製造業や販売業など、モノを製造したり販売する業界で必ず存在するものが“在庫”です。
部品の在庫から製品の在庫まで種類も多岐に渡りますが、全てを適切に管理するのは非常に難しく大企業ですら在庫のズレが発生することは珍しくありません。そして在庫数のズレは実はかなりの弊害を生んでしまっているので、真っ先に取り組むべき課題でもあります。
しかしいざ在庫管理を行ってみても、毎回在庫数が合わず頭を抱えている在庫担当者が多いと思います。在庫管理は一見単純そうに見えて実はかなり複雑な作業なのです。
そこで今回は、在庫管理に関する話をしていきたいと思います。在庫数が合わないとどんな弊害が起きるのか?どうして在庫数が合わないのか?そして適切な在庫管理を行うために実践したいことは何か?
不適切な在庫管理の原因や対策をしっかりと理解し、今後の在庫管理業務に活かして頂ければと思います。
在庫数が合わないとどんな弊害が起きる?
在庫数が合わないことで起きる弊害は多く、企業経営を圧迫する原因にもなりかねません。主に以下の4つの弊害があると言われています。
キャッシュフローが悪くなる
在庫数が合わない企業では、往々にして大量の在庫を抱えているという共通点があります。これは合わない在庫を補うために大量発注してしまっているのです。
しかしこの弊害は経済面に及びます。在庫とはいわば企業の資産であり、お金をモノに換えた結果でもあります。つまり在庫数が多いと手元に残せるキャッシュがその分少なくなり、企業のキャッシュフローが悪くなってしまうのです。
理想はやはり最小の在庫数で手元にしっかりとキャッシュが残っていることなので、資金繰りの観点からも不適切な在庫管理は弊害しか生みません。
資金を無駄にしてしまうリスクがある
資金をモノに換えた結果が在庫であり、企業の資産でもあります。在庫数が合わない企業では大量に在庫を抱えていると説明しましたが、これは資金を無駄にしてしまうというリスクを抱えています。
例えば、Eコマースにおいて合わない在庫数や在庫切れをカバーするために大量の在庫を抱えているとします。しかしユーザーニーズの変動が激しい現代においては、そのほとんどの在庫が無駄になってしまう可能性があるのです。
在庫の破棄や特価販売は資金の無駄を意味するので、さらに経営を圧迫します。
顧客満足度の低下につながる
在庫数が合わないということが慢性化してしまうと、顧客から発注を受けた営業はシステム上の数字を信用できなくなります。このため在庫担当者に直接問い合わせたり、場合によっては営業が直接在庫管理を行うといったケースも珍しくありません。 顧客の発注に対するレスポンスが遅くなるので、顧客満足度の低下につながります。
また、出荷時期になった初めて在庫数が足りていないといった事態も招きかねないので、顧客からの信用度も下がるでしょう。
不適切な在庫管理の悪循環に陥る
最も最悪なのが、これらの弊害が悪循環に陥ることです。
顧客満足度維持のために在庫数を多めに確保する→手元のキャッシュが少なくなる→大量の在庫が無駄になる→資金繰りが難しくなる→それでも顧客満足度は落とせない→再び大量在庫を仕入れる
ここまでくると経営難に陥るのは時間の問題であり、一刻も早くこの状況から抜け出す必要があります。
なぜ在庫数が合わないのか?
