会社の中には「お金を稼ぐ社員」と「お金を使う社員」の2通りがあります。これは会社に貢献する社員とそうではない社員がいるという意味ではなく、単純に部門ごとにお金を稼ぐことが仕事なのか使うことが仕事なのかが分かれるという意味です。
前者の代表は営業部門です。顧客とコミュニケーションを取り商談によって契約を成立させ、会社に収益をもたらします。後者の代表が調達部門です。会社がモノを生産したり売ったりするために、資材や製品を調達したその対価を仕入先に支払います。
こうした特徴の違いから以前は調達部門は会社の中でも「重要な役割ではない」という認識が強かったのではないかと思います。しかし、近年では会社の更なる利益確保のための調達から見直すケースが増えています。
そこで今回は調達とは何か?その業務内容や課題をご紹介します。
調達の役割と仕事内容
調達は購買とも呼ぶことがありますが、2つの言葉には明確な違いが存在します。購買はモノを買い付けることを意味する言葉です。それに対して調達とは、要求者が要求するモノを適切なタイミングで届けることを意味します。従って調達は購買を含み、資材や製品の仕入れを適切なタイミングで行うというのが主な役割です。
具体的な仕事内容についてご紹介します。
①仕入先の開拓と選定
製造業や建設業など特定の仕入れ先から部品や資材を調達するような業界では、仕入先の開拓と選定が大切です。なぜなら、どの仕入先を選ぶかによって自社業務に大きな影響を与えるため、最適な仕入先を選定することが重要だからです。
たとえば同じ部品を扱うA社とB社でも納品までのフローが異なります。そのため、場合によってはA社より B社の方が納品が早く、自社業務にとって有利に働く可能性があります。ただし、単に納品が早ければ良いというわけではないでしょう。納期遵守率や歩留まり率にも目を向けるべきです。
納期遵守率とは納期通りに納品された年間注文件数を、年間注文総数で割った数です。納期遵守率が0.9なら90%の注文件数が納期通りに納品されたということになります。ただし、この納期遵守率は0.3や0.2を下回ることも少なくありません。原因の多くは発注側による短納期の要望でした。サプライヤーとしては極力発注側の条件を飲むことになるので、結果として無理な納期が設定されて遵守できなくなってしまいます。
なので調達はそうした情報も踏まえて仕入先を監査し、正しく開拓と選択を行う必要があります。
②価格交渉
部品や資材などの仕入れ値は安いほど良いでしょう。もちろん一定の品質が確保されていることを前提にです。どんなに優れた会社でも製造業の経営利益は10%前後ではないでしょうか。1,000円の製品を販売したとすると原価や販管費、諸経費によって会社にとっての純利益は100円程度になります。もしも価格交渉によって仕入れ値を50円下げることができれば、特別なコストをかけずに利益は大きく増えることになります。これは極端な例ではありますが、調達の価格交渉によって会社の経営利益が向上することは確かです。
③納期管理
納期管理とは仕入れする資材や部品が期日通りに納品されることを管理するための業務です。人によっては、調達にとって最も重要な業務は納期管理だと言う場合もあります。この業務は仕入先の生産状況を把握していつまでに納品されるかを確認するだけでなく、仕入先と協業して納期短縮を目指すために生産計画を共有するなど様々な方法があります。
④受け入れ検査
納品された部品や資材が発注通りか、あるいは品質に問題が無いかを確かめるために受け入れ検査を行います。会社によっては品質管理部門がこの仕事を担う場合もあるでしょう。受け入れ検査で何らかの問題が発覚した場合、仕入先に連絡を取り即座に対処してもらいます。さらに、問題がなぜ起きたのかを報告してもらい、同じ問題が起きないよう対策を立てることも重要です。
以上が調達の一般的な仕事内容と役割です。こうして具体的な仕事内容について知ると、会社にとって調達がいかに重要かわかるでしょう。
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調達の課題
調達業務の改善がビジネスの成功につながるのなら、まずは調達の課題を理解することが大切です。では、調達が持つ課題とは何でしょうか?
課題①分散管理によるコストの肥大化
日本市場が円熟したことで海外に自社ビジネスの市場を見出し、グローバル展開する企業が増えています。たとえば同じ製品を生産している場合も、事業所によって異なる仕入先から部品を調達していることが少なくありません。拠点ごとに調達部門が存在している場合、その方が効率が良いと考えられてきたためです。しかし、拠点ごとの分散管理はその狙いに反してコストを肥大化させてしまいます。
拠点ごとに仕入れを管理していると仕入れ値は拠点ごとに違います。拠点Aでは100円で調達している部品が拠点Bでは90円で仕入れているかもしれません。この場合、拠点Bでの仕入先で集中管理できれば拠点Aでの仕入れ値は10円下げることができます。
ただし集中管理を実現するためには拠点間で情報を一元化するための環境が必要になるでしょう。
課題②調達ノウハウが蓄積されていない
直接的に収益確保する部門である営業や標準化が進んでいる設計開発に比べて、調達ではそのノウハウが蓄積されていないことが多いでしょう。営業では顧客情報を会社で一元管理するという観点から営業支援システムの導入が活発化していますが、調達ではそうしたシステムの導入が進んでいないことからもこの傾向が読み取れます。
しかし、仕入先を管理する調達では営業と同じように情報の一元化がとても重要です。仕入れ先ごとの取引を都度管理することで、情報共有が促進し自然と調達ノウハウが積み上がっていきます。
そうすることで熟練の調達担当者が不在でもスムーズな業務の流れをマニュアル化して、調達部門全体の生産性向上が目指せるでしょう。
課題③サプライチェーンマネジメント(SCM)を意識できていない
SCMとは部品や資材の仕入れから最終消費者に製品が届くまでのプロセスを一つに連なる鎖のように考え、その流れを最適化することで市場投入へのリードタイムを短縮したりコスト削減を実現するためのマネジメント手法です。調達はこのSCMを起点として、様々な部門や仕入れ先との協業により調達を最適化するという取り組みが重要です。
しかし、多くの調達はSCMにおいて重要な役割を担っていることを意識できずにいます。多くは納期管理に追われ、経営戦略に積極的に絡めていけないためSCMの最適化がなかなか進みません。
ですので、調達が経営戦略に絡みSCMの最適化を目指すためにはやはり生産性を向上するためのシステム化が重要になります。特にERP(統合基幹業務システム)は調達だけでなく会社全体の情報を一元管理することに貢献するため、SCMにおいて重要な「供給連鎖の全体を管理する」という業務に特化しています。
まずは調達の集中管理、それからSCM全体の最適化を
多くの調達が今直面している課題はやはり集中管理でしょう。この課題を解決するためには、拠点間を繋ぎ情報を一元的に管理するためのシステムが必要です。たとえばNetSuiteはクラウドERPとして拠点と拠点を繋ぎ、調達だけでなくグループ全体の情報を一元管理するために貢献します。
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