経営資源の可視化や組織全体の効率化、あるいは拡大するグローバル環境への対応といったニーズを満たすに当たり、“クラウドERP”の導入は非常に有効な選択だと言えます。
Webベースで提供される統合システム環境は、導入の迅速化と低コスト化を促し、導入後の運用業務まで効率化するなど数々のメリットを享受できるのです。
とりわけリソースを運用に割けない、中小企業やベンチャー企業では優先的にクラウドERPを検討するという光景が頻繁に見られるようになりました。
しかし、いくらオンプレミスよりも低コストで導入が可能だとしても、やはり各製品の価格が気になる所ではないでしょうか?
今回は、クラウドERP世界No.1の“NetSuite(ネットスイート)”を筆頭に、国内で提供されている主要10製品の価格比較を行ってみました。
クラウドERPの製品価格を一覧で比較したいという企業にぜひご活用いただきたいと思います。
ERPソフトウェアの評判
G2 Crowd社が最新のERPソフトウェアの比較分析を公開しています。G2 Crowdの分析レポートは、ERP製品利用者(企業)のレビューや評価をもとにした顧客満足度の軸、マーケットシェアや企業規模、影響力などのスケール軸により複合的な指標で評価された結果を表しています。
一方で、国際的調査機関である米ガートナー社は、独自の市場分析メソドロジ、マジック・クワドラントを用いて多くのベンダーの位置付けを公表しています。
このマジック・クワドラントとG2 Crowdを比較すると、G2 Crowdは、ソフトウェアやサービス利用者のレビューを軸に評価分析を行うところが大きな特長と言えます。
ガートナー社のマジック・クワドラント評価軸は、横軸に「ビジョンの完成度(Completeness of Vision)」、縦軸に「実現能力(Ability to Execute)」を置き、第1象限から第4象限を「リーダー(Leaders)」「チャレンジャー(Challengers)」「ニッチ(Niche Players)」「ビジョナリー(Visionaries)」と評価しています。
では、ユーザー視点の評価軸をもつG2 Crowdではどのようなベンダーが評価を受けているかと言うと、Microsoft Dynamix AX、NetSuite ERP、SAP Business All-in-One、JD Edwards EnterpriseOne、Oracle E-Business Suite、SAP ERPなどの評価分析や比較がなされており、NetSuiteやMicrosoft Dynamix AXなどがリーダーとして位置づけられています。
ERP Software Grid でみる各社の状況
- 「リーダー(Leaders)」カテゴリのERP製品は、G2 Crowdユーザーからの高評価だけではなく、スケール軸もあわせもった企業となります。
また、マーケットシェアやグローバルサポート、サービスリソースなども考慮されます。今回リーダーに選出された企業はMicrosoft Dynamics AX ,NetSuite ERP , Sage 100 ERP , SAP Business All-in-One , JD Edwards EnterpriseOneでした。
- 「ハイパフォーマー(High Performers)」のカテゴリに選定されたERP製品は、ユーザーから高評価を受けているが、まだリーダーカテゴリにあるようなシェアや規模、影響力を獲得するに至っていない企業が多く存在します。今回High Performersに選出された企業はAllProWebTools です。
- 「コンテンダー(Contenders)」カテゴリのERP製品は、平均点以下の顧客満足度に留まっているか、レビュー数が少ない企業です。今回コンテンダーに選出された企業は、PeopleSoft
,Oracle E-Business Suite ,SAP ERP , Microsoft Dynamics GPでした。
- 「ニッチ(Niche)」カテゴリのERP製品は、マーケットプレゼンスが充分とは言えないことを意味します。このニッチカテゴリ(Niche)の製品は顧客満足度が高い可能性もありますが、十分なレビュー数に至っていない状況です。
このG2 crowdサイトでは、製品間の細かなユーザー評価の比較なども行えますので一つの参考として捉えられるのではないでしょうか。たとえば以下の画像は、Microsoft Dynamics AXとNetSuiteのAP(支払勘定)機能に対するユーザーの評価です。それ以外にも価格やROI、導入、総勘定元帳、資産管理、プラットフォーム、インテグレーションなどで比較を行えます。
NetSuiteは、本ユーザ評価から見ると、他社に比べてバランスの良いポジションを持っており、大きなポテンシャルとバランスを持ったソリューションであると言えるでしょう。
クラウドERP製品を比較
ここでは10ユーザー未満の小規模環境から、100ユーザー以上の中規模環境までに対応したクラウドERP製品をご紹介します。
1. NetSuite/ネットスイート株式会社
NetSuiteは世界160ヵ国、30,000社以上の企業に導入されている製品であり、クラウドERPとして世界No.1のシェア率と、ERP業界全体で見たときのNo.1成長企業でもあります。
製品の特徴はやはり、“独自の開発可能なプラットフォームを提供している”というポイントです。
NetSuiteはクラウドERPとしてパッケージ化された統合システム環境を提供しながら、導入企業独自にアプリケーションを開発することや、エンドユーザーがシンプルに管理コードをカスタマイズすることができます。
これにより柔軟なシステム環境を構築し、あらゆる企業のニーズを満たすことができる製品です。
また、世界20ヵ国/190種類以上の通貨/100種類以上の税務報告書により、グローバル環境でのERP構築を支援する点についても注目されています。
NetSuiteの価格情報
NetSuiteのライセンス体系は、基本ライセンス(1事業所ごとに必要)とユーザーライセンス、そしてサポート費用(任意)で構成されます。
サポート費用に関してはライセンス及びオプション費用の総額に対し、月額27.5%で利用できます。
※価格は変動しており、最新版の価格情報に関しては弊社窓口までお問合わせください
