収益認識基準
『販売管理システムとは(第3回)~仕入管理システムと売上管理システム』では、売上計上の基準として出荷基準と検収基準があることをお話ししましたが、売上計上は別名、収益認識とも呼ばれています。この収益認識(もしくは売上計上)の基準、つまり収益認識基準は、近年、IFRS対応が注目される中で、ERPにとって非常に重要な項目となっていますので、詳しくご説明します。
商品(や製品)の受注から入金までの一連のプロセスには、以下のような段階があります。
受注:商品の注文が取引先からあった。
出荷:商品を取引先に向けて出荷した。
納品:商品が取引先に到着した。
検収:取引先で商品が検収された。
請求:取引先での検収が合格したため、代金請求をした。
入金:取引先より、代金を回収した。
商品(や製品)を売った場合、どの段階で収益認識(売上計上)をすべきかが問題になります。日本の法人税法(基本通達)上では、商品を販売した場合の収益認識(売上計上)の時期は、その引渡しがあった時点とされていますが、この「引渡しがあった時点」の解釈には、受注から入金までの一連のプロセスの中で、出荷、納品、検収のいずれかの時点とする解釈(収益認識基準)が基本的なパターンです。
① 出荷基準‐商品を出荷した時点で収益として認識する。
② 納品基準‐商品が取引先に到着した時点で収益として認識する。
③ 検収基準‐取引先が納品された商品の内容を確認し、問題ないことを書面(検収書)などで通知した時点で収益として認識する。
企業は、これらの中から自ら選択・採用することができます。ただし、選択した基準が、商品の性質や販売契約の内容に照らし合わせて合理的であると認められなければなりません。また、いったんその基準を採用したならば、継続してその基準で収益認識を行う必要があります。
これらの3つの基準の中では、検収基準がもっとも確実な基準といえます。なぜなら、商品の内容や数量に間違いがあったり、品質に問題があった場合には返品が発生しますが、出荷基準と納品基準では、すでに収益認識されてしまっているため、売上高を訂正(マイナス)する必要があるからです。特に、納品された商品の品質検査が取引先で行われるような場合は、商品の性質から返品が頻繁に発生する場合には、検収基準が望ましいといえます。
しかし、検収基準を採用した場合には、出荷・納品から検収(収益認識)の間の時間がかかりますので、在庫側のデータと会計側のデータの間の整合性をとる処理が複雑になったりします。また、出荷・納品と検収の時期が月をまたがることで、出荷基準や納品基準に比べて請求・入金のタイミングが遅くなり、資金管理上不利になる場合もあります。
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