EPM(企業パフォーマンス管理)
EPMとは?
市場の変化や競争環境のスピードが速い現代において、企業では組織を維持するために様々な意思決定や判断を素早く行ってゆく必要があります。EPM(Enterprise Performance Management)は、企業内の経営にかかわる数字を収集、分析し、適切な判断を支援するプラットフォームであり、それを活用するための管理手法およびプロセスも含めた取り組みです。
たとえば企業内では様々な業務に分業されており、業務単位にレポートを作成していると、集計に時間がかかったり、レポート間の整合性が取れないなどの状況が発生し、正しい状況の把握や判断を妨げることがあります。EPMは各業務データが統合された環境でリアルタイムなレポートを可能にし、現代の経営に必要なレポートを提供します。
背景/目的
デジタルトランスフォーメーションによるビジネスの変革が進む中、市場にニーズや競合環境などは目まぐるしく変化しています。たとえば規制緩和やデジタル技術の活用で異業種からの参入障壁も低くなり、突然強力な競合が現れる可能性すらあるのです。
そのため、従来管理会計として行われてきた、一定期間ごとに行われる定型的なフォーマットでのレビューや分析では適切な意思決定のためには十分な情報をできていない状況が生まれてきています。
そのため、経営者や事業責任者はよりリアルタイムに、柔軟な視点でのレポートと分析の基盤が必要になっているため、そのニーズを満たすためにEPM(企業業績管理)という概念とプラットフォームが求められるようになったのです。これにより、業務ごとに分散されていたデータを統合的に把握、分析し、リアルタイムな意思決定が可能になることが期待されています。
課題
EPMを検討する際に重要なのはデータの収集と統合です。たとえば経営ダッシュボードを提供するようなBIツールは数多く提供されています。しかしこれらのツールはあらかじめデータが用意されているのが前提で、EPMに必要なデータがそろっていなかったり、情報の鮮度が古ければ実際の判断の役にはたちません。
つまり、EPMにおいてはダッシュボードなどのUIだけでなく、そこに表示するデータをどのようにリアルタイムに収集するかということになります。企業内には数多くの業務システムが、様々なプラットフォームを利用して構築されています。また場合によっては同じ内容を指していても業務システム間で扱い方が異なっていたり、単位が異なっていたりして、単純に比較することができない場合もあります。
そのため、リアルタイムにデータを収集し、全体感のあるレポートによる管理を行う上で大きな障壁となる場合が多いのです。
ソリューション(解決)
では、EPMを実施するにはどういったソリューションが最適なのでしょうか?組織内の業務間で統合されたデータを持つシステムと言えばERPです。
ERPは統合されたデータを起点に必要な業務システムのモジュールを提供するため、業務システム間のデータの不整合がなく、リアルタイムに横断的な情報を収集し、分析することが可能です。企業の業務は、たとえば製品の設計、調達、生産、販売、在庫、物流などの一連のプロセスがつながって事業を構成しています。それぞれのプロセスにおける必要な機能は異なるため、個別のシステムを利用していることもあるでしょう。しかしこれらのデータは本質的には連続しているため、統合されたデータで一元的に管理することは非常に大きなメリットがあります。
また、ERPをクラウドサービスとして提供するのがクラウドERPです。従来はオンプレミスで構築されることが多かったERPですが、これをクラウドサービスとして利用することには多くのメリットがあります。たとえば、複数の事業拠点のデータを収集したり、IoTを活用してリアルタイムに様々なデータを分析するにはクラウドプラットフォームの活用が欠かせません。このようなニーズにも対応するソリューションがクラウドERPです。
機能
クラウドERPは一般的に次のような機能を備えています。
- 財務会計システム
- 顧客管理システム
- 営業支援システム
- 人事管理システム
- 生産管理システム
- 調達管理システム
- 販売管理システム
- 在庫管理システム
- 出荷管理システム
- 受注管理システム
- 発注管理システム
- Eコマースシステム
- ビジネスインテリジェンス
さらに、クラウドERPのEPMソリューションには次のような機能が備わっています。
- 勘定照合
- レポートの改革
- 企業全体のプランニング/予算編成
- 財務の連結および決算
- 収益性およびコスト管理
- 税務レポート
ERPで統合されるデータと、そのデータを利用した分析機能を提供することにより、リアルタイムに事業全体を俯瞰したレポートによって適切な判断を支援します。
メリット
クラウドERPによってEPMを実施することで企業は様々なメリットを得られます。たとえば、各業務を横断的に統合したデータにより、様々なレポートをリアルタイムに提供することにより、現状を把握するだけでなく今後のプランの見直しや予算編成の再検討など、必要な判断や変更を素早く行うための情報を提供することができます。通常、各部門の業務をすべて可視化することは難しいですが、EPMを実施すれば業務の可視化によって、経営者や部門責任者がより最適な意思決定をくだすことが可能です。
もう一つのメリットは業務ノウハウの蓄積です。業務データを可視化することにより、業務間の整合性や状態を客観的に把握するとともに、改善するための施策を打ち出すことができます。そうした業務ノウハウが蓄積していくことで、中長期的な観点での評価が行えるようになるでしょう。
デメリット
EPMを取り入れると企業全体の活動がリアルタイムに可視化されるため、客観的、合理的に判断を行うことが可能になり、勘などに頼らずに意思決定し、競争力を高めるために有用な取り組みです。
しかしながら、一方ですべて数字のみで判断することのリスクもあります。EPMで提供されるデータは網羅的で正確なものになりますが、その数字の裏にある現実に対する洞察がないと、かえって数字に振り回されてしまう可能性があるのも事実です。
そのため、活用する場合にはEPMで現状の課題を把握したり、今後のビジネスに影響があるポイントを見つけながらも、さらにそれを深掘りしたり、数字に表れない定性的な情報と合わせて解釈し、判断する必要があります。
選び方のポイント
EPMはその性格上ERPがその基盤として必要になります。個別の業務システムからデータを収集することも可能ですが、リアルタイム性や数字の整合性を考慮するとERPのメリットは高いでしょう。その際にも、できるだけ多くの業務に対応したERPを選択することにより、より精度が高く網羅的なEPMが可能になります。
またERPの選択においてもポイントがあります。それはクラウドERPを選択することです。従来のERPはオンプレミス型が主流でしたが、現在はグローバルな事業展開やIoTとの連携などのニーズが高まっているため、よりクラウドサービスとして提供されるERPとの親和性が高まっています。
クラウドERPではハードウェアなどの初期投資を抑えながら、必要なリソースを追加してゆけるためより現実的なソリューションとなるでしょう。
まとめ
EPMによって企業内の業務をデータとして可視化することで、リアルタイムに最適な意思決定を支援します。レポートや分析機能と様々な定性的な情報を組み合わせ、中長期的な事業の成長のプラットフォームとして活用していただくことができます。
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