と利益剰余金とを混同してはならない。
明瞭性の原則
企業会計は、財務諸表によって、利害関係者に対し必要な会計事実を明瞭に表示し、企業の状況に関する判断を誤らせないようにしなければならない。
継続性の原則
企業会計は、その処理の原則及び手続を毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない。
保守主義の原則
企業の財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合には、これに備えて適当に健全な会計処理をしなければならない。
単一性の原則
株主総会提出のため、信用目的のため、租税目的のため等種々の目的のために異なる形式の財務諸表を作成する必要がある場合、それらの内容は、信頼しうる会計記録に基づいて作成されたものであって、政策の考慮のために事実の真実な表示をゆがめてはならない。
これらの要件はあくまで原則ですので、そこから多少逸脱したからといって罰則はありません。業界や会社によって財務会計を行うためのプロセスは違います。そのため、これらの「○○性」という曖昧さは業界や会社が違えど同じように財務会計を実行できるための考慮なのです。
もちろん、文飾決算など虚偽の経営状況を開示することは罰則対象になります。
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ERPでスムーズな財務会計を
いかがでしょうか?本稿では財務諸表について分かりやすくまとめてみましたが、少しでも理解できたと思っていただければ幸いです。これらの財務諸表を作成するには専門知識と経験が必要であり、手間もかかります。これを効率良く行うためのITソリューションがERP(Enterprise Resource Planning)です。ERPは統合的なITシステム環境を構築するIT製品であり、財務諸表を作成するためにあらゆる情報をスピーディに提供します。財務諸表を効率良く作成したいという場合は、ぜひERP導入をご検討ください。
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