プロジェクトポートフォリオ管理システム
プロジェクトポートフォリオ管理システムとは?
「ポートフォリオ」はあいまいな言葉かもしれません。
もともとは書類を持ち歩くための「紙ばさみ」や「書類ケース」を意味する言葉です。そこから転じて金融機関や投資家が所有する「金融資産の一覧」という意味でも使用されています。その結果「投資対象となるプロジェクト」という意味で使用されます。
従ってプロジェクトポートフォリオ管理とは、現在進行形または将来的に投資する可能性が高いプロジェクトを全体として管理し、評価するためのマネジメント手法ということです。
これに類似したマネジメント手法としてEPM(エンタープライズプロジェクト管理)というものがあります。これは、企業が持つ一つ一つの業務をプロジェクトとして捉えて、それぞれの目標達成に向けた適切な管理をすることです。
プロジェクトポートフォリオ管理とEPMは対の関係にあるのではなく、補完的関係にあります。ERPによってプロジェクト化した一つ一つの業務を、プロジェクトポートフォリオ管理によって一元的に管理し、優先的に投資すべきプロジェクトを明確にします。
背景/目的
プロジェクトポートフォリオ管理が登場したのは1980年代といわれています。ある製薬会社が、社内の開発プロジェクトの把握と資源配分などを行う名目で取り入れられました。その概念は徐々に拡大し、1990年代には米国でツールが開発され、日本では2000年代から徐々にプロジェクトポートフォリオ管理システムが導入されていきます。
プロジェクトポートフォリオ管理システムが登場するためのプロジェクト管理といえば、Excelなどの表計算ソフトを使用したものが一般的でした。しかしそこにはいくつかの問題があります。
まず、プロジェクト担当者が公平な基準に従ってプロジェクトへの投資対効果を評価し、それが基準以上のものだったとしても担当者個人的な見解として捉えられがちなことです。結局は役員や経営者の判断に従ってプロジェクトが開始する場合がほどんとだったでしょう。
もう一つの問題はプロジェクトがスタートした後です。無数のプロジェクトが同時に進行したり、開始・終了する中でそれぞれの成功度を評価することが、人手ではカバーしきれないことです。投資すべきプロジェクトを吟味して、終了するまで継続的に評価することがベストなのですが、これに組織として取り組むためにはExcelでは不十分だったのです。
そうした背景もあり、進捗管理だけでなく投資対象となるプロジェクトの優先付けや評価などをシステム化した、プロジェクトポートフォリオ管理システムが注目され出しました。
課題
一般的なプロジェクト管理が「木を見るもの」だとして、プロジェクトポートフォリオ管理システムはその集合体である「森を見るもの」です。個々のプロジェクトを管理するだけでなく、全体として捉えて各プロジェクトを評価して、優先的に投資するべきプロジェクトを明確にします。
しかし現状として、木を見るプロジェクト管理と森を見るプロジェクトポートフォリオ管理システムは別々の製品として提供されていることが少なくありません。一般的なプロジェクト管理ツールで個々のプロジェクトを管理し、それをプロジェクトポートフォリオ管理システムに取り込むことで全体としての管理を実行する必要があるのです。
もう一つの課題はプロジェクトポートフォリオ管理において「何を見るのか」が明確になっていないことです。森を見るのは確かなのですが、木1本1本のどこを見て全体を評価するのかが明確になっていないと、結局のところ全体を管理することはできません。
ソリューション(解決)
プロジェクトポートフォリオ管理システムの課題を解決する方法は単純明快です。それは、木を見る個々のプロジェクト管理と、森を見るプロジェクトポートフォリオ管理を統合した製品を選ぶことです。ただし注意点もあります。
一般的なプロジェクト管理とプロジェクトポートフォリオ管理を統合した製品では、システムとしての柔軟性が高い傾向にあり、結局のどこを見て評価すべきなのかが分からないという点です。そのため企業はどういった切り口でプロジェクトを評価し、優先順位を付けるかを事前に検討し、導入すべき製品を検討することが大切です。
機能
プロジェクトポートフォリオ管理システムでは次のような機能を備えています。
- プロジェクト一覧
- プロジェクト集計
- プロジェクト分析
- プロジェクトナレッジ管理
- プロジェクト標準化
- プロジェクト要員負荷
これらの機能は複数のプロジェクトを一つに束ねて管理するためのものです。もちろん、プロジェクト個々を管理するための進捗可視化機能なども備わっています。
メリット
プロジェクトポートフォリオ管理システムを導入する最大のメリットは、人手レベルでは不可能なプロジェクトの評価が行え、人材と投資の「選択と集中」ができる点です。たとえばIT関連プロジェクトは世界中で増加の一途を辿っています。そのため企業のCIO(最高情報責任者)には各部門から色々な案件が寄せられます。しかし、情報システムの予算には一定の枠しかないので、それらすべてを開発することは困難です。
そこで、CIO並びにIT部門は数多く寄せられる案件からどれが「事業戦略に結びつくものなのか?」を評価し、人材と資源の選択と集中させることが大切です。プロジェクトポートフォリオ管理システムはいわば、この「選択と集中」を実現する製品であり、それによって企業は高い投資対効果を得ることができます。
デメリット
プロジェクトポートフォリオ管理システムのデメリットは、これまでの管理プロセスを一新する必要があるため、その対応に時間がかかるという点でしょう。ただしこのデメリットに関しては事前に運用計画を立てることで、回避できるものでもあります。さらにプロジェクトポートフォリオ管理システムはわずか1年未満で投資回収できることが多いので、適切な運用を心掛けることでデメリットを解消できます。
選び方のポイント
プロジェクトポートフォリオ管理システムを選定する上でまず大切なことは、やはり個々のプロジェクト管理と全体的なプロジェクト管理が統合された製品を選ぶことです。その上で、現状のプロジェクト管理状況を整理して、自社にとって必要になる機能要件を固めていきます。
もう一つ重要なことは、プロジェクトポートフォリオ管理システムを提供するベンダーのサポートです。一般的な業務システムと違ってベンダーの協力をあおぐ必要があるため、ベンダーがどういったサービスを提供しているかで選ぶことも大切です。
プロジェクトには様々な業務がかかわっています。それらの業務システムのデータを連携するとこで、より正確なプロジェクトの状況を把握することができます。そのためには、業務データを一元管理するERPは非常に合理的な選択肢です。
まとめ
プロジェクトポートフォリオという観点での管理をどのようにしているでしょうか。企業はプロジェクトの集合体という考え方もあります。そのため、プロジェクトポートフォリオ管理は経営管理に非常に近く、統合されたデータ管理が重要になります。そのためにもERPの活用も含めてご検討ください。
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