企業が経営状況を可視化するための管理会計は、ここ数年間で多くの企業に取り入れられています。従来は大企業が行う会計業務というイメージでしたが、中小企業も現状把握を行い、激しいビジネス変化に適応していくために管理会計を取り入れだしました。
ただ、管理会計を取り入れたはいいものの、手作業による資料作成で業務負担が増してしまったケースも少なくありません。経営改善のための施策が結果的に現場業務を圧迫してしまっては本末転倒というものです。
管理会計システムは、こうした課題を解決しつつ、具体的な経営戦略を立てていくために有用な情報を提供してくれます。今回はこの管理会計システムについて紹介していきます。
そもそも管理会計とは?
管理会計とは経営者や役員、あるいは部門責任者といった内部ステークホルダーに対して提示される会計状況です。現状の経営状況を可視化したものだとも言えます。
企業の経営者は管理会計を見ることで現状を明確に把握し、さらには将来的な経営方針を固めていくことができます。つまり、企業の戦略や方針、向かうべき場所など重要な事項を決定するために必要不可欠な情報なのです。
よく「財務会計」と混同しがちですが、財務会計は株主や債権者などの外部ステークホルダーに向けて提示する会計情報なので、管理会計とは目的も方法も大きく異なります。
管理会計には法的規制がないため、企業独自のルールのもと作成することがあります。経営者によって見たい情報が異なるので、企業の数だけ管理会計のルールが存在すると言ってもいいでしょう。
管理会計で経営者は何を見る?
経営者が管理会計を通して見ているのは「安全性」「収益性」「生産性」「成長性」という4つの指標です。
安全性は長期的な経営を可能とする安全性はあるか。収益性は生産性に対し十分な利益を生み出しているか。生産性は従業員一人あたりに対する労働生産性は基準値を達しているか。成長性は将来的に拡大の見込める事業か、を中心として分析を行います。
「データドリブン経営」という言葉をご存知でしょうか?
これはシステムが生成するデータを基準として経営判断を下していくという概念です。日本企業の多くは、経営者の勘や経験に従って運営してきました。しかし、多様化するニーズと激しく変化する社会情勢において、勘や経験では補えないほどの問題があります。
こうした状況の中「データを基準としてアプローチする」という経営方法がデータドリブン経営です。管理会計を行うことは、データドリブン経営を取り入れるといっても過言ではないでしょう。
管理会計システムの基本機能とは?何ができるの?
管理会計について理解はしていても、肝心の管理会計システムでは何ができるのかを知る方は少ないでしょう。管理会計システムはどのようにして、手間の多い管理会計を効率化していくのでしょうか?
様々な切り口から会計情報を分析
セグメント管理機能では部門別、商品別、プロジェクト別、期間別、地域別など様々なセグメントを設定し、会計情報を得ることができます。企業によって「PLのラインをどこで取り分けるか」というのは異なり、また都度の状況によっても変化します。
従って、組織全体でしか会計情報を可視化できないことは、管理会計において大きな足かせです。多くの製品は様々なセグメントを設定することで、多様な切り口から会計情報を分析できるように設計されています。
細かい予算管理と予実帳票
予算管理と予実帳票は、経営戦略を実行していく上でとても重要な役割を果たします。予算を的確に振り分けることで部門ごとの労働生産性を高め、さらに予実帳票で進捗状況を確認することで、予算管理をさらに適正化させていきます。
こうした予算管理情報は、後々経営判断をくだす上で重要な情報になるので、管理会計システムの多くが予算管理や予実帳票を機能として備えているのです。
経営状況の変化をシミュレーション
情報の中で最も価値があるのは「未来の情報」です。タイムマシーンを使って未来に行くことはできないので、過去の情報からシミュレーションを行い未来の情報を取得します。管理会計の中にはこのシミュレーション機能を備えているものがあり、過去の情報や今後経営戦略をもとに経営変化のシミュレーションを行うのです。
もちろん100%当たるものではなく、精度で言えば低い方ですが、新たな経営戦略を立案していく上で重要な情報であることは間違いありません。
管理会計帳票の作成と変更
管理会計は企業によってルールが異なるので、帳票のフォーマットも異なります。基本的に管理会計システムで用意されている帳票フォーマットは固定ですが、製品によっては新たなフォーマットを作成したり、変更することもできます。
つまり、自社に合った管理会計システムを構築できるということです。
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管理会計システムを導入するメリット
管理会計システムにはどのようなメリットがあるのでしょうか?
手間の多い管理会計業務を効率化
管理会計業務というものは非常に手間の多いもので、データ収集だけでかなりの時間を費やして行われることも少なくありません。ですので担当者にとっては負担が大きく、フラストレーションも他の仕事も溜まりやすい業務なのです。
しかしシステム化することで、管理会計業務の手間は大幅に減少します。特に財務会計システムに管理会計機能が組み込まれている場合は、財務会計を行いつつ管理会計として情報を取りまとめることもできるので業務効率化効果があります。
現場が経営的視点を持つようになる
管理会計を取り入れると、各部門の責任者はPL管理が必要になったり、部門ごとにKPIが設定されることになります。つまりより経営に近い場所で、自部門の業務を見つめることになるのです。
こうして現場が経営的視点を持つということは、企業にとってプラスの方向に大きく働きます。
業務の目標が明確になる
管理会計システムによって経営戦略や経営方針が固まれば、次に各部門へ具体的な目標と施策を落とし込んでいきます。現場従業員にとって「目標が明確にある」ということは、日々のモチベーションを維持する上でとても重要です。
多くの従業員は自分が今行っている作業が、何のために行っているのか、どう貢献しているのかを理解しないまま遂行しています。しかし、これは組織のモチベーションを低下させる大きな原因です。
部門ごとに明確な目標があれば、個人ごとの目標が決まります。目標ありきで業務を行うことで、自分が組織に貢献している実感も湧くのでモチベーションを維持していくことができるのです。
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まとめ
管理会計システムはまだまだ発展途上のITツールです。顧客管理システムや在庫管理システムといった業務アプリケーションに比べると、まだ歴史が浅く一部の企業でしか導入されていません。しかし、市場は確実に拡大しています。ニーズが多様化しビジネスの変化が激しくなるにつれ、経営状況をもとに会社の舵切りを行いたいという経営者が増えているのでしょう。
また、今後はIoTデバイスの爆発的な普及など、さらに激しいビジネス変化が予測されています。こうした変化の波に順応し乗り切るためにも、現段階から管理会計システムの導入を検討しておくのは、非常に賢明な判断ではないかと思います。- カテゴリ:
- 経営/業績管理
- キーワード:
- 予実管理