会計ソフトは、企業の会計を記録し処理するアプリケーションであり、1980年代後半からエンドユーザーコンピューティングが進むにつれて一般企業の導入が加速、現在では数多くの企業で導入されています。
企業はこの会計ソフトを使い、売掛金台帳、買掛金台帳、総勘定元帳、見積書作成、請求書作成、棚卸資産、発注、受注などの記帳入力作業と経理会計、税務処理等を行っています。
業務の効率化を実現するために採用され続けた会計ソフトですが、実は欧米では1990年代後半にはベンダーの合併や淘汰が進んでおり、ベンダーは生き残りを図るために会計ソフトを進化させ続けています。
そこで、導入担当者が会計ソフト導入を検討する際に押さえておきたいトレンドに関してご紹介します。
会計ソフトのクラウド化
インターネット技術の発展、コンシューマライゼーション(ITのコンシューマ化)にともないあらゆるソフトウェアがクラウドアプリケーションとして提供されています。
たとえば、グループウェアを提供するGoogle、CRMのSalesforce、ファイル共有サービスのBox、マーケティングオートメーションのHubSpot、そしてMicrosoft OfficeのOffice 365とあらゆる業務アプリケーションがクラウド化されて提供されています。情報系アプリケーションが主だったクラウドアプリケーションも今ではクラウドERPを提供するNetSuiteなど、今ではクラウド化は基幹系ソフトウェアにまで広がりを見せつつあり会計ソフトのクラウド化も例外ではありません。
クラウドで展開されるクラウド型会計ソフトを利用することで、企業は世界中のあらゆる場所から会計業務を行うことが可能になるため現代のワークスタイルに合致した利用が可能になります。また、従来ユーザが強いられてきたハードウェア、ソフトウェアのメンテナンスといった運用に関わる業務をクラウド会計ソフト提供企業がかわりに行うため、企業は本来の業務にリソースを集中させることができるという大きなメリットもあります。
もはや企業はクラウドファーストで考えることが主流になりつつあるように、会計ソフトの選定もクラウドは考慮するべきでしょう。
会計ソフトのERP化
次の会計ソフトのERP化についてご紹介します。先に申し上げた通り、会計ソフトは一般的に、経理部門が扱うソフトウェアです。この会計ソフトとERPの違いはご存知でしょうか?会計ソフトは、最終的に業務結果を企業の会計情報としてまとめられます。つまり過去のお金に関わる企業活動の記録と整理を主眼としています。
それに対してERPは、会計ソフトと同等の機能を含むことに加えて、経営や業務の効率化のためにデータと企業プロセスの一元化を図ります。ゆえに経理部門、営業部門、マーケティング部門、倉庫部門、生産部門、サービス部門などあらゆる部門が統合パッケージを通じて連携することで無駄を省き業務効率を向上、企業活動のリアルタイムな可視化を実現するのです。
競争が激化する現代社会において、競争優位なポジションを得るためには企業規模を問わずERPが必要不可欠な時代と言えるでしょう。しかし、ERPは非常に高価なソフトウェアであったために多くの企業は比較的安価な会計ソフトを導入してきた背景があります。
その状況も前述させていただいたクラウド化の流れで一新されつつあります。NetSuiteを代表するようなクラウドERPが普及するにつれて今まで大企業のみのERPが中堅・中小企業においても利用可能になってきたのです。
[RELATED_POSTS]単一会計ソフトの限界とリスクとは
企業の経理では、取引を「資産」、「負債」、「資本」、「費用」、「収益」の5つのグループごとに、決められた勘定科目を使い記録していきます。
会計ソフトの問題は、この会計に関わる取引の状態を資産・負債・資本・費用・収益のどのグループに属するか取引を考えるのです。ご存知の通り、仕訳は、その取引の最小単位であり、決算書類はそれをまとめたものでありますが、今最も企業経営者がよく間違っていてたださなければならない点は、その最小単位では、取引の細部まで伝票と紐づいていれば経営は見えると勘違いしていることです。事業全体のプロセスには、この仕訳ではわからない要因が数多く存在します。
たとえば、見積りの件数や商談の件数総額、失注の件数、営業利益、コスト、原価といった様々な指標です。そのような指標が複数拠点や海外も含めて広がると、単一の会計ソフトでは到底、事業進捗をリアルタイムに理解ことは困難となりますし、他システムとの連携や統合、Excel等を利用した集計と分析といった膨大な作業が必要となるでしょう。当然そのデータの信憑性は低く、ミスによる間違った業務進捗レポートや、集計加工といった非合理的な無駄な作業により生産性を低める結果となります。
また、記帳と仕訳の処理だけでは、取引に発生する不正の温床になりかねず、コンプライアンスの重大な事象が発生しかねないリスクを持つことにもなり、将来の成長の阻害要因になりかねません。このように企業が成長するためにも、従来の単一の会計ソフトをベースとした経営基盤として経営者が軽視し続けた場合は、あらゆる観点から成長や拡張を阻害し、ITガバナンスの効かないシステムになってしまう要因がそもそも潜んでいるのです。
そのような状況からERPが注目を集めています。
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無駄を省き、経営を可視化する成長基盤を手に入れよう
クラウドERPの台頭により、中堅・中小企業においてもERPを利用できる時代は整ったことは大きな励みになるでしょう。今まで部門ごとに特化しサイロ化されていたパッケージから統合業務パッケージに移行することで、多くの無駄が省けるようになります。システムや部門を超えてのデータの二重入力やミスがなくなります。
また、データは一箇所に一元化されるために企業の業績や業務プロセスの状況をリアルタイムに可視化できるようになります。今、現在、どれくらいの見積りが発行されていて、どれくらい見込客が獲得できているのか、そして、今現在の売上と利益などをリアルタイムに可視化できるのです。正確なデータから経営判断を迅速に行えるためスピード経営の実践が可能になります。
会計ソフトのトレンドである「クラウド化」と「ERP化」。会計ソフト導入の前に覚えておくキーワードとして是非理解しておきましょう。
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