創業から数年、売上げも順調に伸びてきて会計業務も煩雑化してくる頃合いになると「そろそろ会計ソフトを導入しようか?」というニーズが高まるかと思います。
基本的にはエクセルで管理していたとしても、財務関係帳票を作成したり経営分析のためにデータを抽出・加工するのはなかなか骨の折れる作業ですので、会計ソフトは業務効率化のために欠かせません。
しかし問題となるのが、どのような会計ソフトを導入すればいいか?というところでしょう。会計ソフトは大幅な業務効率化に繋がるからこそ導入失敗は致命的となります。
近年では各製品で大きな機能差はなくなったとは言われているものの、やはりそれぞれの特色というものが色濃く出ている部分もあるので、自社に最適な会計ソフトを選ばなければなりません。そのためにはまず、会計ソフトの基礎知識を付けることが重要ですね。
今回はこれから会計ソフトを導入する中小企業に向け、中小企業ならではの会計ソフトの選び方について解説していきます。
会計ソフトのすみ分け
現在ビジネス向けに提供されている会計ソフトには大まかに3つのタイプが存在します。まずはそれぞれの特徴やメリットデメリットを把握していきましょう。
システム型会計ソフト
特徴
システム型会計ソフトとは自社サーバにパッケージソフトウェアをインストールして利用するものと、自社あるいはシステムベンダーに依頼をしてゼロからシステムを構築していくものです。自社サーバで運用・管理することからオンプレミス型とも呼ばれています。
特徴としては自社サーバで会計ソフトを稼働しているので、ネットワークに接続された全てのPCから会計処理を行うことができます。
主な導入規模は中小企業~大企業です。
メリット
最大のメリットは会計ソフトを自由にカスタマイズできることでしょう。パッケージソフトウェアではある程度制約が発生しますが、システムベンダーに依頼せずとも自社でカスタマイズできるケースが多いです。
このため、システム型会計ソフトでは自社の業務形態に完全にマッチしたシステムを構築することができます。業界や企業特有の商習慣に対応できるのは大きなメリットですね。
また、ネットワークで接続されたPC全てで利用できるというのもメリットの一つでしょう。
デメリット
デメリットとしては導入コストと導入期間が大きな壁となります。サーバを自社調達することや開発費を考慮すると、システムを一つ開発させるために数百万単位の導入コストがかかります。
また、導入期間も平均して3ヵ月~1年程度かかるので人件費を含めると表面上よりも大きな導入コストがかかることに。
かと言ってランニングコストがかからないわけではなく、サーバやシステムの管理・運用に人的リソースを割かなければならないためしっかりとランニングコストが存在します。
PCインストール型会計ソフト
特徴
PCインストール型会計ソフトとはその名の通り、サーバではなくPCに会計ソフトを直接インストールして試用するタイプです。スタンドアロン型と呼ばれることもあります。
基本的にはインストールしたPCでしか利用できませんが、製品によっては複数台同時の会計処理に対応していることもあります。ただし、最大でも20ユーザー程度でそれ以上となるとPCインストール型会計ソフトでは使用できないでしょう。
機能面ではシンプルなものが多く、個人向けの会計ソフトとしても好まれています。また、会計ソフト初心者でも使いやすいように設計された製品が多いタイプです。
個人事業主やベンチャー企業、比較的小規模な中小企業が主に導入しています。
メリット
メリットとしては3つのタイプのうち最も安価に導入でき、サーバ管理・運用の手間もないことです。人気製品でも40,000円前後で購入でき、かつランニングコストもありません。
従って「とにかく安く会計ソフトを導入したい!」という企業におすすめできます。また、各製品で無料体験版が提供されているので実際に試用してみてじっくりと検討することが可能です。
税理士や会計士が最も使用しているタイプなので、顧問と同じ製品で揃えるとアドバイスをもらえることもあります。
デメリット
同じパッケージでもシステム型会計ソフトとは異なり、カスタマイズはできない場合がほとんどです。また、複数台のPCで使用できる製品もありますが複数拠点での使用はできないでしょう。
もう一つ、アップデートを自分で行わなければならない手間や、バージョンアップの際は新たに購入しなければならないというデメリットがあります。
サーバ管理・運用の必要はありませんが、案外手間に感じることもあるでしょう。
「会計ソフト」について詳しくは、こちらの「会計ソフトの種類とそれぞれの特徴とは」記事で是非ご覧ください。
クラウド型会計ソフト
特徴
クラウド型会計ソフトはここ3~4年で急速にシェアを伸ばしてるタイプであり、インターネット経由で会計ソフトを使用します。サーバとPCへのパッケージインストールは必要なく、インターネット環境とPCさえあればすぐにでも利用できるものです。
皆さんが普段利用しているGmailやYahoo!といったサービスは、手元にシステム環境がなくともインターネット経由で使用しているWebサービスです。これらのサービスのようにクラウド型会計ソフトもWeb上でログインすることで使用することができます。
