次世代ERPを想像する。人工知能を搭載したERPは人々の仕事を奪うのか?

 2019.07.12 

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サンフランシスコで開催されたOracle OpenWorld 2018の満席のホールにおける講演のなかで、OracleのCEOであるマーク・ハードは、 2020年までにソフトウェアやサービスの90%が人工知能(AI)を取り入れており、すべての企業データの半分以上が自律的に管理されているだろうと予測しました。

これはその日ハード氏があげた多くの予測のうちのひとつに過ぎず、それらの予測はすべて、ある共通のテーマに関連していました。機械学習やAIの力を借りた、膨大なデータの収集、文脈理解、そしてそれに基づいた行動の計り知れない価値についてです。

昨今のERPシステムが、常に改善を重ねて刻々とアップデートされる新タイプのアプリケーションを生み出していることを考えれば、これらの予測の多くは実現していると言っても過言ではありません。財務、調達、企画管理、危機管理、その他の業務管理機能を処理する基本的なビジネスアプリケーションは、今や、クラウド型のさまざまな画期的なサービスを取り入れているのです。

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ERPのアップグレード周期からの解放

オンプレミス型ERPシステムは、高額でアップグレード周期が長いことで知られています。ソフトウェアのメジャーなアップデートは2、3年に1度しかありません。戦略的思考をするためには企業は、これら漸進的なアップグレードの先に目を据え、将来的な競争力をもたしてくれるようなテクノロジーを採用する必要があります。そのために多くの企業が、従来型ERPシステムのバージョンアップにかかるコストや煩わしさを避けるために、SaaSを契約するようになってきました。クラウドへの移行は、コスト低減のみならず継続的なイノベーションが約束されている点に多くの企業が魅力を感じているのです。最新型のERPシステムは、クラウド型でサブスクリプション方式をとっています。SaaSプロバイダー業者が定期的に製品をアップデートし、システムを絶えず最新化するのです。

EPR動向アンケートに回答した金融業界のリーダーたちの81%が、 ERP機能をクラウド型に移行させる一番のメリットとして、「時代遅れにならない」ことをあげています。オンプレミス型ERPシステムのレガシーな世界では、次のアップデートまでの何年かの間に、企業の核心的機能が競合他社に後れをとり、テクノロジーが旧式化してしまうというリスクがあります。SaaSアプリの新世界では、イノベーションが継続的に適用され、常に最新のERPが保証されているのです。そしてお客様は、チャットボット、モビリティ、AI、予測分析、ブロックチェーンといった最近技術を容易に取り入れることができるのです。 

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プラットフォームの力

すべての企業がブロックチェーンなどの最新技術を必要としているわけではありません。しかし、一般的にはどの企業もアプリケーションの拡張は必要であり、それはカスタム開発を意味します。多くの企業はまた、外部データをERPに統合しなくてはなりませんが、それらの対象はオンプレミス型システム、Webサービス、IoTセンサー群、構造化もしくは非構造化データベースなど多岐に渡ります。

OracleにおいてERP製品マーケティング部門シニアバイスプレジデントであるユルゲン・リンドナー氏によれば、プラットフォームサービスに対して次の4つの要求がよくあると言います。

全く異なるシステムとつながる機能、ERPを拡張して特殊な機能や体験を可能にする性能、全環境を包括的に保護する能力、そして混乱した情報ソースからのデータを分析する機能です。

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「クラウド型プラットフォームをコンポーネントとして持つクラウド型ERPシステムを強化する能力が、ERPの性能を拡張させ、絶え間なく進化させていくのです」とリンドナーは説明します。

このやり方でSaaS型ERPやサプライチェーンシステムを強化できることが、世界をリードする三菱電機に非常に大きな価値をもたらしています。同社の日本におけるeF@ctoryソリューションは、知的なデータ駆動型の製造サプライチェーン管理における最新鋭であり、これにより三菱は、何千という固有の工業製品を製造し、日々1万件以上の注文を捌いています。

同社は以前、 人材管理、サプライチェーン管理、財務会計、在庫管理、輸送、生産管理などを断片的に処理するオンプレミス型システムと格闘していた経緯があります。工場の機器から送られる膨大なIoTデータを、製造部門も営業部門も活用することができず、それにより重要な決定が遅れることもしばしばありました。

参考記事:生産管理とは

三菱は、Oracle Cloud Platformで入手できるアプリケーションとデータ統合技術を使い、人材管理、サプライチェーン、財務会計、IoTアプリケーションなどからのデータを、提携業者や顧客とのグローバルなやり取りを簡便化するインテリジェント・ビジネス・プロセスとして組み入れました。

