英国の歴史学者・政治学者であるシリル・ノースコート・パーキンソンによれば「間接業務の数は、目的とは関係なく人の数に比例して増える」と言われています。間接業務とはビジネスにおける利益創出に直接かかわらない業務プロセスのことです。反対に、利益創出に直結するような業務プロセスを「直接業務」といいます。
単純な話で言えば間接業務を減らし、直接業務を増やすことができれば利益は拡大していきます。その役割を担っているのが「EPM(Enterprise Performance Management)」です。企業によっては「CPM(Corporate Performance Management)」や「業績管理」とも呼ばれています。
今回はこのEPMについてその基礎知識をご紹介します。
EPMとは何か?
EPMという概念やITツールについて詳しく知っているという方はまだ少ないでしょう。大企業では以前より浸透しめていました。EPMとは簡単に説明すれば「企業業績を常に監視して必要に応じた対処をする」ためにあります。
EPMでは部門ごとに走っている業務プロセスをそれぞれ1つのプロジェクトとしてとらえて管理することで、その業務プロセスから生み出される付加価値を最大化していきます。組織全体に無数にある業務プロセスは部門ごとにそれぞれ管理されていて、評価方法等も違います。
そのため業務プロセスがどんぶり勘定になっていることも多く、事業目標を効率良く達成できていない可能性があります。1つ1つの業務プロセスをプロジェクトとしてとらえることができれば、業績をしっかりと管理し、そこから生まれる付加価値を最大にすることができます。
EPMが難しい理由…
EMPを実践できれば組織全体の業務プロセスに対する評価基準が標準化されるため、各業務プロセスを正しく評価できるという利点があります。しかしながら、業務プロセスの進め方というのは部門によって難しいですし、すでにそれぞれに最適化されているので標準化が難しい傾向にあります。
日本企業の多くはこれまで部門ごとの個別最適化を進めてきたわけですから、これは仕方のないことと考えることもできます。しかしながら、部門ごとに業務プロセスの評価が標準化していないと様々な弊害を起こします。
たとえば「客観的視点を取り入れられない」ことは大きな弊害の1つです。部門最適化が進んだ組織では、人事部門の管理や評価は人事部門が、経理部門の管理や評価は経理部門が行うようになるためです。そこには客観的視点を取り入れることが難しくなってしまいます。その結果どんぶり勘定になりがちで、業務プロセスの適切な価値が分からなくなってしまいます。
EPMとBIの違い
よくEPMと「BI(Business Intelligence)」は混同されがちです。一般的な定義でいうとBIとは情報システムが使用する分析ツールです。BIにはレポーティング、分析、オペレーションのモニタリングなどを実現するための機能が備わっており、どの技術も情報ありきでいろいろな情報を戦略立案や意思決定に活かすためのものです。
これに対してEPMは組織の経営管理プロセスを如何に支えるか、そして可視化するかを中心にしており、技術はその実践に必要な要素だと位置づけられています。EPMを利用するユーザーも経営陣や経理部門などビジネス側のユーザーを想定しています。
ただし最近ではEPMとBIではその違いが無くなりつつあります。現在のEPMとBIは密に関係するようになっており、BIの戦略を作るにはEPMの戦略が必要になります。
[RELATED_POSTS]
EPMのメリット
EPMを取り入れることで企業にとってどのようなメリットがあるのでしょうか?
Merit1. 業務プロセス実施状況の把握と迅速な修正
EPMを取り入れることで組織全体で業務プロセス評価を標準化でき、いつどこで何が起こっているかを常に把握することができます。事業には必ず目標があるわけですから、組織全体の業務プロセスを同じように評価できれば、目標達成にあたっての修正を行うこともできます。
Merit2. 情報とノウハウの蓄積
組織全体の業務プロセスを同じフォーマットで管理することができるので、全体的に情報とノウハウを蓄積していけます。これまで情報とノウハウは部門ごとに積み上がっていくものと考えられてきましたが、その2つを企業の資産として蓄積することで、全体最適化に向けた取り組みが行えます。
Merit3. 情報の透明化
組織内部の状況がよく把握できるようになり、部門ごとに経営戦略への理解度も高まります。さらに、各業務プロセスを実行する従業員の監視機能としても期待できるため、セキュリティ強化やコンプライアンス維持に最適です。
EPMに欠かせないERPソリューション
EPMを実施したりシステムを導入することで組織全体に標準化をもたらすのならば、EPMに加えてERP(Enterprise Resource Planning)が必要になります。ERPとは統合的な業務アプリケーション環境を提供するIT製品であり、ERPによって様々な経営課題を解決できます。たとえばERPには次のような業務アプリケーションが統合されています。
- 財務会計システム
- 顧客管理システム
- 営業支援システム
- 人事管理システム
- 生産管理システム
- 調達管理システム
- 販売管理システム
- 在庫管理システム
- 出荷管理システム
- 受注管理システム
- 発注管理システム
- Eコマースシステム
- ビジネスインテリジェンス
企業経営に欠かせない基幹系システムから業務効率アップが狙える情報系システムまで、製品によって統合している業務アプリケーションは様々です。ERPにEPM機能が統合されていることもあります。その場合、ERPには次のような機能が搭載されています。
KPI設定
KPIとは「Key Performance Indicator」といった需要業績を評価するための指標です。事業目標に対していくつか評価のための尺度を作りますがこれがKPIです。KPIを追うことで業務プロセスの進捗度を正確に把握でき、さらに事業目標に対して逸れた方向にいっていないかを確認できます。
KPIモニタリング
設定したKPIは継続的にモニタリングする必要があります。モニタリングしていると何か問題が発生した際に、迅速に対応できます。さらに、少しでも最終目標に近づけるようにモニタリングによって適宜調整を加えていきます。また、KPIモニタリングのためのダッシュボードなどを用意しているERPもあります。
経営課題分析
ERPは統合的なIT製品なので、各業務アプリケーションから集めたデータをもとに経営課題を自動的に把握することができます。最近ではAI等から得られるビジネス知見をもとにビジネスを展開している企業も多いでしょう。
ERPならクラウドタイプがおすすめ!
いかがでしょうか?これからのビジネス社会ではEPMが欠かせませんし、EPMを運用するためにはERPが必要です。ERPにはクラウドタイプが提供されています。クラウドとはインターネット経由で提供されるサービスのことで、つまりは大規模なIT製品であるERPをインターネット経由で利用することになります。
クラウドERPの利点はイニシャルコストを圧縮できることです。オンプレミスでERPを構築する場合、イニシャルコストだけで数千万円かかることもあります。一方クラウドERPならばイニシャルコストはほとんどかからず、さらに月々の支払いも安いので、オンプレミスよりもコストを適正化できるメリットがあります。
この他運用負担がほとんどかからないことなど様々なメリットがありますので、EPM実施の際はぜひクラウドERPにご注目ください。
- カテゴリ:
- 経営/業績管理
- キーワード:
- 予実管理