設備管理には工場の機械設備の管理、ビルの空調設備の管理、電力設備の管理など色々な種類があります。今回はその中でも工場の機械設備に焦点を当てて、設備管理とそれを効率的に行うための設備管理システムについて説明していきます。
工場によって稼働している設備は当然違います。しかし、なぜ設備管理を行うかという理由は共通しています。それは“保全業務の標準化”と“資源や資産の適切な管理”です。
多くの工場での設備管理実態は、熟練従業員に属人化しているのが現状でしょう。属人化とは特定の従業員しかその業務を扱えないという状態です。この状態が進むと若手従業員の技術が育たなかったり、熟練従業員が不在だと業務が回らないといった問題が発生します。
この属人化を排除するためにはその反対となる“標準化”に取り組むことが大切です。標準化とは、誰もが同じように業務を遂行できるよう、業務プロセスを整理する取り組みです。
もう一つの理由である“資源や資産の適切な管理”。これは、設備投資における無駄遣いを排除するための取り組みです。設備を含め企業全体の資源を管理できていないと、新しい資源に無駄な投資をしてしまったり、設備の問題に気付けず、最悪の場合業務停止といった問題が発生する可能性があります。そのため、設備を含めた資源や試案を適切に管理し、無駄遣いやリスクを排除することはすべての企業にとって重要な課題なのです。
設備管理の業務とは?
設備管理の業務内容は大きく分けて3つあります。それが“事後保全・予防保全・台帳記録”です。
事後保全
事後保全は機能が停止したり性能が悪くなってしまった設備に対し、その原因を究明して対処する業務です。ちなみに機能が完全に停止してしまう故障を“機能停止型故障”、設備の動きが悪くなったり性能が低下する故障を“機能低下型故障”と呼びます。
事後保全ではまずどういった故障が起こっているかを特定するところから始まり、設備関連のドキュメント(仕様書や設計書、対応履歴)を確認しながら故障の原因を突き止めます。
その場で対処できる故障については即座に修理を施し、新しい部品が必要な場合は発注をかけます。部品が無くても設備を長い時間停止できない場合は、別の部品で代用したり暫定対処を取ります。
予防保全
予防保全は設備を継続的かつ安定して稼働するために、点検、修理、部品交換などの保全計画を立てて実行するものです。部品交換の目安については一定期間で交換する“時間基準保全”と、部品の劣化具合に応じて交換する“状態基準保全”の2通りがあります。
設備管理ではいかにして予防保全で対応できる部分を増やすかが大切です。事後保全ばかりだと幾度となく設備が停止するため生産計画に大きく影響してしまします。
最近ではIoTを活用した予防保全や予兆保全に注目が集まっています。設備に複数のセンサーを取り付けることで設備の状態を常に監視して、データ分析ツールを用いて設備の不調を検知します。そこで即座に対応すれば、設備が故障する前に修理を加えられるという保全方法です。
台帳記録
台帳記録は設備が現状どのような状態にあるか?を記録するための業務です。主に次のような情報を記録します。
設備購入にかかわる項目…購入・契約年月日、導入年月日、稼働開始年月日、購入金額、保守金額、購入・リース金額
設備自体にかかわる項目…メーカー、型式、製品名、仕様書、設計書、ロケーション、稼働ライン
整備にかかわる項目…定期メンテナンス状況、社内メンテナンス状況、点検年月日、点検者
故障・修理にかかわる項目…故障発生年月日、故障内容、暫定対処、修理内容、修理年月日、使用部品、修理金額
保険にかかわる項目…機械向け保険の有無、保険内容
このように様々な情報を台帳として管理することで、設備に何らかの不調が発生した際に台帳を確認しつつ正しい対処を取ることができます。従って設備対応の度に、台帳を正しく記録することが大切です。
[RELATED_POSTS]設備管理はシステム化が欠かせない?
設備管理は故障や機能低下が起きた設備に対して修理を加える“技術的業務”と、設備に関する情報を管理する“情報管理業務”があります。これらの業務を正しく実行するためにはシステム化が欠かせません。
たとえば設備管理をエクセル台帳で行うと次のような問題が発生します。
最新バージョンが分からなくなる
設備管理台帳をエクセルで作成し、ファイルサーバー上で管理する際にありがちな問題です。プラント管理に関わる技術者数人でファイルを共有するため、それぞれが思ったように設備管理台帳を更新してしまうと、一体どれが最新なのかが分からなくなってしまいます。
ルールを守らない人がいる
設備管理台帳は複数人で管理するわけですが中には管理ルールを徹底してくれない人もいます。プラント管理は何かと面倒の多い業務であり、そこに設備管理台帳があるとより面倒くさいと感じて、次第にルールが守られなくなっていきます。
システム連携ができない
設備管理台帳をエクセルで作成したり紙書類で管理している場合、保全システムとの連携は不可能です。そのためプラント管理を徹底して効率化できないため、システムの効果を最大限引き出すことはできません。
こうした問題を解消しつつ設備管理を適切に行うにはやはりシステム化が欠かせません。設備管理台帳がシステムで管理されていれば、管理ルールが統一されるので最新版が分からなくなるといった問題は起きません。エクセル台帳に比べて管理も容易になるので、自然と管理ルールが徹底されます。
何よりシステム連携が容易にできるので、保全システムと連携しつつ設備管理を効率化することも可能です。
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設備管理システムをERPで
ERPとは“Enterprise Resource Planning(企業資源計画)”のことで、製造業における“Material Resource Planning(資材所要量計画)”を経営全体に発展させたものです。その目的は経営資源全体を一元的に管理し、可視化し、人・モノ・金・情報の経営要素の流れを見えるようにするためのマネジメント手法です。またこれを実現するためのプラットフォームをERPといいます。
ERPには財務会計システム、生産管理システム、受注管理システムなど経営上欠かせないあらゆる業務システムが統合されています。そのため、本来は難しいすべての業務システムの統合を実現するITソリューションです。
その中には設備管理システムが含まれていたり、さらにクラウドサービスとして提供しているクラウドERPではIoTとの相性がよく、連携によって設備管理を可能にするリアルタイムで詳細な管理を可能にするサービスもあります。これを導入することで、設備管理だけでなくあらゆる業務の効率化が可能なため、特定の部門に限らない“全体最適化”を実現できます。
何より各業務システムが連携しているので、設備管理システムが他の業務システムと連携することで様々な業務を効率化し、生産性を向上できます。部品発注も調達管理システムを通じて行えますし、修理部品の管理も在庫管理システムを通じて行えます。
そのため情報の不整合が発生せず、無駄な業務を大幅に排除できるのです。
まとめ
設備管理は簡単な業務ではありませんが、システム化によって効率化できる部分は多いでしょう。皆さんの会社ではどういった設備管理を実施しているでしょうか?それらの業務は果たして正しく機能しているでしょうか?この機会に設備管理業務の見直しと、ERPによる新しい設備管理についてぜひご検討ください。
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