日本国内においても多くの起業家たちが夢を実現するために会社を設立しています。
東京商工リサーチの調査によると2017年に全国で新しく設立された新設法人は131,981社とのことです。その一方で企業は倒産、休廃業、解散などにより消滅することも少なくありません。例えば2015年の同社の調査では、8,812社が倒産し、26,699社が休廃業・解散をしていることから35,511社が消滅していることになります。
もちろんこれら消滅した企業の中には致し方ない理由もあるのかもしれませんが、多くの起業家たちは未来永劫、自社の成長を望んでいたに違いありません。
新しく創業した企業が、創業期から成長期へとその成長フェーズを変化させていくためには何が必要なのか?今回はそのポイントについてご紹介します。まずは創業期と成長期の定義に関して共通認識としてご紹介します。
そもそも創業期とは?
企業の創業と事業立ち上げの成長フェーズ。このフェーズではまだ創業したばかりで、事業もまだ確立していない。そのため如何にスピード感を持って企業を成長期へと持っていけるかが成功のカギになる。幼年期とも言います。
成長期とは?
事業に対する顧客やリピーターが増加していくと収益が安定していき、新しい事業展開や事業拡大を考える成長フェーズ。このフェーズで確保した人材は将来的に役員等、経営上欠かせない人材になる可能性が高い。そのため、人材のスキルよりも人間性などを重視する傾向にある。
参考記事:企業の成長サイクルとは?幼年期、成長期、成熟期、衰退期の特徴と戦略
創業期の課題を整理する
企業の成長サイクルには創業期と成長期以外に、成熟期と衰退期があります。
成熟期とは一度立ち止まって組織体制や業務全体の見直しを行い、更なる成長を遂げるためのフェーズです。衰退期とはある市場でのシェアが減少していき、「事業撤退か改革か」という選択が迫られるフェーズです。各成長フェーズの中で最も経営スピードが求められるのが創業期でしょう。
創業期にはまだ売上はなく、それ故に売上をとにかくあげることが創業期最大の課題になります。経営資源が無ければ事業展開し、経営を継続していくことができないためです。ただし目先の売上ばかり考えることは危険です。創業期だからこそ企業が目指す方向性や、それに沿った経営戦略が欠かせません。
この経営戦略を策定するためのポイントが次の5つです。
- 企業が描く未来とは?
- 企業にとっての顧客はだれか?
- 顧客が持つ潜在ニーズと顕在ニーズとは何か?
- どのようにそのニーズを満たすのか?
- そのニーズに対しどういった製品やサービスを提供するのか?
各ポイントについて説明していきます。
1. 企業が描く未来とは?
「企業としてこうありたい」というビジョンを持っているか否かで、創業期から成長期へ変化できるかの成否が大きく分かれます。極端に言えば、サッカー選手になりたいと強く願う少年と、将来の夢について何も考えていない少年がサッカー選手になる確率はどっちが高いかという話です。
企業としてのビジョンが無いのは将来の夢を持っていない少年と同じです。少年なら年齢を重ねるごとに将来の夢を見つけたり、具体性が増して目指すところが定まる可能性が大いにありますが、企業は違います。ビジョンが無ければ、経営自体継続できなくなる可能性の方が高いのです。
ちなみに起業から3年以内に倒産する企業の数は全体の70%に達します。それらの企業のほとんどが、経営に対して明確なビジョンを持っていなかったと言ってもよいでしょう。
2. 企業にとっての顧客はだれか?
起業するということは、何らかの製品やサービスを市場へ投入し、成功するという自信を持っているからだと思います。そこで考えるべきことは「顧客はだれか?」ということです。いわばマーケティング戦略における“ペルソナ”のようなものです。
ペルソナとは企業のターゲットとなる顧客について具体的に掘り下げて考えていき、ターゲット像を明確にしていくという分析フレームワークです。顧客のことをより深く理解し、適切なマーケティング施策を展開するために用います。
創業期においてもペルソナほど詳細に掘り下げなくても、どういった顧客をターゲットとするかを明確にしておくことで、製品やサービスの提供方針が固まります。
[RELATED_POSTS]3. 顧客が持つ潜在ニーズと顕在ニーズとは何か?
