企業はビジネス上に多様な課題を抱えており、それらを解決・改善することで、企業競争力を高め、組織を強化しようとしています。
改善の手法はさまざまですが、近年では、デジタルファーストは常識になり、さらにはIoTやAI、RPAなど最先端のIT技術を活用しようという取り組みが一般的となっています。
しかしながら、たいていの取り組みは一部の現場の課題解決にとどまっており、企業を取り巻く環境全体のビジネスの創出や業務基盤のカイゼンまで至っていないのが現状です。
今回はサプライチェーンの強化を行う企業に向けて、どのようなことを考慮するべきなのかをOracle ERP Cloudの一部であるOracle SCM Cloudとともにご紹介させていただきます。
サプライチェーンからバリューチェーン全体管理の必要性
多くのお客様がサプライチェーンを強化したいという要望があります。しかし、企業競争力を強化するためにサプライチェーンを強化するためにはサプライチェーンマネジメントシステムを導入すれば良いというわけではありません。
こうした真の目標達成や課題解決を目指すのであれば、現場から経営まで、フロントからバックオフィスまで、“状況の認識”をつなげる仕組みが必要です。そして、その中核となるのが「データ」であるということを忘れてはいけません。
経済産業省が2017年10月に発表した「Connected Industries」東京イニシアティブ2017においても、“経営と現場をまたがるデータの連携”や“バックオフィス改革”の必要性を示唆しています。
製造業におけるサプライチェーンの課題と目標
特に製造業のような幅広いサプライチェーンを有する事業者にとって、ビジネスや業務の改善は非常に重要で、かつ難しい取り組みです。設計・開発や調達、製造・生産、営業・販売、会計といった業務の個別最適化を図っても、各々が密接に関わっているために、その効果は限られてしまいます。
例えば、開発の初期段階からコストを作り込むことで、低価格で高品質な魅力ある商品を生み出すことができるでしょう。生産業務の効率化と在庫の適正化を追求することで、販売機会を逃すことのない供給体制を整えることができます。経営者は、子会社を含めた企業全体を可視化して、予実管理やリスク管理、税制対策などを行うことで、グループ経営を全体最適化することができるようになります。
流通・小売事業者も製造業同様にサプライチェーンは複雑化
こうした課題や目標は、製造業に限った話ではありません。小売業でも、他のさまざまなプレイヤーから商品を調達しますし、自社ブランドのPB商品を販売するケースも増えてきました。近年の小売業もまた製造業に負けず劣らず複雑なサプライチェーンを持ち、全体で改善を図っていかなければなりません。
特に日本の製造業・小売業は、もはや国内に閉じたビジネスでは競争力を保てなくなっています。場合によっては、生産だけでなく設計・開発部門も海外に拠点を設けるケースも増えています。国内で設計したものをさまざまな地域向けにローカライズしたり、アジア圏で生産した高級機を北米地域で、普及機をアジア圏で販売したりすることもあります。
サプライチェーンとプロダクトライフサイクルマネジメントを同時に提供するOracle ERP Cloud
現代の企業には、「サプライチェーンマネジメント」に加えて、こうした製品ライフサイクル全体を管理する「プロダクトライフサイクルマネジメント」の仕組みが必要です。そして、会計や営業支援、プロジェクトマネジメントといった各種の管理機能と連携し、事業全体を統括できる仕組みが必要です。「Oracle ERP Cloud」は、これらの領域を幅広くカバーし、地域や距離、資産やコストといったITシステムの課題も解決するクラウドサービスです。
バリューチェーンと新技術をつなぐデータ管理の重要性
製造業では、「13:00に生産を開始し、14:00に100個を生産する予定が14:20に完了した」「100個のうち10個は不良だったため、納品は90個ぶん」というように、過程の中で状況は変化していくものです。
こうした変化が発生するたびに、従業員の労働時間や報酬は人事部門が、販売数は営業部門が、売上額は会計部門が、それぞれ対応しなければなりません。また、スケジュールの遅滞を抑えるために生産プロセスの改善を、不良率を低下させるために設計の改善を、それぞれ検討していくことも重要です。
従来のように、生産の開始と完了の情報のみを管理する方法では、こうした変化へすばやく・的確に対応することは困難です。情報を収集するにしても、手作業で行っているようでは、項目や内容が不足したり、ミスが発生したり、サマリーに過ぎなかったり、不正が発生したりする可能性もあります。当然時間がかかりますから、十分に分析することもできません。
