4つの失敗事例から学ぶ、中小企業の正しいERP導入

 2016.07.13 

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1990年代に国内でも普及が始まったERP(統合基幹業務システム)は、当時導入に失敗する企業が相次いでいました。というのもERPはもともと米国発祥のシステムであり、海外製品をそのまま導入するというケースが一般的であったため「日本の業務スタイルに合わなかった」というのが元も大きな原因です。

それから現在に致るまで、各ベンダーがカスタマイズ対応したりクラウドERPの登場により徐々に成功率が上昇し、現在でのERP導入成功率は60%とも言われています。十数年の間で成功率が3倍にもなったことを考えると、いかにERPが使いやすく成長したのかが伺えます。

しかしこの60%という数字は決して高いとは言えないですね。残り40%は失敗していると考えると、ERP導入時は慎重にならざるを得ません。

ではなぜ、未だ多くの企業がERP導入に失敗しているのでしょうか?今回は失敗事例をもとに、ERP導入が失敗する原因やその対策について紹介していきたいと思います。

現場社員のユーザビリティを無視した結果、ERPが浸透しなかった

ERPは財務会計システム販売管理システム顧客管理システム、人事管理システム、Eコマースなど、企業経営に必要な各システムを包括的に提供するソリューションです。

全てのシステムが100%の親和性で連携が取れているので、組織全体の業務効率化はもちろん瞬時にデータを可視化して経営判断の迅速化を図るといったメリットもあります。

しかしこのメリットも、あくまで組織全体にERPが浸透すればの話です。

実は多くの企業で「ERPが現場に浸透しない」といった失敗事例が起きています。その最たる原因が現場社員のユーザビリティを無視した導入です。

ERPを日常的に使用するのは現場の社員です。経営層に関しても各システムから生成されたデータを把握するためにERPを使用しますが、全体から見れはそれはほんの一部に過ぎません。そのため経営層のユーザビリティではなく、最も配慮すべきは現場社員のユーザビリティなのです。

現場社員がERPを使いづらいと判断すれば、従来の業務スタイルから離れることができずいつまで経ってもERP活用が進みません。

対策:導入検討段階からしっかりと現場社員の声を吸い上げる

この課題を解決するために特別なことは必要ありません。要は現場社員の声を吸い上げユーザビリティを追求すればいいのです。各部署によって「○○の機能が絶対必要」というものがあるので、きちんと現場社員の声をERPへ反映しなければ使いやすいシステムを導入することはできません。

導入段階から各部署の責任者(あるいは担当者)を巻き込み、詳細まで要件を定義した上で導入に踏み込みましょう。

導入を全てベンダーに丸投げし、導入後にコスト増加につながった

特に中小企業で多い失敗事例なのですが、中小企業ではIT人材不足にある企業が多いと思います。総務部など情報システムではない担当者がサーバの管理・運用などを行っているケースもありますね。

こうした場合、ベンダーやパートナーにERP導入の支援を申請することが多いのですが、導入を全てベンダーに丸投げするケースが珍しくありません。

確かにベンダーやパートナーはERP導入のプロフェッショナルですが導入企業の全てを理解しているわけではなく、具体的にどんな機能のニーズを持っているかの把握が難しいのが実情です。

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その結果、導入後になって「あれも必要!これも必要!」となってしまい、カスタマイズに多額のコストがかかってしまいます。また、カスタマイズでの対応ならまだしも完全にリプレースしなければならないといった事例もあるので注意が必要です。

対策:導入企業が主体となったプロジェクト推進

まず、IT人材不足にある企業でもERP導入では「自社でプロジェクトを推進する」といった気概が欠かせません。自社の業務をきちんと理解しているのは他ならず導入企業がだからです。

むしろベンダーやパートナーを引っ張っていくくらいの気持ちを持った方が、導入成功する確率は高まります。

ただし導入企業が全てを決定する必要はなく、要所ごとにベンダーやパートナーに頼ることが必要です。

また、ベンダーやパートナーと密にコミュニケーションを取ることが何よりも重要です。社内外関わらずプロジェクトに関係のある全ての人を一つのチームと考え、導入を進めていきましょう。

導入したはいいものの、ERPから生成されるデータをどう活用していいか分からない

以外にも多いのが「ERPを導入したはいいがどう活用していいのか分からない」といった失敗事例です。特に、経営層が各システムから生成されるデータをどう取り扱えばいいか分からないと導入後に悩むケースが多くあります。