顧客は常に何らかのニーズ(何かを求める気持ち)があるからこそ、製品を購入したりサービスを利用します。つまるところビジネスとは顧客のニーズを満たすための製品やサービスを提供することです。
従って顧客が持つ潜在ニーズと顕在ニーズを把握することが大切です。潜在ニーズとは顧客本人も気づいていないニーズであり、顕在ニーズとは顧客自身が自覚しているニーズのことです。
たとえば「一眼レフカメラを購入したい」という顕在ニーズを持つ顧客は、「今度の運動会でプロ並みの写真を撮りたい」や「家族の日常を綺麗な写真で残したい」という潜在ニーズを抱えているかもしれません。こうした潜在ニーズと顕在ニーズにフォーカスできれば、製品やサービスの提供価値を高めることができます。
4. どのようにそのニーズを満たすのか?
次に考えるべきことは、顧客のそのニーズをどのようにして満たすか?です。「一眼レフカメラを購入したい」という顕在ニーズを満たすことは、製品を販売するだけなので何ら難しいことはありません。問題は潜在ニーズをどう満たすかです。
たとえば「今度の運動会でプロ並みの写真を撮りたい」という潜在ニーズに対して、どんな素人でもプロ並みの写真が撮れる一眼レフカメラを製造することは不可能です。「家族の日常を綺麗な写真で残したい」という潜在ニーズに対しても、画質的な問題はクリアできても結局は撮影する人の技術によります。
そこでこの潜在ニーズを満たすために、一眼レフカメラを購入していただいた際にプロ並みとはいかずとも、すぐに習得できるちょっとした撮影技術を紹介する冊子等を一緒に配布します。冊子に一通り目を通して撮影してみれば、通常よりも綺麗な写真が撮れるようならば顧客の潜在ニーズを満たすことが可能でしょう。
このように顧客の潜在ニーズが満たされれば、製品やサービスに対するロイヤリティ(愛着心)が高くなり、リピータに繋がる確率が高くなります。
5. そのニーズに対しどういった製品やサービスを提供するのか?
最終的に考えることは顧客が持つ様々なニーズに対しどういった製品やサービスを提供しそれを満たすかです。いわゆるプロダクト設計やCX(カスタマーエクスペリエス)といった領域の話になります。
創業期であってもこの段階まで自社の経営戦略について考えることができれば、成長期へと変化するのは時間の問題でしょう。
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創業期から成長期への変化を支えるITシステム
起業間もない頃は、ExcelやPowerPointといったOfficeツールさえあればビジネスは回ると考えている企業が多いかと思います。
確かに、従業員数が少なければ管理負担は少ないですし、実際にOfficeツールだけで日常的な業務を行っている企業は多いでしょう。
ただし創業期であってもITシステムが欠かせない時代になりつつあります。創業期から成長期への変化するポイントでは組織体制の劇的な変化や事業の急激な拡大がよくあります。そうした環境の変化に関しても上手くコントロールできないと、成長期から更なる成長を遂げることは難しいでしょう。
そこでおすすめするのがクラウドERPです。クラウドERPとは経営上欠かせない業務アプリケーションの数々を統合し、連携が取れたITシステム環境を提供するサービスです。クラウドなので初期投資は抑えられますし、運用負担もありません。創業期にありリソースが少ない企業でも難なく導入できます。
クラウドERPがあることで企業全体の情報が統合的に管理され、経営者はいつでもリアルタイムな経営情報を確認することができます。それに応じた経営の舵切りが可能になり、より高いスピード感を持って経営戦略を実現していくことができるでしょう。
創業間もない企業でもITシステムの重要性を十分に理解した上で、クラウドERPなど適切なITシステム環境の構築に注力していただきたいと思います。
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