赤字プロジェクトはなぜ生まれてしまうのか?無理な納期や、価格競争の激化、考えられる理由はいくつかありますが、その中でも特に多いのが「プロジェクト収支の管理ができていないこと」ではないでしょうか。
プロジェクトにおける収入と支出のバランスは当然ながら収入が上回っていないといけません。しかし、プロジェクトの収支は複雑かつ色々な要素が絡み合っているので、プロジェクトが完了するまで収支の結果が分からない、という企業は意外と多いのです。
ただしその現状に「仕方ない…」と諦めてしまっては、いつまで経っても赤字プロジェクトは無くなりません。そこで今回はプロジェクト収支を管理することの意義と、その方法に、さらにERPに求められるプロジェクト収支やプロジェクトポートフォリオ管理機能についてご紹介します。
プロジェクト収支管理とは?
プロジェクト収支を管理する目的は、プロジェクトの途中でも収支を可視化することで、無駄なコストを削減したり収支バランスに応じたプロジェクトの舵切りを行い、赤字プロジェクトを無くすことです。ただし言葉で説明するほど簡単なものではありません。
たとえばソフトウェア開発においてプロジェクトの支出は人件費(工数)です。だからと言って、プロジェクトに関わる人件費をそのまま計上すれば良いというわけではありません。さらにプロジェクトのチームは変化しますし、納期が延びたり、遅延を取り戻すために人材を投入したり、プロジェクトはまるで生き物のように変わっていきます。
加えてプロジェクトによってはマイルストーンごとに収入が入るというケースもあるので、プロジェクト収支の管理は複雑を極めます。とはいえプロジェクト収支管理を徹底していないと、状況はより悪化するでしょう。
たとえば遅延しているソフトウェア開発プロジェクトに人員をさらに投入すると、利益率は当然下がります。この時プロジェクト収支を管理できていれば、最低限の利益率を確保するためのボーダーラインはどこかを把握できるため、過剰な人員投入にならず赤字を防ぐことができます。
これは製造業でも、小売業でも、コンサルティング業務でも同じです。どんな企業でもプロジェクト収支を管理していないと、いとも簡単に赤字プロジェクトが生まれてしまうのです。
プロジェクト収支管理の基本活動
プロジェクト収支を管理するための基本活動は“計画・維持・改善”の3つです。
プロジェクト収支計画
プロジェクトを開始するにあたって予算を組みますが、プロジェクト収支計画では単に予算計画を立てることではありません。プロジェクトのマイルストーンごとに収支の計画を立てることが重要です。
そのためプロジェクトにどれくらいのリソース(人員、費用、設備)を投資するかだけでなく、シーンごとに発生する支出とマイルストーンごとに発生する収入まで計画します。プロジェクト収支の計画があるか無いかでは管理に大きな差が出ます。
プロジェクト収支維持
プロジェクト収支計画を立てても、計画通り事が運ぶのは稀でしょう。さらに計画よりも収入のバランスの方が多かったということも珍しいでしょう。そのためプロジェクト収支維持は、基準となる計画から逸脱した収支をできる限り基準に近づけるため、何らかの対策を講じることです。
プロジェクト収支改善
最後のプロジェクト収支の維持だけでなく改善にまで取り組むことで、計画基準よりも支出のバランスを減らして高利益なプロジェクトへと成長させていきます。プロジェクト収支改善を徹底できている企業には赤字プロジェクトは少なく、ほとんどが高収益な企業体質を持ちます。
これらの“計画・維持・改善”は、実は原価管理における基本活動の3原則です。プロジェクト収支監理とはいわばプロジェクトにかかる原価を監理することにあるので、プロジェクト収支管理の基本活動と同じなのです。
プロジェクト収支管理ができるERPとは?
ERPについて詳しく知らないという方もいるかと思うので、まずはその概要について説明します。
ERPとは“Enterprise Resource Planning”の略であり、日本語では“経営資源計画”と言われています。これは1980年代に登場した“MRP(Material Resource Planning:資材所要量計画)”という、製造業における生産管理手法の一種を経営全体に適用した管理手法です。
端的に言えば「組織全体の情報を集約、一元管理して、情報活用を進めると共に部門最適化から全体最適化へと企業体質を変化させていこう」という取り組みです。ちなみにこれを実現するためのITソリューションもERPと呼ばれます。
ITソリューションとしてのERPには、主に次のような業務システムが統合されています。
- 財務会計システム
- 生産管理システム
- 在庫管理システム
- 調達管理システム
- 購買管理システム
- 販売管理システム
- 顧客管理システム
- 営業支援システム
- 勤怠管理システム
- 人事管理システム
- Eコマースシステム
- プロジェクト管理システム
- ビジネスインテリジェンス
これはオラクルが提供するクラウドERP製品を参考にしたもので、当然ながら製品によって提供している業務システムは違います。この中でプロジェクト収支管理を実行できるのがプロジェクト管理システムです。
ではなぜ、プロジェクト収支管理を実行するためにERPが必要なのでしょうか?単体システムとして導入されているプロジェクト管理システムではダメなのでしょうか?
結論から言えば、単体システムでもダメではありませんがシステムがカバーする範囲が狭いため、適切なプロジェクト収支を管理できない可能性があります。その点、ERPは組織全体の業務システムをカバーしており、かつ全体がシームレスに連携しています。データの受け渡しもスムーズに行われるため、あらゆる視点からプロジェクト収支を“完全に可視化”できるのが大きな利点です。
さらに、個別プロジェクトの収支管理はもちろん複数のプロジェクトをまたいだ収支管理も可能なので、赤字プロジェクトを徹底的に排除するための取り組みが実行できます。
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ERPに求められるプロジェクト収支管理機能
皆さんがプロジェクト収支管理をERPで実行したいと考えた場合、ERPを選定するにあたって次のような機能を備えているものを選択してください。
プロジェクト収支の把握
プロジェクトごとの売上、仕入れ、勤怠、経費の管理
プロジェクトごとの予実管理
プロジェクト予算の計画、プロジェクト収支の予測、プロジェクト予算の変更履歴、プロジェクト予算の申請および承認
プロジェクトごとの債権・債務管理
債権管理(請求、入金などの管理)、債務管理(仕入れ、支払い、未払いなどの管理)
ドキュメント監理
見積書や請求書、発注書などの作成および発行・保存
プロジェクト内の分割売上・請求
同一プロジェクトに行える複数回の売上計上処理、異なる計上日での処理、請求の分割処理
ビジネスインテリジェンス
プロジェクト収支情報を活用した情報分析とレポートの提出
これらを基準にすれば、プロジェクト収支管理を徹底できるERP選定が行えます。
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まとめ
プロジェクト収支はそのバランスを可視化するだけでなく、徹底した管理によって高い利益へと転じる“攻めのIT戦略”が大切です。それを実現するITソリューションとしてERPが存在しています。皆さんの企業でも、ERPを活用したプロジェクト収支管理をぜひ取り入れてみてください。
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