生産管理では、販売計画をもとに生産計画を立てたり、そこからさらに部品や原材料の調達計画を立て、発注先の決定や価格交渉、生産能力の計算、人材リソースの割り当て、工程管理や品質管理など、非常に多様な業務をこなしていきます。
大規模な組織であればそれぞれの業務に担当者が就くということもありますが、中小規模の組織では生産管理部がこれらの業務を一任していることも多いでしょう。さらに、そうした生産管理業務をすべてエクセルで管理している企業が多いのではないでしょうか?
エクセルによる生産管理はメリットもデメリットもあります。今回は、その両方を改めて認識することで、今後の生産管理について考え直すきっかけにしていただきたいと思います。
生産管理をエクセルで行うメリットとは?
まずはメリットからご紹介しましょう。
誰でも使える
エクセルは社会に出たビジネスパーソンなら誰もが使用するツールでしょう。「Googleスプレッドシートしか使ったことがない」という新入社員でも、操作性は類似しているので非常に短期間で使い方をマスターできます。
そのため「改めての教育が不要」というのは、そこにかかるコストを削減できるメリットがあります。
安価に使える
現時点で最新のOffice 2016は、ボリュームライセンスで購入するとStandardエディションが1ライセンスあたり49,000円です。購入数によってはディスカウントがあるので、さらに安く取得できます。
これは、何かシステムを構築するよりも圧倒的に低コストです。ほとんどの企業では改めてOfficeを導入することはないので、安価に使えるというメリットがあります。
自動化できる
エクセルにはVBAマクロという心強い味方がいます。これはユーザー操作を記録することで同じ操作を自動化する機能です。専用のプログラミング言語であるVBAを扱えれば、さらに高度な自動化も可能でしょう。
これらはある程度学習すれば、今までプログラミングに触れたことが無い人でもプログラムを開発できます。
連携が簡単
実は、エクセルは多数のインターフェースを持つツールなので意外と連携が簡単です。なので他システムから取り込んだデータを自動的に処理して、表としてまとめるということも可能です。
業務効率化になる
エクセルがビジネススタンダードなツールになっている理由は業務効率化に大きく貢献するからです。特にVBAマクロを活用すると、色々な作業を効率化できるため大幅な業務効率化になります。
このようにエクセルにはたくさんのメリットがあります。これだけ見れば、生産管理もエクセルで十分なのではないか?という気になってくるのも無理はありません。
生産管理をエクセルで行うデメリットとは?
では次にデメリットをご紹介しましょう。
バージョンごとの互換性
エクセルを含むMicrosoft Officeは、2~3年ごとに新しいバージョンがリリースされています。現時点での最新はOffice 2016ですが、今年後半にはOffice 2019がリリースされる予定です。
新バージョンの登場は機能やデザインが改善されているので基本的には良いことなのですが、バージョンごとに互換性が違うという問題もあります。そのため、Office 2016で作成したプログラムがOffice 2019で動かないといったケースも少なくありません。
同時編集ができない
エクセルは基本的に同時編集ができません。なので1人のユーザーがファイルを開いていると、他のユーザーは開くことができないのです。設定によって誰がファイルを開いているか?を特定できるようになっていれば良いのですが、この設定が無いとファイルが開きっぱなしで編集できないという可能性があります。
これによって労働生産性を下げてしまうこともあるでしょう。
処理速度の低下
エクセルではファイルを作成したばかりのときは、操作がサクサク行えます。しかしエクセルはクライアントPCで動作するため、データが蓄積されていくと、やがてファイルを開くのさえ時間がかかるという問題が発生します。
エクセルは1つのファイルで管理できるデータに限りがあるので、扱うデータ量によってはハイスペックなPCを利用しないと処理速度の低下は免れないでしょう。
プログラムの属人化
エクセルのVBAマクロで作成したプログラムの設計は、基本的にプログラムを作成した人の頭の中にあります。一般的な開発業務と違って個人的に作られることも多いので、設計書などのドキュメントが存在しないことが多いのです。
そのため作成者本人以外はプログラムを編集することができず、万が一作成者が退職すればプログラムがまったく機能しなくなる可能性があります。
簡単に作れてしまう
エクセルでプログラムを簡単に作れることはメリットですが、これは同時にデメリットでもあります。簡単に作れるが故にプログラムが乱立し、管理ができずに混乱してしまうのです。
履歴管理ができない
ファイル共有スペースを使用してエクセルを複数ユーザーで共有していると、どのファイルが最新なのかが分からなくなることがあります。ユーザーごとに異なるファイル名で保存したり、更新をきちんと反映しないと間違ったファイルを量産し続けることになります。
変更を反映できない
生産管理に何らかの変更が起きたとしても、それをリアルタイムに反映できないのもエクセルのデメリットです。そのためデータの整合性が取れず、後々問題が発生することもあります。
以上が生産管理にエクセルを使用するデメリットです。こうして見てみると、メリット以上にデメリットの方が重要視すべきなのではないかと思います。
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町工場のような小さな生産現場ならばエクセルで十分生産管理が行えます。そもそも管理対象が少ないですし、従業員もさほど多くなければ尚更です。しかしある一定の規模を超えるとエクセルでの管理は現実的でなくなります。前述したメリットよりもデメリットの方が強くなり、バランスが徐々に崩れていくのです。
では、生産管理がエクセルでは機能しない場合どうすればよいのでしょうか?それは生産管理システム、あるいはERP(エンタープライズリソースプランニング)を導入することで対応できます。
生産管理システムは文字通り生産管理に特化したシステムです。生産計画、調達計画、発注先の決定や価格交渉、生産能力の計算、人材リソースの割り当て、工程管理や品質管理、在庫管理などあらゆる業務を効率化するための機能が備わっており、それぞれの業務でデータ簡単に受け渡すことができます。
一方ERPは、生産管理システム単体ではなく販売管理システムや顧客管理システムなど様々な業務システムを一つに統合した製品です。そのため、現実的には不可能だった各システムでのデータ連携や分析レポート出力など、企業全体の情報資源をフル活用するための環境が整います。
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生産管理はサプライチェーンの中で他の業務との関わりも深いプロセスです。そのため、ERPの生産管理では他の業務とデータを一元管理することで、よりリアルタイムに正確な管理や分析を可能にします。
現在もエクセルで生産管理を実行しているという企業では、この機会に生産管理環境を見直してみてはいかがでしょうか。そろそろエクセルでは限界かな?と思えば、システム移行のタイミングと言えます。その際は将来的な業務間の連携も見込んで、ERP導入も同時に検討していくと、より自社に最適な生産管理業務を適用することができます。
参考記事:生産管理とは
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