在庫数が合わなくなるのには、いくつか特定の理由が存在します。どの企業でも必ずいずれかの原因が存在するので、まずは在庫数が合わない原因を知り自社の環境と照らし合わせ、現状の課題をしっかりと把握しましょう。
二重作業による入力ミス
在庫管理を行う上で基幹系システムを活用している企業が多いですが、二重作業が発生してしまっていると入力ミスによる在庫数のズレが発生しやすくなります。例えば販売管理システムと在庫管理システムの連携が取れていないと、販売管理システムに受注数を打ち込んでから在庫管理システムに再度同じデータを入力しなければなりません。このとき入力ミスをしてしまったり、一方のシステムへの入力を忘れてしまうと在庫数が合わなくなってしまいます。
請求と出荷のズレ
請求と出荷にズレがあると、在庫数が合わない原因を作りだしてしまいます。例えば営業担当が「今月は売上げ達成しているからこの分の売上げは来月に回そう」とすると、システム上の在庫と実在庫が合わなくなります。また「出荷は今月だけど売掛金の回収は来月」というのも在庫数が合わなくなる原因の一つです。こうしたカネとモノの流れはしっかりと整合性が取れていなければなりません。
現場での作業ミスで発生するズレ
「間違った部品を供給してしまった」「出荷点数を間違えてしまった」などなど、現場作業のミスによるズレも往々にして発生します。これは人の手によるミスですから、100%防止することはほぼ不可能でしょう。
このためミスを防止する仕組みはもちろんのこと、ミスが起きる前提でどうやって在庫数を合わせるかを考えておく必要があります。
管理ルールが曖昧
在庫管理の現場では通常の入出荷作業から、様々なトラブルなどで在庫数が合わなくなります。適切に対処できれば問題ないのですが、管理ルールが曖昧で都度現場作業員の判断に任せているようでは確実に在庫数のズレが生じます。
従って返品や破損した製品の取り扱い、営業にサンプルとして引き渡す際の手続きなど事細かにルールを策定しましょう。
- 入荷
- 保管
- 出荷
- 棚卸
- 品質管理
これら5つの項目をもとに、通常業務や想定し得る限りのトラブルに対処できるルールをしっかりと策定してください。
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適切な在庫管理のために実行したいこと
では実際に、適切な在庫管理を実現するためには何を行えばいいのか?具体的な対策を紹介していくので解決の糸口を掴んでいきましょう。
連携の取れたシステムの導入
販売管理や在庫管理など基幹系システム同士の連携が取れていれば、二重三重の作業が発生しないため入力ミスや入力忘れなどを防止することができます。また、作業が一回で済むので業務効率化にも繋がり生産性が向上するでしょう。
こうした連携の取れたシステムと言えばERP(統合基幹業務システム)であり、販売管理や在庫管理から会計システム、顧客管理など幅広い基幹系システムを一気通貫で提供しています。
従来ERPは高価で大企業が導入するソリューションというイメージが強かったのですが、近年ではクラウドサービスを台頭に低コスト化が進み、中小企業でも多く採用されています。
在庫管理のマニュアル化
全ての作業や事務処理を同一化し、担当者ごとに異なった作業を生まないためにも在庫管理のマニュアル化と現場への徹底が欠かせません。在庫管理に関するルールを策定したら必ずマニュアルも作成しましょう。
現場作業に関するマニュアルならば、プラカードを作成して作業員から見えやすい位置に掲示しておくと短時間で作業の確認ができます。
事務処理に関してもしっかりとマニュアル化し、管理を同一化することで生産性の向上を目指しましょう。
ロケーション管理の徹底
ロケーション管理とはいわば在庫物の管理位置を明確にし、在庫が見つからないという状況を防ぐためにあります。例えば仕入れ時期ごとに色分けされたエリアにモノを置いたり、種類に応じてロケーションを分けるなど様々な方法が存在します。
「この方法が一番効率的!」というものはなく、取り扱うモノの種類や特徴によって使いわることが重要です。
バーコード、タブレットの活用
在庫管理にバーコードを使用すると、ピッキング時はスキャナーで読み取るだけなので在庫管理を適切に行いやすくなります。また、現場にタブレットを取り入れることでさらに効率的な在庫管理を実現できます。
例えば「納品書を確認して事務所に持ち込み在庫管理システムに入力する」という作業にはタイムラグが生まれるので、これが原因で在庫数が合わないといったケースが少なくありません。
そこでタブレットを活用すると、現場にいながらシステムへ入力ができるのでデータの正確性が向上します。このようにITを活用することで在庫管理はかなり効率化できるのです。
日次棚卸の取り入れ
日次棚卸と聞くと業務負担になるので避けたいと考えるのが妥当ですが、実際は在庫数を常に合わせるためにかなり有効的な手段です。月次棚卸のように大掛かりに行う必要はなく、その日入出荷した分の在庫さえ確認すればいいので15~30分程度あれば完了します。
業務の終わりごろに取り入れることで、毎日在庫確認を行えるので適切な在庫管理が実現するでしょう。
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まとめ
いかがでしょうか?もしも今まで「なんとなく」で在庫管理を行ってきたのなら、是非この機会に見直して欲しいと思います。もしかすると資金繰りが難しいなどの原因が在庫管理で解消するかもしれません。
在庫管理は売上げ向上に直結する作業ではないため軽視しがちですが、成長企業ほど在庫管理を徹底して行っています。在庫のムダをなくせばその分資金のムダもなくなるので、動かせる資金が増加すると考えて見ると取り組みやすいかもしれません。
また、途中で紹介したERPは在庫管理に悩んでいる企業に是非とも検討して欲しいソリューションの一つです。特にインターネット環境とPCさえあれば導入出来るクラウドERPは、低コストかつ迅速に導入できることから多くの中小ベンチャー企業に選ばれています。
適切な在庫管理が実現するだけでなく各基幹系システムから生成されるデータを一元的に管理できるので、経営戦略と意思決定の迅速化の手助けにもなります。
在庫管理も今やITを駆使して行う時代なのです。
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- サプライチェーン/生産管理
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