現代の企業は、さまざまな環境や法律、市場ニーズの変化へ対応していかなければなりません。ITをはじめとしたテクノロジーは、次々と新しいものが登場し、市場に受け入れられていきます。2016年~2017年の電力・ガス自由化のように、大規模な法律・規制が改訂されることもあります。市場の動きも激しく、今ではたいていの企業がグローバル化を求められるようになりました。
端的に言えば、現代は「不確実な時代」です。想定外のことばかりが発生し、“予測”はもはや不可能で、意味をなさなくなりました。過去のデータを基にしても、ほとんど助けにならないからです。
そうした意味で、再検討を必要としているのが「ERP」です。本記事では、Oracle ERP Cloudとは何なのか?Oracle ERP Cloudが企業にもたらすメリットや方向性、同社が提供するもう一つのクラウドERP製品であるOracle NetSuiteとの違いをご紹介します。
現代企業に求められるERPの機能と位置付け
現在のERPは、企業内のさまざまなデータを集めて、経営者が将来を予測するために活用されてきました。しかし、その予測が意味をなさないとすれば、ERPの役割も見直さなければなりません。
そこで最新のERPでは、リアルタイム性が重視されています。まさに「今」、企業内で何が起きているのかを正確に見える化すること。現場の今の状態を把握して、できるかぎり迅速に判断を行うためにERPを活用しようという動きが活発になっているのです。
また、現代企業がERPに期待するのは、鳥瞰(ちょうかん)的な視点をもたらすことです。すなわち、情報の“深さ”と“広さ”の双方を兼ね備えた視点です。深さとは、例えば製造業であれば工業機械の1つ1つまで情報を追えることです。広さとは、企業内部の情報だけでなく、SNS上の評価のような外部情報まで網羅できることです。
従来のERPで、鳥瞰的な視点をもたらすのは困難です。そうした情報を得るためには、場所や時間、距離の制限を取り払う必要があるためです。そうした制限を受けないERPとは、サービスとして提供される「クラウド型ERP」に他なりません。
次世代向けに再構築されたOracle ERP Cloudの目指す世界
もともとERPは、現場のオペレーションを効率化するために生まれたシステムです。ユーザー各社は、個々の現場が必要とする要素を次々とアドオンして、独自のERPへと発展させていきました。時代の移り変わりに追随できない理由はそこにあります。
ERPでは、財務会計やサプライチェーン・マネジメント(SCM)、製品ライフサイクル・マネジメント(PLM)、生産管理などの要素を統合する必要があります。
例えば「製品の受注が増えた」と聞けば「ビジネスは成功」と考えるものです。しかし、仮に受注に対して「供給が追いつかない」という状況になればどうでしょうか。プラスだったはずのビジネスが、マイナスになりかねません。現場の“今を知る”ことが重要な理由はそこにあります。
そうした連携をインテグレーションで実現するには、どうしても膨大なコストと時間がかかってしまいます。時代が変わるたびに、そのような対処療法を何度も繰り返すのは、負荷がかかりすぎてしまいます。
そこでオラクルは、そうしたレガシーなERPと強引なインテグレーションで時代の変化に合わせるのではなく、新しい技術を用いて新しい時代・新しい市場に適した「次世代ERP」を一から作るべきだと考えました。「Oracle ERP Cloud」は、そうして開発されたクラウド型ERPサービスです。
Oracle ERP CloudとレガシーERP製品との違い
Oracle ERP Cloudは、モジュールを追加しても崩れることのないような“次世代ERP向けデータモデル”を採用しています。したがって、ビジネスをグローバル展開するための要素を加えたり、時代の移り変わりで新しい要素が登場したりしても、データの整合性を保ったまま、統合することが可能です。
このことはモジュール間で完全に連携が取れることを意味するため無駄なインテグレーション作業が発生しないのです。
しかもクラウドサービスですから、人工知能や機械学習、RPA、IoTといった最先端の技術が迅速かつ積極的に取り入れられます。現在のところ、オラクルでは4半期ごとのアップグレードを計画しています。