「ダウンタイムが顧客に毎分何百万ドルもの損失をもたらすことがあります」と三菱電機 オートメーションの戦略提携部門マネージャーであるティモシー・ロマックス氏は言います。「Oracle Cloudアプリケーションを備えたOracle Cloud Platformは、人工知能のみならず、業務の自動化を橋渡しする重要な構成要素なのです」

機器の声

AI分野における最大の進歩は、情報端末、そして音声インターフェースを通して人々とやり取りするソフトウェアサービスであるチャットボットと言えます。ERPシステムの環境内でそれらの知的エージェントが、需要の変化を基にした価格決定や、底をつきそうな在庫の補充など、人々が日々行う型通りの作業を強化してくれます。機械学習アルゴリズムのおかげで、これら知的エージェントに導入されるデータが増えるほど、そして人同士のやり取りが増えるほど、知的エージェントの反応はより正確でパーソナライズされたものへと進化します。

これらのソフトウェアエージェントがERPシステムやその他の場所でより大きな責任を担うようになっている今、多くの仕事師たちは、ロボットがじわじわと人間の労働者たちに取って代わっていくのだろうかと考えています。自著『Architects of Intelligence(知能の設計者たち)』(2018年、Packt出版)のなかで世に出つつある多くのAIイノベーションについて考察しているマーティン・フォード氏は、自律エージェントは確かにある種の職を奪うものの、それらは新たな職を作り出すだろうとも考えています。たとえば、機械が財務部そのものに取って替わるとは考えられませんが、決算処理の型通りの作業が自動化されることで、経理部門のメンバーにとって決算処理が楽になるのです。

上記のことは今に始まったことではありません。フォード氏は、『ウォールストリートジャーナル』 に発表された2015年の研究を指摘していますが、それによると企業の財務部で働く収益10億ドル当たりの総人数は、着々とスマート化されるソフトウェアのおかげで10年間に40%減少したことが明らかになったと言います。「これはAIではなく、単に財務プログラム内の自動化のせいです。企業の財務部が何年かにわたり取り組んできたものでなのです」と彼は述べています。

そして、それが工場現場における物理的なロボットであろうと、ERPシステム内の企業用ソフトウェアエージェントであろうと、仕事が単純に1対1で自動化システムに置き換えられることはないでしょう。「仕事が置き換えられるのではなく、職場環境全体が再考され、再編成されるのです」とフォード氏は次のように続けます。 「仕事が再構築されるであり、個々の仕事の間の境界線が変わり、徐々に、より大きな割合の重要職務が自動化されていくのです」

新時代の幕開け

型にはまった業務を自動化することで、 より創造的な業務への道が開け、労働者を日常業務から解放することができます。たとえばIT部門なら、自律型データベース技術によって管理者は機械的な仕事を減らし、開発者のソフトウェアアプリ構築を手伝ったり、IT部門がサービスレベルの契約に沿うよう確認したりするなど、人の知識や判断力を要する重要で戦略的な任務に集中することができるのです。サイバーセキュリティ部門であれば、機械学習アルゴリズムが、集中砲火されたサイバーアラートの莫大なデータを収集して事象を相互に関連づけ、未解決の攻撃や欠陥を示すパターンを試行錯誤して探知することができます。ロボットたちはその後、その洞察を調査員へと転送し、必要とあらば調査員が介入することもできるのです。

ここで質問が生じます。自律型アシスタントつきの調査員というものは、両者が別々に稼働するよりもいい働きをするのだろうか。バイロン・リース氏は次のように考えています。 『The Fourth Age: Smart Robots, Conscious Computers, and the Future of Humanity(第四の時代:スマートロボット、意識をもつコンピューター、そして人類の未来)』(2018年、アトリアブックス)の著者であるリース氏は、人と機械の協業における今日の動向は、労働者たちをこれまでになく生産的にすることを約束する「第四の時代」へと人類を導くものであると考えています。テクノロジーが人類を再形成したことが過去に3回あったと彼は振り返ります。10万年前に、我々は火を活用するようにな理ました。1万年前に、農業を開発しました。そして5,000年前に、車輪と文字を発明したのです。そして我々は今、AIとロボット工学がもたらす第4の時代への入り口の前にいるとリースは説きます。

テクノロジーは往々にして他者が成した仕事を漸進的に向上させることで進歩します。もしくはアイザック・ニュートンはそれを「巨人の肩の上に立って遠くを見る」という言い方で表現した、とリース氏は語ります。企業向けソフトウェアの世界においては、それらの代表的なもののひとつが、自動化エンジンであるERPシステムなのです。

今日の自動化の動向がその兆候であるならば、このテクノロジーの巨人は今スタートしつつあるといえるのではないでしょうか。

プロフィット誌に掲載されたデイビッド・ボーム氏 執筆 記事「How to Re-Imagine Enterprise Resource Planning」の抄訳版です。

RPAの数歩先を行く 経理・財務業務のさらなる自動化と自律化

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