車両を所有しているのは運輸業や運送業だけではありません。営業や役員の移動用に車両を所有している企業も多いでしょう。では、それら多くの車両の管理を徹底できている会社はどれくらいあるでしょうか。なぜなら、車両は移動するものであり、かつそれを使用するのが人だからです。車両が移動すれば、それを使用する人も含めて管理者の目の届かないところへと行ってしまうからです。
そのため従業員がどのように車両を使用しているのか?あるいは、適正かつ安全に使用しているかなどを知るのは従来難しかったのです。だからといって車両管理を行わないと様々な弊害が発生します。
今回は、車両管理とは何か?という基本的な疑問を解消し、その目的と方法をご紹介します。
車両管理とは?
車両管理とは文字通り、企業や組織が所有する車両を管理するための業務です。ただし、車両情報を記録するだけではありません。車両管理では主に次の項目を管理します。
- ・車両を本体にかかわる項目
- 自動車登録番号、車名、初度年度、メーカー、型式、車台番号、車格
- ・購入にかかわる項目
- 仕入先、購入・契約年月日、仕入れ区分、廃車・解約年月日、購入・リース金額
- ・車検・整備にかかわる項目
- 車検の有効期限、定期点検日、整備工場名、整備状況
- ・修理・事故にかかわる項目
- 修理箇所、修理内容、事故発生日、事故内容
- ・使用・管理にかかわる項目
- 使用部署、使用者、運転者、変更履歴、走行距離、使用目的
- ・車両保険にかかわる項目
- 自賠責保険(保険年月日、保険会社、証券番号、保険金額)、任意保険(契約年月日、契約期間、保管会社、証券番号、代理店名、保険内容)
思っているよりも管理すべき項目数が多いのではないかと思います。これらの項目を含む車両管理台帳を作成するか、あるいは車両数が多いと車両管理システムによって管理するのが通常です。
[RELATED_POSTS]車両管理の目的
会社が車両管理を徹底する目的は次の3つです。
安全確保会社は従業員が車両を使用するにあたってその安全を確保する責務があります。走行に関する安全は運転者に依存しますので、車両点検や整備を徹底することで車両トラブルによる事故を防ぎます。車両が常に整備されていないと事故を引き起こす可能性が大きくなるので、車検や定期点検といった項目は必ず管理しましょう。
加えて車両運転に関するルールを設定し、それを徹底する必要もあります。
リスク回避従業員が車両事故を起こせば、それは従業員だけの責任ではなく会社の責任でもあります。このことは民法709条と715条によって明確に定められているものです。
- 民法709条
- 自分の行為が他人に及ぼすことを知っておりながらあえて(故意)違法の行為をして、他人の権利や利益をおかし損害を与えた者は、その損害を賠償しなくてはならない。不注意(過失)による場合も同様です。
- 民法715条
- ある事業のために他人を使用する者は,被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし,使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき,又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは,この限りでない。
- 使用者に代わって事業を監督する者も,前項の責任を負う。
このため、従業員が車両事故を起こすと会社は社会的信用を失い、経済的損失も発生します。こうしたリスクを回避するために、車両管理を徹底して従業員に「監視されている」という認識を持たせ、安全運転を心がけるよう策を講じなければなりません。
コスト管理車両は会社にとっての資産です。資産運用のためには当然コストがかかり、車両ではガソリン代や車検費用などが主なコストです。このうち、車検費用や保険費用、あるいは車両点検費用は削減が難しいコストでしょう。ただし、ガソリン代に関しては大幅にコスト削減できる可能性があります。
従業員の運転を管理し、かつ無駄な走行を防げればガソリン代は節約できます。従業員の中には車両をビジネス目的ではなく、私用目的で使ったり、あるいは時間を潰すために無駄に車両を走らせる人もいます。これは当然ガソリンの無駄遣いなので、やはり車両管理によって監視されていることを認識してもらうことで、こうした無駄を排除します。
車両管理のメリットとデメリット
車両管理を徹底すれば安全確保、リスク回避、コスト削減ができるというメリットは大きいでしょう。これまで車両管理を適切に行っていなかったのならば、さらにその効果は高くなるでしょう。しかしその反面、デメリットが大きい点は見過ごせません。
車両管理を“面倒くさい”と感じてしまうと、生産性が低下して日常業務に支障をきたす可能性すらあります。だからといって管理しなければ車両の使用状況はめちゃくちゃになってしまいます。
そこで“車両管理システム”の導入をおすすめします。これは、車両管理に特化したITシステムであり、前述した管理項目を徹底管理すると同時に、車両に搭載したGPSを活用して走行ルートや停車場所、さらにIoTの技術と組み合わせて実際の走行状況まで可視化できてしまいます。車両管理を徹底する上でこれ以上ないITシステムです。
ただし、車両管理システムを使用すると従業員の「監視されている」という認識がより強くなるので、これを嫌がる従業員もいます。その際は「監視されて当然だ」というスタンスではなく、車両管理システムを導入することで従業員にとっても会社にとってもこんなに多くのメリットがあるぞというスタンスで、車両管理システムへの理解を得ることが大切です。
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業務システムとの連携
車両管理は実際には単に安全管理とリスク管理のためだけのものではありません。車両は会計システム上は固定資産として計上され、毎年一定の割合で減価償却費が計上されます。使用が終了して販売すれば、簿価と実売額との差額が損益として計上されます。
このように、車両管理は企業の業務システムと無関係ではありません。むしろ連携することでより正確に会計処理を行うことが可能になるのです。
そのほかにも、物流や運送の業務がある場合には、配車などのためのデータとしても活用されます。そのため、車両管理システムは単体システムではなく、ERP(Enterprise Resource Planning)として導入することに大きなメリットがあります。さらにクラウドサービスとして提供されるクラウドERPは、車両情報を収集するためのIoTなどとも相性がよく、効率的にデータを収集してすべての業務に活かすことができます。
まとめ
以上のように、車両管理システムは組織として重要な情報を管理するシステムです。これを単体システムではなく、ERPとして導入することには大きな合理性があるのです。車両管理システムをサポートしているERPか、カスタマイズによって車両管理が実現できるERPがあると、車両管理だけでなく会社全体の業務を効率化したり、車両情報を分析してより業務プロセス全体を効率化し、リスクも低減することができるでしょう。
現時点で車両管理を行っていないという場合は、この機会に車両管理の実施と車両管理システムならびにERPの導入をぜひご検討ください。
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- 会計
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- 経理/財務会計