製品ライフサイクル管理システム・PLM
製品ライフサイクル管理システム・PLMとは?
製品ライフサイクル(Product Lifecycle)とは、特定の製品がたどる企画→開発→設計→調達→生産→販売→保守→廃棄という一連の流れを指します。これらのプロセスはその時々で会社に「収益」か「支出」をもたらすわけですが、製品ライフサイクル管理(以下、PLM)とは製品の観点でこのプロセスを適切に管理して、収益の最大化を図るための管理手法です。
PLMはサプライチェーンマネジメント(SCM)やERP(エンタープライズリソースプランニング)に続き、新しい業務改革のための手法としても注目されています。ただPLMの概念自体は歴史の浅いものではなく、10年以上前にはその管理手法は確立されていました。
PLMを適切に実行するためのシステムがPLMシステムです。
背景/目的
企業が収益の最大化を図るために大切なことは「製品の短期市場投入」「製造コストの削減」「長期間にわたり価値提供ができる製品の開発」です。この3つが揃えば、企業収益は向上します。これらを実現するために欠かせないのが製品のライフサイクルを管理することです。
では具体的にどのようにして製品ライフサイクルを管理するのでしょうか?たとえば製品開発段階において、PLMシステムにて管理している3次元CADデータの一部を別のプロセスでも活用することで、製品ライフサイクル全体の効率化と整合性の向上が図れます。製品情報の起点となる設計情報が共有されるということは、企画や開発、その他生産にいたるまで様々なプロセスを効率化することが可能になります。これで「製品の短期市場投入」「製造コストの削減」に対して効果が期待できます。
また、3Dデータを保守サービスなどにも共有することにより、顧客に対してアフターサービスを含めたライフサイクルにおいてより価値の高い製品を提供することができます。これにより「長期間にわたり価値提供ができる製品の開発」にも貢献できるでしょう。このように製造業にとって収益最大化の要ともいえるPLMシステムには次のようなすみ分けがあります。
- 3次元CADを中心としたPLM
PLMは旧来、3次元CADによって3Dデータを管理して、製品ライフサイクルの時々においてデータを活用するという考え方で発展してきました。これは、最もスタンダードなPLMと言えるでしょう。
- PDMから発展したPLM
成果物の設計データを管理するのがPDM(Product Date Management)です。3次元CADデータや部品および部品の属性データを、後工程でも活用するできるうよにするという考え方から発展しました。
- ESの一環としてのPLM
3次元CADデータを含めた製品関連情報と、SCMやERPなどの組織全体の最適化を行うES(Enterprise Solution)と連携、あるいはその一部として情報資産全体の中で管理することを目的としてPLMです。
課題
2000年代に入ってからパソコンやインターネットが一般家庭にも急速に普及し、デジタルコンテンツが爆発的に増加したことで、消費者自ら情報を探せる時代になりました。それまではテレビCMや新聞広告を中心としてマスマーケティング当たり前であり、消費者の情報収集源は限られていたのです。
では、情報収集源が増えたことで何が起きたのでしょうか?ビジネスにとって最も大きなインパクトは「需要の多様化」でしょう。
インターネットを普及し、その後はスマートフォンの保有率が50%を越えたり、ソーシャルメディアが発展することで消費者同士の情報のやり取りも活発化していきます。これによって市場はこれまで以上に多様化し、その影響で製品ライフサイクルが極端に短くなっているのです。
さらに、価値の主体がモノ自体からサービスにシフトし、販売後の価値提供も重要になっています。たとえばアフターサービスでは正しい製品情報を活用しないと適切な顧客サービスはできません。設計変更が頻繁に行わているにもかかわらず、それが保守担当者に共有されていないと顧客への価値は下がってしまいます。
このため、製品品質を担保しつつ、企画・開発・設計の期間はこれまでよりも大幅に短縮しなければ、市場ニーズに対応した製品投入が追い付かないという大きな課題を抱えています。
ソリューション(解決)
このような課題を解決するために、近年のPLMシステムは非常に多様なインターフェースを持ち合わせています。つまり、多数の業務システムと連携することでデータ収集の時間を短縮してリアルタイム性を向上したり、あらゆるデータを活用することで製品ライフサイクルの短縮化を実行し、市場に対して高品質かつ少ないプロセスでの製品投入を可能にしています。
その中でも特に注目していただきたいのがクラウドERPです。事業に必要な複数の基幹システムを一つのプラットフォームに集約し、それをクラウドサービスとして提供する製品です。その中にはもちろんPLMシステムも含まれています。すでに必要なデータが統合管理されているため、リアルタイムに整合性の取れた情報を活用することが可能で、より製品のライフサイクルを適切に管理することができます。
機能
PLMシステムは主に次のような機能を備えています。
- ポートフォリオ管理
- 要件管理
- 制御モデル管理
- 製品設計
- 型設計
- モデルベースシミュレーション
- 各種領域3Dシミュレーション
- CADデータ管理
- 解析データ管理
- 開発スケジュール管理
- エンジニアリングBOM
- 加工
- 設備設計
- 製造BOM
- 工場ラインシミュレーション
- ロボットシミュレーション
基本的には設計に必要なデータを起点にし、これを他のフェーズでの活用も可能にします。たとえばメンテナンス領域まで機能をサポートする製品もあれば、調達管理までこなす製品もあります。
メリット
PLMシステム導入のメリットは製品に関する情報の一元管理による「製品ライフサイクルの最適化」です。製品ライフサイクルには各プロセスによって「収益」と「支出」に分かれます。「収益」にあたるプロセスはできる限り長く、「支出」にあたるプロセスはできる限り短くすることが製品のライフサイクルにおいては重要です。そうすることで、収益拡大とコスト削減を同時に実行でき、企業の収益を向上させます。
デメリット
PLMシステムのデメリットは初期投資や運用費用がボトルネックになりやすいことです。3次元CADなどの設計用のシステムが起点になり、さらに広範囲なプロセスで共有するため、すべての製品ライフサイクルを管理するためのコンパクトな製品というのがなく、比較的大規模なシステムになります。そのため導入コストが高くなる傾向があります。
選び方のポイント
PLMシステムを単独で検討すると、CADなどの設計システムが起点になります。しかしながら、PLMシステムの効果は他の業務プロセスを含めた統合管理であるため、ERPのような事業に必要な統合されたプラットフォームの中で位置づけるほうが合理的な場合もあります。
さらにそれをクラウドサービスとして提供するクラウドERPでは、PLM単体の効果ではなく、事業の効率化と収益性の可視化という観点でPLMを位置付けることができるため、より効果が大きくなるとともに、リアルタイムで一貫性のあるデータを活用することができるのです。
PLMシステムは一つの領域として確立されていますが、業務システムの一つとして位置づけることでより大きな価値を生むでしょう。
まとめ
製品ライフサイクルの最適化は、現在の企業にとって欠かせない要素です。事業の最適化の視点でPLMシステムを活用することで、さらにそのメリットは大きくなります。ぜひそのような視点でクラウドERPとPLMシステムをご検討ください。
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