企業がビジネスを遂行するために不可欠な主要業務を処理する、基幹業務システム。しかし、2014年の矢野経済研究所の調査によると、中小企業の75%超がオンプレミスの会計パッケージの適用で踏み止まっていると言われます。
そこには、大きな見落としが潜んでいます。レガシーな基幹業務システムは業務のスムーズな進行を妨げ、正常な企業経営に目に見えないリスクを派生させているのです。
今回は、オンプレミスの会計ソフトの適用が経営に与えるインパクトを詳細に分析し、中小企業に最も相応しい基幹業務ソフトについて考えていきます。
レガシーな会計ソフトが中小企業の利益確保を阻害
レガシーシステムとは、主に技術革新により代替技術が広く普及した現段階で旧来の技術基盤により構築されている基幹システムのことです。銀行や流通などの大量のトランザクション(データ処理)と多くの部署が業務処理に関わる大企業では、ITシステム導入黎明期から大手ベンダーの独自仕様で構築されたレガシーな基幹業務システムを導入し活用してきましたが、M&Aや企業再編成の加速と高度化・複雑化する業務課題に対応するために、レガシーな基幹業務システムからWindowsやクラウド環境下でのオープンシステムに移行してシステムの統合を図る動きが加速しています。
一方、多くの中小企業では、大企業のように数億~数10億円レベルの費用がかかるオンプレミスのERPシステムを導入するわけにもいかず、市販の会計ソフトを購入して基幹システムとして適用してきましたが、最近ではクラウド技術の向上とSaaS(Software as a Service)型のクラウドサービスの拡充により、財務会計・販売・資産・人材・物流・情報などのビジネスに必要な機能を統合的に管理するERP(統合基幹業務)システムを月々数万~数10万円レベルで活用していくことが可能になりました。
米国の調査会社Proformative社が米国企業の経営者および財務・経理理担当者に対して行った調査によると、2012 年時点で15%の企業が財務・会計基盤をSaaS型のクラウドサービスへの移行を完了し、回答者の55%が“利益確保”のためにクラウドERPへの移行を重要視していることが報告されています(2012年 Proformative クラウドコンピューティング実態調査)。
これに対して日本の企業では、2014年の時点においても財務会計システムにSaaS型のクラウドサービスを適用する企業の割合はわずか2.3%に留まり、オンプレミスの会計パッケージを利用する企業は76.7%にも達しています(2014年 矢野経済研究所調査)。
ITシステム導入先進国の米国と家族的経営主体の日本企業との差、あるいは大企業ほど大量のトランザクションと複雑な業務構成を必要としない中小企業の事情を考慮しても、この違いは企業の利益成長に対してあまりにも無頓着だと言わざるを得ません。
なぜなら、会計パッケージを企業の基幹業務システムとして適用した場合、企業全体の収益性に大きな影響を与えてしまうからです。それでは、レガシーな会計パッケージの運用が企業の収益性に与えるインパクトを具体的に検証していきましょう。
①業務生産性の低下/分断されたアプリケーションが業務効率を悪化
日々の仕訳を入力するだけで、試算表や総勘定元帳、損益計算書(PL)や貸借対照表(BS)を自動的に作成できる会計ソフトは、業務に飛躍的な効率化をもたらします。しかし、その効率性は、あくまで会計管理業務の範疇に限られることを見落としてはいけません。
たとえば、営業担当者が顧客から注文を受けた場合を考えてみましょう。商品の在庫は会計ソフトでは確認できませんから、担当者は倉庫で商品を確認するか在庫管理システムにログインして在庫の引き当てを行います。注文された商品があれば請求書を発行しますが、レガシーな会計パッケージでは請求書作成機能を持たない場合もあります。当然、顧客リストに購入履歴を記録する機能は持ち得ませんから、担当者は手作業で顧客情報を確認し購入履歴を記帳しなければなりません。会計パッケージとは別に販売管理システムを活用していたとしても、アプリケーション間でデータを照合・確認する必要があり、同じようなデータを何回も打ち込むロスが発生しています。この際に入力ミスが発生するリスクも伴います。
オンプレミスの会計パッケージを基幹システムとして継続的に運用するほど、各業務単位では販売管理、顧客管理、在庫管理、生産管理といった部門内の業務を効率化させるシステムが適用されている可能性が高くなります。これらのシステムはそれぞれ独立して機能していますので、各システム間で関連するデータを連携するプロセスが必要となり、業務全体での生産性を著しく低下させてしまうのです。
②経営進捗のブラックボックス化/経営の実態を把握できない
PLやBS、キャッシュフロー計算書(CS)を定期的にレポートする会計ソフトは、確かに経営判断を行う上での貴重な基幹システムとして機能しています。しかし、これらの指標はあくまで一定期間経過後の財務レポートであり、経営の進捗状況を分析し問題点を発見するKPI(主要業績評価指標)とはなり得ません。
