SAPは2018年の第4四半期の決算発表で投資家に対し、2019年の事業再編費用は10億ドルとし、全世界で約4,400人の雇用削減を行うことを発表しました。ロイター通信によると、「主要指標は第4四半期に弱まりがあったことを示している。新しいクラウド予約の伸びは、第3四半期の37%から23%に減少した」とのことです。
これは私のような長年のSAPウォッチャーにとっては驚くべきことではありません。最近SAPはあまり良いように報道されていません。ドイツの雑誌AutomotiveITはSAPの顧客の最近のプロジェクト失敗例リストを公開しました。
ドイツのディスカウンターであるLidlが実施したSAPプロジェクト「Elwis」は、目覚しく失敗した大規模インストールの最新事例です。8月にプロジェクトを中止するまでの7年間、LidlはSAPを使用して新しい在庫管理システムを導入しようと試みていました。5億ユーロ以上がプロジェクトにつぎ込まれたと専門家は推定しています。Lidlは、SAPシステムにより、特に米国における成長イニシアチブをサポートすることを望んでいました。しかしこれは突然中止されることとなったのです。Lidlは従業員への社内書簡の中で「当初プロジェクトで定義されていた戦略的目標は、もはや許容できる費用では達成できなくなった」と述べています。
ドイツの国内郵便局であるDeutsche Postも、近年、5億ユーロの支出を償却し、ビジネスプロセスとサプライチェーンを(既存のSAP環境で)最適化したいと考えていました。そして、SAPプロジェクトは最終的にキャンセルされました。
また、既存のレガシーアプリケーションをSAPに置き換えようとした結果、米国のエネルギー会社National Gridへの補償金支払いは約7,000万ドルにもなりました。
ソース:AutomotiveIT、2019年1月2日
またSAPの問題はそれだけではありません。メディアは、Under Armour、BBC、Target、Aurizon、DuPont、MillerCoorsなど、ビジネス界における様々な企業でのSAPプロジェクトの失敗例や問題を報道しています。
SAPの既存顧客である米軍は最近のRFIで「政府はSAP S4/HANAプラットフォームへのコスト高なアップグレードを回避するために、SAP以外のオプションと同様に、SAPへの依存度を徐々に減らすためのオプションを受け入れる予定だ」と書いています。
メッセージは明らかです。SAPはコストがかかりすぎる、複雑すぎる、そしてセキュリティ上のリスクが大きすぎます。
SAPが販売しているもの
SAPが何を販売しているのか、そしてなぜそれに顧客が投資すべきなのかについて、市場はとても混乱しています。2015年に発売されたS/4HANAはSAPの新しいフラッグシップERPです。これには次の2つの種類があります。
- S/4HANAパブリッククラウド これは専門のサービス会社と部品メーカーにのみ利用可能です。プライベートクラウド版と比較して、機能のサブセットが限られているようです。
- S/4HANAプライベートクラウド 他のすべての業界で利用可能なフル機能のバージョンです。これは基本的に顧客の施設ではなく、SAPデータセンターでホストされているSAP製品です。その結果、ソフトウェアの提供モデル(カスタマイズや長期にわたるアップグレードを含む)は、ほとんどの顧客が現在SAPのレガシー製品で直面しているものと実質的に同じままです。
S/4HANA Private Cloudには、パブリッククラウドに付随する定期的なアップデートがありません。アップグレードには時間がかかり、面倒で費用が掛かり、ダウンタイムが必要です。
特にカスタムERPコードは、AutomotiveITの記事で取り上げられています。
各SAPシステムには平均して約200万行の個別コードが含まれていると考えられます。最終的に責任を負うのは顧客であり、SAPではありません。370を超える顧客システムを分析した結果、プログラミングには1,000行のコードあたり1つのセキュリティ問題があることがわかりました。つまり、平均的なSAPシステムには約2,000のセキュリティ問題があり、それぞれがシステムを危険にさらす可能性があるということなのです。
これは顧客または有料のコンサルタントによって書かれたカスタムコードであるため、SAPはパッチやメンテナンスに責任を負いません。顧客がこの負担を負う必要があります。これは「リフトアンドシフト」の選択肢が、施設でERPをホストするよりも大幅に安価ではないという主な理由の1つです。
そして、今までにやったことのある人なら誰でもわかると思いますが、新しいERPにアップグレードするのは、時間と費用が掛かる面倒なプロジェクトです。
S/4HANAへのアップグレードはHANAデータベースへの移行を伴い、さらに複雑さが増します。多くのSAPの顧客は、新しいデータベースへの移行は面倒でビジネス上のメリットがないだけでなく、HANAライセンスだけでも高額であると訴えています
多くのSAPの顧客が現在Oracle Databaseを運用しており、満足しているため、別サービスへ移行する必要性を感じていません。Credit Suisseは、次のように書いています。
