生産計画はなぜ必要なのか?この疑問に対して正確に答えられる人はどれくらいいるでしょうか。多くは「生産計画を立てることは当たり前」「生産計画が無いと生産は成り立たない」と考えています。しかし、数ある企業の中には生産計画を持たないところもあります。
たとえば中東の液化天然ガス(LNG)を扱うような工場では基本的に生産計画を持ちません。それは扱っている主要製品がLNGの一種であり、十年以上の長期販売契約でアジアや欧州に販売されるからです。そのため需要変動がなく、生産量も一定なので生産計画を必要としません。
しかしその他の多くの企業は違います。多品種生産が当たり前の時代であり、毎年新製品が登場したり古い製品が消えたりします。また原材料や部品も外部から購入しなければなりません。加えて常に需要が変動しているため、それを予測した上で生産を進めていく必要があります。
前置きが長くなりましたが、今回ご紹介するのは生産計画の“重要性”、それと実現するための生産管理システムです。
そもそも生産計画とは?
すべて、とまではいかないでしょうが9割以上の製造会社は生産計画に基づいて生産を実行しているでしょう。ではまず、生産計画とは何かを改めて整理していきましょう。
企業経営の中で“計画”という名が付くものはいくつもあります。大きなカテゴリで言えば経営計画、事業計画、部門計画、業務計画。さらにそれらの中には開発計画、調達計画、購買計画、販売計画、資金計画、人事計画、保全計画、物流計画、サービス計画などがあります。その中で生産計画は、各部門の計画に密接に関係しているものです。
生産計画を立てる際は主に次のようなことを考えます。
- 効率良く生産するためにできること
- どういった順番で生産すればよいか
- 顧客が要望する納期に間に合うか
- 間に合わない場合、納期をいつに設定するか
- 生産に必要な部品や原材料在庫は足りているか
- 資材調達は可能か
- 生産負荷が生産能力をオーバーしていないか
- 生産負荷の平準化は可能か
- 人員計画は立てているか
- 生産設備は整っているか
- 販売計画を達成できるか
- 発生した場合の対処法は何か
- 市場需要はこれからどうなるか
このように生産計画担当者は様々な要素を検討しつつ、QCD(品質、コスト、納期)を達成できる生産計画を立てなければなりません。さらに、生産計画は調達計画、人員計画、設備保全計画と上手く連携を取りながら立てていくことが大切です。
「生産管理とは」について調べてみよう!
生産計画を立てるためには?
生産計画について簡単に説明しましたが、実際に計画を立てるとなるとそう簡単な話しではありません。先述した項目をすべて検討しながら計画を立てていくわけですから、生産計画担当者の負担は大きいでしょう。しかしその中でも、ちょっとした工夫で実態に即した生産計画が立てられます。
有名なところで言えばトヨタ自動車の“かんばん方式”です。この方式では最終的な生産計画から逆算して必要な部品数などを割り出し、その情報を前工程へと逆流させていきその時必要な分だけを生産していきます。
たとえばとある二次下請けメーカーではかんばん方式によってその日必要な数だけを生産し、サプライヤーに対してもかんばん方式で生産指示を出します。そのため実質的に生産計画が無くても、問題なく生産を実行できるのです。
これはある程度需要予測が変動しないことを前提としている生産方法です。では、需要変動が激しい企業では、どのようにして生産計画を立てればよいのでしょうか?
多品種少量生産の場合、需要変動が大きいことから生産計画に苦労する担当者は多いはずです。顧客からの納期要望は常に変化しますし、計画はほとんど毎日のように変化していきます。
その中である容器メーカーが取った生産計画方法は、計画上であらかじめ枠取りされた生産量に対し、営業が加工や荷姿などの条件まで確定した注文を、その枠内に必要数分条件を入力して確定していきます。このため受注の度に生産計画を立てる必要はなく、かつ納期も明確になります。
この方式によって営業部門と製造部門のコミュニケーションは格段に改善され、より効率的な生産計画が立てられるようになります。
[RELATED_POSTS]これからの生産計画に欠かせないもの
トヨタ自動車のかんばん方式を採用できる企業はそう多くありません。そうした企業の下請けに限定される傾向があります。多くの企業は先述した容器メーカーのように多品種少量生産が当たり前なので、せっかく立てた生産計画も毎日のように変わってしまいますし、そうなると原価低減や納期通りの生産などは困難になるでしょう。
では、先述した容器メーカーはなぜ効率の良い生産計画を実現したのでしょうか?それは営業部門と製造部門で共通可能な“生産管理システム”を活用したからです。
生産管理システムは文字通り、生産管理をシステム化によって効率良く進めていくためのITソリューションであり、その中には生産計画を効率良く実行するための機能も含まれています。どういった機能かは製品によって異なりますが、いずれの製品でもシステム化によって効率化できる部分は多いでしょう。
多品種少量生産が当たり前の現代で、効率良い生産計画の実行に生産管理システムは欠かせません。
様々な連携を考慮する
生産管理システムが欠かせないとはいえ、どんな製品でも良いわけではありません。ここで注意していただきたいことが、生産管理は様々な部門やそこに関連した計画と連携する必要がある、ということです。
たとえば生産計画に基づいて調達計画や人員計画を立てますが、そもそも生産計画は販売計画に基づいて立てられているのです。この他にも在庫や需要予測など、いろいろな部門、計画、業務と連携するのが生産計画です。営業部門とも連携することで、的確な納期を提示したりスムーズに生産へ移行することが可能です。
そこで生産計画をシステム化する際にはERP(Enterprise Resource Planning)をおすすめします。ERPとは生産管理システムを含め、あらゆる業務システムを一つに統合したソリューションです。日本では1990年代後半から2000年代にかけて普及が進み、当時は「大企業が導入するもの」として認識されていました。
実際に導入コストや期間は大きく、効果も大きいかもしれないですが、その初期投資の大きさに中小企業では手の出づらいITソリューションだったのです。しかし最近では、クラウドERPの台頭によってその敷居が一気に低くなりました。
少ないIT人材リソースでも運用負担がほとんどないので気軽に導入できますし、何より従来のERPに比べて圧倒的に初期の導入費用や期間を抑えることができます。
そして生産計画にERPをおすすめする理由は、生産計画システムや生産管理システムとあらゆる業務システムが既に連携しているからです。ERPは構造的に複数の業務システムを一つのデータベースとプラットフォームで構築するため、業務システム間のデータの整合性が初めから担保されているのです。
さらにクラウドERPであれば、ハードウェアの設計や調達も不要で、従来のERPに比べて少ない負担とコストで大規模な業務システム環境を構築できます。
[SMART_CONTENT]
まとめ
皆さんの会社では生産計画に基づいて的確な生産が行えているでしょうか?もしも、変更が多くてまったく生産計画通りに進まない、生産計画にそもそも無理があるなどの課題を抱えている場合は、この機会に生産管理システムならびにERPの導入をぜひご検討ください。
- カテゴリ:
- サプライチェーン/生産管理
- キーワード:
- 生産管理