Oracle ERP CloudとNetSuiteとの住み分け
オラクルは、クラウドERP「NetSuite」も提供しています。NetSuiteは、どちらかというと機能特化型なところに特長があり、シンプルなビジネスを行っている企業がクラウドで情報統合を行いたい場合に適しています。NetSuiteは、EコマースやCRMなどの機能も含めたオールインワンという特徴もあルため、一般的には中堅・中小企業やスタートアップ企業がNetSuiteを採用する傾向があります。
その一方で、グローバル展開などのビジネスの幅を広げたい場合には、多機能でパラメータが多く、複雑なビジネスプロセスにも対応できる機能を提供するのがOracle ERP Cloudです。ゆえに中堅・中小企業や複雑なビジネスプロセスを有する企業に向いています。
オラクルのERPは、長年にわたって大規模なビジネスを中心に提供され、高度なノウハウが大量に集約されていきました。当然のことながら全世界にビジネスを展開するオラクル自身もOracle ERP Cloudを活用して日々の業務を行なっています。
Oracle ERP Cloudは、中規模でも十分に活用できるクラウドサービスでありながら、そうした高品質なノウハウをベストプラクティスとして活用できるというメリットを持っています。
Oracle ERP Cloudは、より大きく成長を果たしたい企業にとって、非常に重要な選択肢となり得ます。もしグローバルビジネスへ展開したり、新しい事業分野へ進出したりしても、乗り換える必要がないためです。成長やビジネス拡大のチャンスを逃さず、イノベーションを支えるERPなのです。
リアルタイムな情報と対処
Oracle ERP Cloudでは、「Oracle BI Cloud」や「Oracle Database」と組み合わせたユーザーインタフェースを提供しており、iPadなどのスマートデバイスから簡単にリアルタイムの情報を得ることができます。サマリー情報から個別の事業の明細まで、アプリのインタフェースからドリルダウンしていくことが可能のため、従来の経営プロセスや会議は大きく変化します。
ある内部統制のリスク把握と対処に至るまでのプロセスを、タブレットの画面例で紹介しましょう。
企業経営者であるあなたは毎朝の日課としてダッシュボードを開き、サマリー情報をチェックします。ある日、「内部統制」の項目にアラートが出ていました。ERP Cloudに組み込まれた機械学習機能が「不正支払いのリスク」について警告していたのです。さらにドリルダウンしていくと、ある納入業者に関わる問題であることが示唆されていました。
あなたはチャットツールを用いてリスク担当者に連絡し、警告の認識と対処について尋ねました。すると彼は、すでにアクションを起こしていると返答しました。彼の調査によると、この事業者は社内の承認ポリシーを悪用して不正を行っているということがわかったそうです。低額請求書の自動承認プロセスの隙を突いたようでした。
すでにリスク担当者は、この事業者の支払いをすべて保留にし、問題となっている請求額の閾値をERP上で変更しておきました。さらに、不正支払いを防止するため、承認された一部の事業者のみに適用されるようにプロセスを変更しました。
このように、Oracle ERP Cloudはリアルタイムで細かな「今」をグラフィカルに表示し、明確な洞察を与えてくれます。必要であれば担当者と相談し、リアルタイムに対処を施すことも可能です。
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まとめ
現代は不確定な時代であり、いかようにも変化する可能性があります。そうした変化へ追随できなければ、現代企業として大きな力を付けることは困難です。もちろん、これまで先達が蓄積してきたノウハウやベストプラクティスを完全に捨てるのも愚の骨頂です。
Oracle ERP Cloudには、移り変わりに強いクラウドの柔軟性と確実なつながりを実現するための最新のデータモデルを持ちながら、さまざまな業種・業態を支援する長年のノウハウが詰まっています。現代企業が選ばない理由はありません。
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