「SAP HANAを見た後、Oracle上で大規模なSAPアプリケーションを実行している人々はOracleにとどまります。Oracle以外のデータベースへの移行の必要性を感じていません。」
ソース:Credit Suisse、「Overnight Success 40 Years In the Making」、2017年10月6日
必要なERPすべてをクラウド管理
多くのSAPの顧客のように、あなたもデータベースの移行が高額で不要であると考えるのであれば、Oracle Cloudスイートをご確認ください。Oracle ERP Cloud、Oracle EPM CloudやOracle SCM Cloudは、財務およびサプライチェーンを運営するための包括的なアプリケーションを提供します。HRやカスタマーエクスペリエンスを追加することもできます。これらのクラウドアプリケーションはすべて、単一のデータモデルを使用してOracle Database上で実行されるため、複雑さが軽減され、ビジネスにとって重要なデータをより明確に把握できます。
SAPのパブリッククラウドとは異なり、Oracle Cloudは業界の全機能を備えた完全なスイートを提供します。パブリッククラウドであるためカスタムコードはなく、セキュリティ侵害のリスクを大幅に低減します。Oracleはパッチ適用およびアップグレードをすべて行うため、メンテナンスにかかる費用もはるかに少なくなります。また、オラクルはクラウドアプリケーションの新機能を四半期に1回展開し、継続的な技術革新を提供しています。アップグレード間の待ち時間はもうありません。
[RELATED_POSTS]機械学習もOracleなら簡単
Oracle Cloudで利用可能な最も重要な革新の1つは、機械学習です。多くのソフトウェアベンダーは機械学習を複雑にしています。顧客が独自のML(機械学習)アプリケーションを構築するために使用する必要がある開発プラットフォーム(SAPのLeonardoなど)を販売したり、データサイエンティストやIT技術者だけが使用方法を知っているMLツールキットを展開したりしています。Oracleは、クラウドアプリケーションにMLを直接埋め込むという別のアプローチを取っています。たとえば、Oracle ERP Cloudの機械学習機能は、割引率を推奨してサプライヤーにオファーすることができます。
この例では、Oracle ERP Cloudは3つの異なるオプションを推奨し、ユーザーの状況に最も適したオプションを決定できるようにします。Oracleクラウドでの機械学習:
- エンドユーザーが正しい判断を下すのを支援します。
- 情報をわかりやすくするためにユーザーにコンテキストを提供します。
- パターンの発見と例外の表示
- 会社やサードパーティのデータ(商品の価格、自己資本利益率、クレジットスコアなど)を使用して推奨事項を行います。
Oracleは、また、従業員による経費精算の提出、商品やサービスの追跡、サプライチェーン全体にわたる商品の状態の監視など、デジタルアシスタント、モノのインターネット(IoT)、ブロックチェーンをクラウドアプリケーションに組み込んで、さらに活用しています。
これらの新技術はデータサイエンティストだけのものではありません。すべてのユーザーや企業がその恩恵を受けることができます。AutomotiveITは、Oracleの会長兼最高技術責任者、Larry Ellison氏の言葉を引用しています。「機械学習により、業務トランザクションの自動作成、発注プロセスの開始、またはサプライヤー請求書の自動支払が可能になります。これらはすべて人的ミスを伴うことなく行われます」またLarry Ellison氏は「当社の ERP Cloudスイートほど高性能なERPシステムはありません」と続けます。
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一定のイノベーションとともに進化するベストプラクティス
さらに、Oracle Cloudアプリケーションは、ベストプラクティスに基づいて構築されています。これは機械学習により進化し続けます。毎月末の締め処理など、典型的なビジネスプロセスには8つのステップがあります。近い将来、MLはさらに多くのタスクを自動化し、過去のインタラクションから学習するので、このステップの数は3に減る可能性があります。このようなベストプラクティスの進化は、静的なホスト型ERPシステムでは不可能です。
AutomotiveITは「幅広いクラウドイニシアチブでOracleがERPの分野における優位を占めているのは明らかだ」と結論づけています。
定期的に更新され、最新技術を導入し、進化するベストプラクティスに基づいて構築された真のクラウドスイートで、Oracleは将来のビジネスに必ず役立つクラウドERPを提供します。これはあなたがする最後のERPアップグレードになるかもしれません。
※本ブログ記事はOracleコンペティティブ・インテリジェンス、副社長、Charles Homs著「Oracle vs. SAP: What You Need to Know」の抄訳です。
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- ERP