個人事業やベンチャーから中小企業や大企業まで、様々企業が導入している会計ソフトです。
メリット
多くのメリットがあるクラウド型会計ソフトですが、第一に導入コストを極限まで抑えて迅速に導入することができます。基本的にユーザー数ベースの月額料金性なので初期費用は無料~数万円程度。サーバ調達もシステム構築も必要ないため非常に迅速に導入することが可能です。
また、ユーザー間でシステムを共有することはもちろん、複数拠点間でも簡単に共有することができます。拠点間の会計データを一元的に可視化できるのは本社にとって大きなメリットですね。
もう一つ、インターネット経由ということで使用する場所やデバイスを問いません。インターネット環境とPCさえあれば使用できるので、外出先から会社の会計データを確認することもできるのです。
デメリット
クラウド型会計ソフトではPCインストール型同様に、基本カスタマイズすることはできません。しかし最近では多くの企業でオプション機能を提供しているので、完全とまではいかずとも自社の業務形態にできるだけマッチした製品を選ぶことができます。
また、オフライン下では使用できないというデメリットに注意しましょう。他2つのタイプとは違いオンライン環境に依存しているので、インターネットに障害が発生すると使用できなくなってしまいます。
従ってインフラ環境を整備し、常にインターネットに接続されている環境を保つことが重要です。
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中小企業が選ぶべき会計ソフトは?
ユーザー数が数人程度で、安価に導入したい⇒PCインストール型&クラウド型
ベンチャー企業や比較的規模の小さい中小企業では、経営を圧迫するほどの導入コストがかかってしまいます。このため安価に導入できるPCインストール型かクラウド型がベストです。
その中でも複数拠点での共有や外出先からも使用したいと言うのであれば、クラウド型をおすすめします。
導入規模が大きく、ユーザー数も20人以上⇒システム型&クラウド型
規模の大きい中小企業や大企業など、多様なニーズが存在しかつユーザー数も多い環境ではシステム型かクラウド型を導入するといいでしょう。
さらに導入コストを抑えたいという企業であればクラウド型が有効的です。
情報システムがいないからアウトソーシングを考えている⇒クラウド型
システム型会計ソフトを導入したいが情報システムがいないことで、管理・運用のアウトソーシングを検討している企業は少なくないと思います。確かにこれも一つの選択肢ではありますが、ケースによってはあまりおすすめしません。
まずは管理・運用コストがかなり肥大化することと、そして万が一トラブルが発生したときも対処に遅れが出る可能性があるからです
もちろんアウトソーシング先にもよりますが、それならばクラウド型会計ソフトを導入した方がよほど経済的で安心して使用できます。
参考記事:おすすめの会計ソフト17選
会計ソフトに留まらない、複数のシステム連携を望む中小企業へ
会計ソフトの導入を考えている企業の中には、既存システムと連携させたいと考えている起業も少なくありまんせん。各システム間で連携が取れていると相乗効果が業務効率化が加速し、大きなメリットを享受することができます。
そんな複数システムの連携を望む中小企業におすすめしたいおが「クラウドERP」です。先にクラウドの解説を軽く行ったので省きますが、「統合基幹業務システム」とも呼ばれているERPをクラウドで提供するソリューションとなります。
会計システムを始め販売管理システム・顧客管理システム・営業支援システム・人事管理システム・ビジネスインテリジェンスなどなど、企業経営に必要な各機能を一気通貫で提供しています。もちろんインターネット環境で使用するのでサーバ調達はPCへのインストールは必要ありません。
各システムから生成されるデータは統合されているので、ダッシュボードで瞬時に確認することができます。つまり企業全体のデータを常にリアルタイムで可視化できるので、経営における意思決定が迅速化します。
クラウドERPについてさらに詳しい情報は以下の記事にまとめているので合わせてご確認ください。
参考: ERPとは結局何なのか? 現代に求められるソリューションの全貌と最新動向
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まとめ
今回会計ソフトの基礎について触れ、中小企業の会計ソフトの選び方について解説しました。いずれのケースでもクラウド型がおすすめできることを考えると、今後もクラウド化の波は大きくなるのではないかと思います。
やはり低コストな導入や運用・管理などが不要なのが大きいですね。「クラウドファースト」という言葉があるように、会計ソフト導入ではまずクラウド型の検討をおすすめします。
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