日々変動する市場の動向を的確に捉えて競争優位を保つためには、経営者や各部門のリーダーには販売目標に対する達成度、製品単位の販売推移、売掛金額、棚卸資産、生産現場の歩留まり、資材・部材の過不足といった業務ごとのKPIや進捗状況をタイムリーに把握・分析し、その場で迅速かつ的確な判断を下すことが求められます。また、マネジメント層に限らず各部門のスタッフにおいても、業務の進捗状況や関連データをパソコンやスマートデバイス上で随時確認することができれば、業務のパフォーマンスは著しく向上します。
また、内部監査で仕訳データを後追いするのは、結構難儀です。そのために膨大なコストをかけて、試算表や勘定元帳から不透明の仕訳データを手作業やツールを使って追いかけることは、すでにシステムの問題を抱えているケースが多いのです。コンプライアンスを強化する上でも経理担当のみが使っているブラックボックス化した会計システムでは、営業や調達、顧客別、製品別、原価計算といったビジネスのトランザクションをベースとした多角的な分析や取引の透明化がしにくくなることが企業全体の経営の強化と成長にとって妨げとなるのです。
大量のトランザクションと複雑な業務構成を必要としない中小企業こそ、経営の進捗状況をリアルタイムに可視化するクラウドERPを基幹業務システムに導入し、コンプライアンス強化とともに、企業を成長させ、状況の変化に俊敏に対応できる優位性を活かすべきと考えます。
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③経営資源配分のロス/運用にコストと手間がかかる
オンプレミスの会計パッケージの目に見える問題点としては、財務会計機能の維持・運用に常にコスト的・人的リソースを割くことを強いられることが挙げられます。
同じ会計パッケージを継続的に運用されている方には周知のことですが、パッケージ購入時のTCA(初期導入コスト)だけでは日常業務に対応できず、定期的なバージョンアップや日常的なメンテナンスに費用の追加が求められます。最近では消費税率アップやマイナンバー制度導入時などの法令改正の度に機能追加やバージョンアップを求められ、システム管理者はその対応と情報収集に時間を割かれ、他の業務ソフトも併用している場合はその分だけ手間と費用が倍加されるために、システムの運用のために膨大な経営資源を投下していることになります。
また、会計ソフトが扱う秘匿性の高い財務会計データには万全のセキュリティ対策が求められ、BCP(事業継続計画)の観点からは主要なデータのバックアップを保存管理しておく必要性も生まれてきます。安全なロケーションにあるデータセンターからサーバ管理やデータバックアップも含めてトータルにサービスを提供するクラウドERPへと移行したほうが、TCAを含めてTCO(総所有コスト)を削減し、経営資源の有効な配分につながると考えます。
④成長ポテンシャルの限定/固定化された機能がビジネスを圧迫
レガシーな会計ソフトの最大の問題点は、企業のオペレーションを限定し、これ以上の成長を阻害してしまうことにあります。
事業規模が拡大し、オンプレミスで導入した会計パッケージのトランザクション能力以上に顧客や取引先が増加した場合、データ処理や対応に今まで以上の時間を要し、業務に混乱を生じさせてしまいます。また、レガシーな会計パッケージでは、会計監査に必要な証跡やビジネス計画、レポートが必要な場合には追加システム構築やパッチで対応する必要があり、さらに強力な財務管理、よりシンプルなSKU管理、複雑な会計処理などの機能を追加する必要も出てきます。
経営環境が目まぐるしく変化する中小企業の経営には、顧客ニーズや消費者志向の多様化や市場の変動要因に迅速に対処し、柔軟に事業プロセスや顧客アプローチを組み立て直していくことが求められます。企業の経営戦略や成長速度に合わせて柔軟に機能とトランザクションの拡張ができることが、厳しい経営環境に立ち向かう中小企業の適正な基幹業務システムであり、硬直化されたレガシーな会計パッケージからクラウドERPに早急に移行することをお勧めします。
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NetSuiteは、ERP/財務会計を中心に営業、サービス、在庫管理、受注管理、Eコマースなどのビジネスに必要とされるあらゆる業務アプリケーションとデータを単一のプラットフォーム上に一元的に管理し、共通のダッシュボード上にリアルタイムに表示するビジネスインテリジェンス機能を持ったクラウドビジネス管理スイートです。世界規模のデータセンターから提供されるサービスはTCOを抑えてビジネスの信頼性を高め、業種別のニーズに合わせて提供される最新の業務アプリケーションにより、経営環境や成長速度に柔軟に対応する最適な統合基幹業務システムとして機能します。
レガシーな会計ソフトをNetSuiteに置きかえ、真の成長企業のための経営基盤を構築してください。
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