サプライチェーンマネジメント
サプライチェーンマネジメントとは?
サプライチェーンマネジメントとは文字通りサプライチェーン(供給の連鎖)を管理することです。まずサプライチェーンとは何かを整理します。
製造業が生産する製品は最終消費者の手元に届くまで様々なプロセスを経ています。たとえば店舗で売られている商品を例にすると、製品企画、設計、部品・原材料調達、生産、在庫、卸への出荷、小売店への出荷がされ、初めて店舗に並びます。さらに、これとは情報は商品の流れとは逆に流れていきます。いつどこでどの商品がいくつ販売されたか(販売されなかったか)という情報が製造者にフィードバックされ、生産や設計開発に戻ってゆきます。こうしたプロセス全体の流れをサプライチェーンと呼びます。
そしてサプライチェーンマネジメントは、こうした全体の流れにある一つ一つのプロセスを見直して、業務を最適化し、より速く品質の高い製品を最終消費者に供給するための管理手法です。
サプライチェーンには製造業だけでなく、サプライヤー(仕入先)、卸業者、小売店など様々な組織が関わっています。サプライチェーンマネジメントによって全体最適化を図るためには、これらの組織がシームレスに連携することが大切です。
背景/目的
サプライチェーンマネジメントという言葉を初めて使用したのはブース・アレン・ハミルトン(コンサルティング会社)のK.R.オリバー氏とM.D.ウェバー氏で、1982年のことです。その後の1996年に、米国で業態や業種の違いを越えてサプライチェーンプロセスを記述・評価するための共通言語としてサプライチェーン運用参照モデル「SCOR(Supply chain operations reference)」が開発されました。
日本でサプライチェーンマネジメントが普及し始めたのは1990年代です。それまで、組織ごとに分断されていた物、情報、資金の流れを一元管理することで、供給の効率化を図ろうという動きが活発化します。
2000年代に入ると日本企業の海外進出が盛んになり、海外拠点を含めたサプライチェーンマネジメントへの意欲が高まります。さらに2005年以降には、ビジネスモデルに合わせてサプライチェーンマネジメントを最適化するという取り組みが積極的に行われました。
課題
サプライチェーンマネジメントにおいて最も大きな課題は「リアルタイムな情報収集」です。現在では中国やインドなどの新興国が急成長し、市場は極めて多様化しています。10年以上前ならば製品市場は限られたものだったため「需要を肌で予測する」ということも可能だったでしょう。しかし現在では、市場や需要の多様化によって需要予測が複雑化し、リアルタイムに情報を収集するための仕組みが欠かせません。
それに対し多くの企業では組織ごとにシステムが分かれており、サプライチェーン全体にわたるリアルタイムな情報収集ができていないのも現状です。
ソリューション(解決)
現代のサプライチェーンマネジメントにある課題を解決するためには、リアルタイムに情報収集するためのプラットフォーム(基盤)が必要です。最終消費者からサプライチェーンとは逆に流れてくる情報を効率良く収集し、それらを一つのデータベースで管理し、迅速な需要予測や市場分析を行ってサプライチェーン全体を最適化していくことが目指す姿です。
そのために提供されているのがサプライチェーンマネジメント(SCM)システムやERP(エンタープライズリソースプランニング)です。
SCMシステムは調達管理システム、在庫管理システム、生産管理システム、販売管理システムといったサプライチェーンを取り巻く各業務システム環境と連携し、それぞれの情報を一元管理して需要予測などに役立てるためのプラットフォームです。
これに対しERPはその概念をさらに広げ、サプライチェーン全体に加え、営業や経理といったフロントオフィスとバックオフィスもすべて統合した情報基盤であり、サプライチェーンよりもさらに広範囲な最適化を実現します。
機能
一般的なSCMシステムには次のような機能が含まれています。
1. マスターデータ管理
調達管理システム、在庫管理システム、生産管理システム、販売管理システムといったサプライチェーンに関わるシステムから情報を収集し、マスターデータとして管理します。
2. 需要予測
POSや店舗から吸い上げた情報を分析して需要予測を行います。そのためにはリアルタイム性の高い情報が必要です。市場の変化は速いため、いまの情報を把握することが重要です。
3. 生産計画
需要予測から大まかな生産計画を立案します。生産全体のスケジュールを決定するため、SCMシステムのデータを基本にしながら、さまざまな要素を加味しながら生産計画を作成します。
4. 販売計画
生産計画から販売計画を立案し、マーケティングやプロモーションと連携していきます。さらに、販売計画を他組織と共有することでサプライチェーンの最適化を図ることも大切です。
5. 在庫改善
仕入れと在庫のバランスを情報分析によって在庫状況を可視化し、適正在庫の維持や問題在庫の抽出を行います。
メリット
SCMシステムを導入するメリットは「在庫適正化」「人材活用」「需要対応」「コスト削減」の4つです。
- 在庫適正化
在庫というのは多すぎると企業の経営を圧迫しますし、少なすぎると機会損失を生んでしまいます。しかしながら適正在庫を保つことは難しく、確実に実施できている企業は多くありません。SCMシステムの在庫分析によって何が過剰で何が不足か、問題在庫の有無や適正在庫のラインなどを把握することができます。これに在庫適正化を実現し、様々な副次的効果を生み出します。
- 人材活用
SCMシステムでサプライチェーンマネジメントを実施すると、情報の流れが可視化され今最もリソースを割くべきプロセスというのが分かります。そのため人材活用が促進し、人材リソースを効率良く分配できます。
- 需要対応
SCMシステムで市場分析を実施していることで、需要の変動が読み取れます。需要への柔軟な対応ができビジネスチャンスを逃がしません。
- コスト削減
在庫の適正化を図って仕入れ数を最適化したり、小売店へ最適なタイミングで製品を出荷できるようになると無駄なコストが削減されます。
デメリット
デメリットではありませんが、気を付けるべき点はあります。それはサプライチェーンマネジメントにおいて業務効率ばかり追求すると、業務効率は向上しても結果として売上が減少するという事例が少なくありません。
これはサプライチェーンの最適化ばかりに目が行き、実際の需要を把握できていないことで起こります。市場ごとに、その時々が何が起きているのかをリアルタイムに把握した上でサプライチェーンを最適化し、最終消費者に最大の価値を届けましょう。
選び方のポイント
SCMシステムを選ぶ際はまず、クラウドにするかオンプレミスにするかという提供方式の観点と、単体システムとして導入するかERPとして導入するかという位置づけの選択が重要です。
まず提供方式ですが、最近ではクラウドサービスが主流になっています。システムの導入という点ではハードウェアの設計や調達が不要で初期投資を抑えながら素早く展開できることや、常に最新の機能を利用できること、事業所や組織を超えた情報共有が行いやすいといったメリットがあるからです。
また位置づけとしては、サプライチェーンマネジメントだけでなく、さらに広範囲の最適化を目指したERPも注目されています。サプライチェーンは生産や物流など多くの業務視して無と連携して成り立つものです。そのため、事業に必要な情報を一元管理するERPのメリットが大きいのです。
ERPをクラウドサービスとして提供するクラウドERPなら企業規模に関係なく、少ない運用負担と初期投資で導入でき、組織をまたがる情報共有も円滑に行えます。
まとめ
市場や消費者のニーズはより複雑化しており、より速く市場の変化に対応してゆく必要があります。そのためサプライチェーンマネジメントの重要性は今後も上がってゆくでしょう。そのためには、拡張性に優れたクラウドERPとその基盤を活用したSCMの導入をご検討ください。
関連ブログ記事
現在公開されている記事はありません。
ブログ無料購読のご案内