こうした情報を効率よく確実に集約し、分析するには、先端技術の応用が欠かせません。IoTは、現場で発生している状況をリアルタイムに収集することに長けています。例えば、配送トラックに取り付けたIoTデバイスから地理情報や集荷・配送の状況を取得して、配送ルートを変更したり、トラックを増強したりしている企業の事例があります。
以下はオラクルのIoTを支援する仕組みの全体概要です。
情報の分析にはAI技術が最適です。分析した情報を基に業務プロセスを自動的に改善していくためには、最近注目されているRPA(Robotic Process Automation)を採り入れていくことも必要でしょう。
情報を確実に伝達するためには、ブロックチェーン技術にも注目です。今やセキュリティは、侵害されることを前提に考慮する必要があります。ブロックチェーン技術を活用して分散台帳を生成すれば、データを改ざんすることは不可能です。すべてのプレイヤーが透明性の高い情報を共有できることも、ブロックチェーン技術の利点の1つです。
また、自動運転技術が当たり前になりつつある時代にはそれらとの融合も必要になるでしょう。こちらの記事では「自動運転車両の現在とサプライチェーンとの関係」に関してご紹介しています。
こうしたIT技術を自社の業務プロセスに組み込むためには、データ管理が極めて重要です。どの技術やシステムからも、過不足なくデータを扱えなければ、スムーズに連携することができないためです。そこで力を発揮するのが、データベース/データ管理のプロフェッショナルが開発したOracle ERP Cloudなのです。
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データ管理に優れたOracle ERP Cloud
Oracle ERP Cloudは、データモデルが他のERPとは根本的に異なります。
既存のERPの多くは、業務プロセスごとにデータを管理して、インテグレーションによってなんとか連携させるというモデルを採っています。そのため、あとからモジュールを追加するときには、データの整合性を取るための開発が必要となります。
一方、Oracle ERP Cloudは、すべての業務プロセスに共通する統合された「マスターデータ」を基盤とし、それぞれのプロセスに必要となる「トランザクションデータ」を付与するモデルを採用しています。そのため、当初は最小限のモジュールからスモールスタートして、あとからモジュールを追加しても、データモデルが崩れることがありません。
導入時に既存の業務プロセスやワークフローに適合させるための開発は必要ですが、業界標準のJava言語によって柔軟に対応させることが可能です。また、ユーザー数に応じた利用料で済むため、ビジネスの状況に合わせて運用コストを最適化することが可能です。
業務プロセスの管理に必要なモジュールはすべてそろっており、常に最新の状態に保たれています。組み込み型BIも、すでにセット済みです。そのため、従来のオンプレミスシステムのように、モジュールを追加するためにハードウェアを拡張したり、ソフトウェアを追加開発したりする必要はありませんし、インフラの運用管理はサービスベンダーに任せることができます。設定を変更するだけでモジュールを追加し、すぐに運用を開始して、ビジネスインテリジェンスをつなげていくことが可能なのです。
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まとめ
今や、単に優れた「モノ」を販売していればよいという時代ではありません。高品質なサービスによってモノの魅力を最大化する「コト」が必要な時代です。
例えば下水処理施設が欲しいのは、ポンプそのものではなく“水処理能力”であるはずです。配送業者が欲しいのは、トラックそのものではなく“配送能力”であるはずです。そこに気づけば、ポンプやトラックを売るのではなく、能力と稼働をサービスとして提供するというビジネスへ切り替えることができます。
企業の価値をコトによって生み出すためには、現場からバックオフィスまで、統合的にマネジメントすることが欠かせません。統合的なマネジメントを実現するには、優れたデータ管理が必要です。それを実現できるのは、Oracle ERP Cloudだけなのです。
- カテゴリ:
- サプライチェーン/生産管理
- キーワード:
- サプライチェーン計画(需要計画/生産計画)