データシート:NetSuite 10ユーザー分の価格と導入費用
2. ZAC/株式会社オロ
ZACは販売管理/在庫管理/経費管理/勤怠管理などのバックオフィス機能を提供する国産クラウドERPです。
プロジェクト管理機能に特に力を入れており、経営における収支を視覚化し、計画的な資産運用を支援します。
ZACの価格情報
ライセンス体系は機能ライセンス、ユーザーライセンスで構成され、使用する機能やユーザー数によって変動するのが特徴です。
また、毎月ライセンス費用の1.5%(年率18%)のサポート費用が加算されます。
導入時はコンサルティング費用や、個別カスタマイズ費用なども発生するので事前の確認が重要です。
3. Oracle ERP Cloud/日本オラクル株式会社
大手ERPベンダーとして、パッケージ製品で高いシェアを誇るオラクルの中堅・中小企業向けクラウドERP、それがOracle ERP Cloudです。
Oracle ERP Cloudは、データモデルが一元化されているため必要なモジュールを自由自在に追加したり削除できてもビジネスプロセスの整合性が保たれる点が大きなポイントです。
大規模ERPで培ったOracle E-Business Suiteの機能のほとんどがそのままにクラウドで利用できるため中堅・中小企業や大企業においても機能面でできないことはありません。
また、コンフィグレーションで細かな設定ができる特徴があり企業の柔軟なビジネスプロセスに対応できる点が選ばれる理由です。
Oracle ERP Cloudの価格情報
ライセンス体系に関する情報がないためランニングコストに関しては未知数ですが、最も低コストな導入支援サービスを提供しているパートナーで200万円~の導入費用がかかります。ライセンス面では、ほぼNetSuiteと同等の価格と言えるでしょう。
Oracle ERP CloudとSAPの比較
Oracle ERP Cloud とSAPは、導入において必ずと行って良いほど選定候補になる商材です。英語ではありますが比較資料をご用意しましたのでご参考になさってください。
Eブック:成長を推進するためになぜSAP Business OneからNetSuiteへ切り替えるのか
4. SAP Business ByDesign/SAPジャパン株式会社
オラクルと同じく大手ERPベンダーのSAPが提供するクラウドERPです。
主に人事管理システムに強い製品ですので、企業の人事体制を立て直したい企業などに多く導入されています。
クラウドERPとしては高額帯に分類されるので、事前の価格確認が重要です。
SAP Business ByDesignの価格情報
ライセンス体系は最小ユーザー数20名のPublic Edition、最小ユーザー数200名のPrivate Editionがあり、その他サポート費用などがかかると考えると、他製品よりも割高感は否めません。
5. Microsoft Dynamics 365/日本マイクロソフト株式会社
マイクロソフトが2016年11月11日に提供開始したクラウドERPであり、これまでERPの主流として提供されてきたMicrosoft Dynamics NAVをクラウドサービス化した形になります。
Microsfot Office製品に近いインターフェースを持つため、エンドユーザーとしてもスムーズに馴染むことができる製品です。
Microsoft Dynamics 365の価格情報
価格は営業支援/顧客管理/フィールドサービス/プロジェクト管理とMicrosoft PowerApps/Microsoft Flowを含めたPlan1がユーザーあたり月額12,510円。
この他財務会計などを含めたPlan2が要問合せとなっています。
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小規模ベンチャー向けクラウドERP
上記以外に、小規模ベンチャー向けに提供されているクラウドERPの価格情報も紹介します。
6. MFクラウド/株式会社マネーフォワード
クラウド型会計ソフトを中心に提供するMFクラウドですが、バリューパックを契約することで会計業務/請求書作成/経費清算/給与計算/マイナンバー収集の機能をまとめて利用することができます。月額費用は3,900円と非常にリーズナブルです。
7. freee/freee株式会社
こちらもクラウド型会計ソフトを中心に提供するfreee。決済書作成/請求書作成/部門別会計/電子帳簿保存などを提供し月額3,980円となります。
8. FVCプランナー/合同会社フロントビジョンコンサルティング
初期費用3万円、基本月額費用2万円から利用できる低価格対クラウドERPです。ただし、システム保守や電話サポートなどを含むプレミアムプランは月額20万円かかるので、必ずしも低コストではないようです。
9. ALL-IN/株式会社ビジネスバンクグループ
基本月額費用38,000円に加え、ユーザー毎に月額3,000円がかかります。別途費用がかかることもないので低コストで利用できるのは確かです。
ただし、顧客管理/営業管理/グループウェアなど機能は限定的なので中小規模にはあまりフィットしないクラウドERPです。
10. DS-mart ERP/株式会社電算システム
販売管理/生産管理/貿易管理/会計管理を中心としたクラウドERPであり、初期費用50,000円、月額費用50,000円で利用できます。
ユーザー数に関しては10~1,000名まで価格変動がないので、利用ユーザーが多いほどコストパフォーマンスが向上します。
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まとめ
いかがでしょうか?今回はクラウドERP主要10製品の価格情報を紹介しました。クラウドERP導入検討にぜひご活用ください。
最後に、クラウドERP選定において価格は重要な要素ですが、優先度は必ずしも一番ではありません。
あくまで自社の導入目的を明確にした上で、それを解決するような製品を選んでいただきたいと思います。
※各製品の価格情報は2018年8月6日時点での情報を記載したものであり、変動する可能性があるのでベンダーへの確認を徹底してください
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- ERP