在庫管理システム
在庫管理システムとは?
製造業や小売業、食品業など「商品」を扱う企業において重要な業務が在庫管理です。そしてこれを効率的かつ正確に行うのが在庫管理システムです。
在庫管理システムの特徴は、単独では成立しないということです。つまり入荷と出荷によって在庫は変動するため、調達や生産などによる入荷情報と、受注などに伴う出荷情報を合わせて管理する必要があるためです。たとえば製造業なら生産管理システム、小売業なら販売管理システム、EコマースならECシステムなどビジネスモデルによってどの業務システムと連携すべきかが変わります。
在庫管理システムの基本は帳簿上の在庫数と実際の在庫数を合わせることで、これが徹底されていないとビジネスに様々な悪影響がおよびます。
背景/目的
業種や規模を問わず、あらゆる企業にとって在庫とは「現金化を待つ商品」です。小売業では在庫を販売することで利益を得ますし、製造業では部品や原材料はいずれ完成品となり、それを販売することで利益を得ます。つまり在庫は会社の資産ということです。
ですが在庫は多いほど良いというわけではありません。市場の需要に対して在庫が過剰だと売れない在庫が生じ、現金化ができないために会社のキャッシュフローを悪化させます。過剰在庫によって黒字倒産が起きる可能性もあるでしょう。
反対に在庫数が少なすぎると多くの販売機会を逃してしまうことになるので、利益を確保できないかもしれません。多すぎても少なすぎてもよくないのが在庫であり、在庫管理は適正在庫を保つことが目標となります。
そこで在庫管理システムは他の業務システムと連携してデータのやり取りを行うことで、適正在庫を維持するための情報を提供します。
課題
在庫管理システムを導入したからといってあらゆる問題を解消してくれるわけではありません。導入にあたっていくつか課題があります。
まず大切なのが在庫管理システムと他の業務システムとの連携です。すでに生産管理システムや販売管理システムを導入している企業の場合、在庫管理システムはそれらとシームレスに連携しなければなりません。システム同士の連携性が低いと在庫管理システムの効果を最大限引き出すことは難しくなります。
他にも様々な課題があります。たとえば在庫管理のための倉庫を複数持っている企業であれば、各倉庫の在庫情報を統合管理することが必要です。しかし、在庫管理システムによっては複数拠点のデータ統合が難しい場合があり、これを解決するために多額の投資が必要です。
また、在庫情報を経営に生かすというのも大きな課題でしょう。在庫管理システムから生成された情報は需要予測など様々な用途で活用できますが、その情報を管理・分析する基盤が無いと成り立ちません。
このように、在庫管理システムのの課題を多く解決してくれる在庫管理システムですが、システム導入自体にも様々な課題が一般的には存在します。
ソリューション(解決)
在庫管理システムの導入や活用に関する課題を解決するためのソリューションの一つが「クラウド」です。クラウドとは、インターネット経由で提供されるサービスのことで、現在では様々な業務システムがクラウド化しています。在庫管理システムについても例外ではなく、クラウドとして導入することで多くの課題を解決できます。
たとえば複数拠点での在庫一元管理に関しては、各拠点に在庫管理システム利用端末とインターネット接続環境があれば問題ありません。クラウドはどの拠点からも同じサービスインスタンスにアクセスできるため、在庫情報も一元的に管理することが容易です。
次に他の業務システムとの連携に関する課題については、クラウドERP(エンタープライズリソースプランニング)で対応することができます。ERPとは経営や事業に必要なシステムやデータを一つのプラットフォーム上にまとめたもので、その一つの業務として在庫管理が位置付けられます。さらにこれがクラウドで提供されることで、複数の拠点をまたがって導入することも容易であり、初期投資のコストも抑えることができます。
クラウドERPとして在庫管理システムを導入するメリットは、複数の業務システムが同じデータを参照しているため、リアルタイムに正確なデータ連携が可能になることです。これにより、在庫管理に求められる正確性を担保することが可能になります。
機能
在庫管理システムの機能は生産管理システムや販売管理システムなどと連携した処理を行うものが多いでしょう。その中で生産管理システム固有の機能といえば「棚卸し」です。棚卸しとは実際の在庫点数を確認し、在庫管理システム上の帳簿と照らし合わせて違いがあれば情報を修正するという作業です。
実際の棚卸し作業は人が行う部分が多く、在庫管理システムでは棚卸し作業に必要な帳簿を作成したり、棚卸し情報にもとづいて在庫データを修正するといった機能が備わっています。
この他重要な機能が「在庫照会」です。在庫管理システムは適正在庫を維持するために欠かせないものですが、在庫管理システム上の在庫データを確認し顧客へ素早く納期回答することも大切です。在庫管理システムの中には営業部門から在庫照会を行う機能もあります。
メリット
在庫管理システムによって得られるメリットは次の3つです。
1. 現場作業精度向上
在庫管理システムを導入すると現場での手作業は少なくなります。たとえばハンディターミナルと連携するシステムなら、これまで手作業で行っていた検品作業などを専用機器を使用してスピーディに実行できます。そうして現場の作業精度が上がるということは、在庫管理全体としての生産性が向上し、さらに信憑性の高い情報を提供できます。
2. コスト削減
在庫管理システムを正しく運用すれば「在庫の圧縮」も可能です。適正在庫を維持することは過剰在庫を防止し、在庫不足も防ぐため会社のキャッシュフローを維持・改善しつつ販売機会を逃しません。そのためコスト削減になり、かつ企業の利益も向上します
3. リアルタイムなデータ活用
個別のシステムなどで在庫を管理している場合、リアルタイムに情報を反映したり収集することが難しいというデメリットがあります。そのため在庫情報の活用が進まず、需要予測は調達計画も上手くいきません。一方在庫管理システムでは、導入することで他ITとの連携によってリアルタイムな情報を提供し、情報活用によって様々な業務を最適化できます。
デメリット
デメリットではないですが、注意する点があるとすると、在庫管理システムへの投資とそこから得られる効果のバランスを考慮するということです。いわゆる「費用対効果」を意識しないと適切な在庫管理システム導入に結びつかない可能性があります。
在庫管理システムは管理規模が大きくなると相応の投資が必要になります。そのため投資の効果をどのように測定するかなどを事前に検討しておく必要があります。
選び方のポイント
在庫管理システム導入では、単体システムとして導入するかERPとして統合環境を導入するかが大きな選定ポイントになります。いずれにせよ他の業務システムとの連携という要件は必要であるため、あらかじめ統合されているERPは非常に有力な選択肢になります。
さらに、オンプレミス型かクラウド型かによって投資の規模やシステム運用時のメリットが変わります。クラウド型は常に最新の機能を利用可能で、ハードウェア等の設計や調達も不要であるため初期投資も抑えることができ、費用の最適化と最新機能によるメリットの享受が可能です。
まとめ
在庫管理は経営そのものと言われることがあります。つまり、多くの業務の要とも言える領域であるため、よりシステム的な統合が重要であり、リアルタイム性と正確性が求められるシステムでもあります。クラウド型ERPのメリットによってこれらを両立することができます。ぜひご検討ください。