財務会計システム
財務会計システムとは?
法人における会計は、その目的に応じて2通りの領域があります。一つは財務会計で、これは法律で定められた帳票の出力や税務署へ会計報告をするための会計業務です。もう一つは管理会計で、これはその会社独自のルールで定めた会計方法によって、事業を評価したり経営計画へ反映するための情報提供目的をもった会計業務です。
財務会計は法的に定められた義務に基づくものですが、管理会計はそうではなく、やるやらない、どのようにやるのかも含めて法人の自由に基づくものです。
ただし、これらの2つの会計が完全に分離しているのかというとそうではありません。財務会計システムの中にも管理会計に利用できるデータや機能は含まれています。
そのため財務会計システムは、会計業務や経営をサポートするための基盤として位置づけられることも多くあります。
背景/目的
では、その財務会計システムはどういった目的で導入されるのでしょうか?
1. 会計業務効率化
会計業務は組織の中でも負担の多い業務です。扱う情報は企業の会計データなので入力ミスなどは許されませんし、何よりデータ入力作業や帳票作成などが多くて手間がかかり過ぎます。これをシステム化することで得られる効果は大きいでしょう。会計業務を効率化すれば、担当者はより創造的な業務にリソースを割くことができるでしょう。
2. 人的ミスの低減
会計業務は重要な会計データを扱うものなのでミスは許されません。会計処理の結果作成される財務諸表は会計士の監査によってその信頼性が担保されます。しかしながら、そのもととなる会計のデータのすべての信頼性を保証することは難しいでしょう。そのため、会計処理時点の正確性は非常に重要です。これをシステム化して自動化することにより、ミスを減らすことができます。
3. 内部統制の強化
会計業務をシステム化し、自動化によって人による裁量をなくすことは内部統制上も重要な施策になります。人では発見が難しいデータの不整合や改ざんはシステム化によって防ぐことができます。大手企業の不祥事が相次ぎ、内部統制が重要視されている現代では企業規模を問わず適切な統制が必要であり、財務会計システムが内部統制の強化に効果を発揮します。
4. 会計情報の分析
データ分析を基準として経営が重要視されている現代において、会計情報はすべての経済活動の結果が集約されているものであり、まず分析すべきデータです。財務会計システムの多くはデータ分析およびシミュレーション機能をもっているので、それを経営に生かすことができます。
5. 予算・予実管理
予算管理や予実管理によって、経営を最適化するのも財務会計システムの機能の一つです。予算を適切に管理し、実績がそれに伴っているかを確認することで、経営活動をより最適化していきます。
課題
財務会計システムの課題は「データ連携」です。財務会計上必要な経済活動の発生は、別の業務で発生し、それは各業務システムに記録されるはずです。そのため、財務会計システムが単体で稼働していると、他の業務システムで発生したデータを転記するなどの処理が発生し、このことが非効率だけでなく、ミスや不正を生む温床にもありかねません。
そのため財務会計システムでは他の業務システムとのデータの整合性は非常に重要なポイントとなります。
ソリューション(解決)
財務会計システムの多くは他のシステムとデータレベルで連携できるようなインターフェイスを提供しているものも少なくありません。しかしその連携はリアルタイムにできなかったり、人手を介するものもあり、本来求められる連携の要件を満たしていないことも多いのです。
このような課題を解決するのがクラウドERP(統合基幹業務システム)です。ERPは財務会計システムを含め事業に必要な様々な業務システムを統合したプラットフォームであり、統合されたデータを各業務システムで利用するため、リアルタイムに正確なデータ連携を可能にするのです。またこれをクラウドサービスとして利用することで、初期投資のコストを低減し、常に最新の機能を利用できるようになります。また拠点が分散している場合にもクラウドサービスとして統合することが容易です。
機能
一般的な財務会計システムは次のような機能を備えています。
- 会計伝票管理
賃借対照表など財務会計として必要な帳票を作成および発行したり、企業が独自にカスタマイズした帳票で管理会計に対応します。
- 決算業務管理
決算業務を素早く効率良く行い、今まであった業務負担を軽減します。
- 外貨取引管理
グローバルビジネスが一般的になった現在において、外貨取引を管理することで適切な会計情報への反映をサポートします。
- 連結会計管理
グループ会社の会計情報を取集し、内部取引消去などの連結仕訳やグループ会社間での資本変動取引に伴う資本連結仕訳などを行います。
- 固定資産管理
減価償却など固定資産管理を適切に行うことで正確な会計情報を管理します。
- 債権管理
与信取引において企業の債権を管理します。取引額の表示や代金回収状況を把握し、自社の未回収リスクを低減します。
- 債務管理
与信取引において企業の債務を管理します。思わぬ代金未払いが発生しないように、支払い期日などを管理します。
- 経費管理
様々な経費に関して事前申請や仮払い・精算時の申請・承認業務などを行います。
- 予算管理
企業としての予算、部門としての予算を細かく管理し経営活動の基本とします。
- 実績管理
予算に対して実際にどれくらいの費用がかかったかを明確にし、差異分析によって問題点などを抽出します。
- 経営分析
現在の経営状況を分析したり、将来的なシミュレーションを行って経営意思決定を迅速にします。
メリット
財務会計を正しく行うためには正しい会計知識と高いスキルが必要です。しかし、組織の規模が大きくなれば、すべての担当者に高いスキルがあるわけではないため、様々なリスクを内包することになります。
次に、ミスや不正を防ぐ効果があります。処理の自動化や整合性のチェックがシステム的に行われることにより、内部統制的なリスクも減らすことができます。
さらに決算の短期化というメリットもあります。財務会計システムの最大の目的は、決算時に正確な財務諸表を出すことに尽きるといっても過言ではありません。現在では四半期ごとの決算が一般的になり、多くの時間をかけることも難しくなっています。また決算時の財務諸表を早く出すことにより、株主等により新鮮な情報を提供できるだけでなく、管理会計上の価値も上がることになります。
決算を財務会計で必要なタイミングだけでなく、月次、週次、日次と短いサイクルで見ることにより、より素早く正確な意思決定を支援します。
デメリット
財務会計システムを導入するにあたってのリスクの一つはセキュリティです。組織のすべての活動の結果が集約されている会計データは非常に機密性が高い情報です。
またシステムへの不正なアクセスはデータ改ざんなどの別の不正を引き起こすこともあり得ます。
そのため財務会計システムのセキュリティや監査ログなどの機能は非常に重要です。
選び方のポイント
財務会計システムを選定するにあたって最も重要なポイントは、財務会計システムは単独で存在するわけではないということです。
会計データとなるトランザクションの発生源は業務システムであり、そのデータの整合性は内部統制も重要です。これを仕組みとして担保しているのがERPであるため、財務会計システムを選択する場合にもERPは有力な選択肢になります。
さらに、他拠点でのデータの整合性やグローバル展開、常に最新の会計ルールの適用などを考慮するとクラウドサービスのメリットが大きくなります。
これらの視点を組みあわせると、今後の財務会計システムの有力な候補はクラウドERPとなるでしょう。さらに、連携する業務システムはオンプレミスで展開されている可能性もあるため、システム環境的にも柔軟な対応ができることも重要です。
まとめ
財務会計システムはすべての法人にとって不可欠であり、社会的責任を果たすためにも重要なインフラです。企業内のデータの一貫性とリアルタイムな集計は非常に価値のあるポイントです。これを実現するために、クラウドERPを含めた財務会計システム導入をご検討ください。
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