この失敗事例の最大の原因は「ERPを導入する目的を明確にしていなかった」ことです。ERPは導入すれば多くのメリットを享受できるソリューションですが、導入さえすれば全てが上手く回るというものではありません。

だからこそ未だに40%の企業が導入に失敗しているわけです。

また、ERPに対する理解不足も原因の一つとなっています。「取引先や競合も導入しているから」といったなんとなくの理由で導入はしてみたものの、ERPの本質を理解していないがために活用しきれないといったケースが珍しくありません。

ERPを導入することで現場社員の大幅な業務効率化につながりますが、本質的なメリットは各システムから生成されるデータをリアルタイムに可視化できるところにあります。このデータをもとに経営判断の迅速化を図り、市場競争激しい現代ビジネスにおいて常に最適な選択をしていくためにERPは存在していると言ってもいいでしょう。

ですので、データを上手く活用できなければ「宝の持ち腐れ」と言われても仕方ないのです。

対策:目的を明確化し、ERP導入の事前準備を怠らない

ERPを導入する目的を定めるのは大前提です。「なんとなく」の理由で導入すれば必ず失敗に終わります。まずは自社の現状課題をしっかりと洗い出し、それらの課題に対しERPでどうアプローチしていくか?を考えてみましょう。しかしそれ以前に、ERPについてしっかりと理解しておくことが必要ですね。

こちらでは「ERPとは結局何なのか?」という疑問に対して分かりやすく解説しているので、是非参考にしてみてください。

また、ERPから生成されるデータを最大限に活用するためにも、予めデータ分析におけるある程度の知識をつけておく必要があります。データの見方や活用方法など最低限のスキルを付けるだけでも、ERPの導入効果が飛躍的に向上するでしょう。

見るだけでなく、活用してこそのデータであることを忘れないでください。

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業務体制を整えていなかったため、ERPが逆に足かせとなった

ERPを導入するということは、従来の業務スタイルの一部を崩しイノベーションを起こすと言っても過言ではありません。全てのシステムで連携の取れたソリューションを導入するということは、それほどのインパクトがあるということです。

しかし、導入に際し業務体制を整えていなかったことでERPが逆に煩雑化の原因となり、失敗してしまうケースがあります。この時「自社業務に適用しなかったERPが悪い」とERPに原因をなすりつける企業も存在しますが、原因は明らかに導入企業側にあります。

ERPについてしっかりと理解し、慎重に製品選定も行った。そして導入すれば課題を解決できることを確認したにも関わらず失敗しているのは、企業側の業務体制が整えられていないのです。

今や“変化”を受け入れられない企業は淘汰されていく時代です。ERP導入でもこうした変化をしっかりと受け入れた上で、自社の業務体制を整えることが何よりも重要です。

対策:ERP導入により変化する点・しない点を見極める

ERPを導入することで業務にどんな変化をもたらすのか?あるいはどんな点は変化しないのか?をまずはしっかりと見極めましょう。変わる点と変わらない点を分別することで、どの範囲まで業務体制を整えればいいのかが明確になります。

またその上で、ERPに合わせて業務体制を整えていきます。従来の業務内容を大幅に変更しなければならないケースもありますが、変化を恐れずにいきましょう。

ERP導入の受け入れ態勢をしっかりと築いていれば、導入成功の確率はグンと向上します。

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まとめ

ここまでのことを踏まえ、以下に要点をまとめておきます。

  1. 導入検討段階から各部署の責任者を巻き込み、現場の声をしっかりと反映させたERPを導入する
  2. ベンダーやパートナーと密にコミュニケーションと取りつつ、導入企業が主体となってプロジェクトを推進する
  3. 「なんとなく」ではなくERP導入の目的をしっかりと明確化し、データ活用における基本スキルを身につけておく
  4. 業務体制を整え、ERP導入による“変化”に柔軟に対応する

ERP導入に成功している60%の企業は、全てが基本的なポイントを押さえ慎重な導入を行っています。つまりポイントをしっかりと押さえていれば失敗することはそうそうないのです。

ですので、ERP導入成功のためにも、今回紹介したポイントをしっかりと押さえておくことは重要でしょう。

また、自社に最適なERPを選択することもとても重要です。こちらではERP選定におけるを詳細に解説しているので、是非参考にしてみてください。

本稿が今後ERP導入を検討している企業にとって、成功のきっかけになれば幸いです。

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