経済における重要な機能の1つが「物流(ロジスティクス)」です。この物流に対して、「物流=商品の輸送や配送」というイメージを持たれている方も多いでしょう。確かにそれも正解ですが、実は物流はもっと広範囲のプロセスを指す言葉です。
物流業界では、物流は「保管」「輸送」「荷役」「梱包」「流通加工」という5大機能で形成されている、と言われています。ちなみに流通加工とは、流通段階において商品の付加価値を高めるために、物流業者によって行われる種々の加工のことです。商品の組み立てやパッケージング、検品なども行うことから、物流は「配送や輸送だけではない」ということが分かりますね。
また、昨今では物流プロセスの効率化・最適化によって商品価値を高められるとして、多くの業界・業種から物流への視線が集まっています。本稿では、そんな物流とは結局何なのか?そして物流システムとは何か?を解説していきます。
物流の目的とは?
よほど専門ではない限り、普段、「物流って何のためにあるのだろう?」と意識したことはあまりないかと思います。その目的を的確に表すと、物流とは「生産者と消費者にある時間的ギャップ・空間的ギャップを埋めるための取り組み」です。
生産者は自社商品をより早く消費者のもとに届けたいと考えています。そして消費者は、自分が欲しい商品をより早く届けてほしいと思っています。しかしそこには物理的な距離や、時間の制約があります。これらのギャップを如何にして埋めて、生産者と消費者のニーズを合致させるかが物流の大きなポイントです。
最近では、物流を通じて商品の付加価値を高めるという目的も重視されています。前述した流通加工のことですね。物流業者の中には倉庫や工場のリソースが余っているところも多く、そのリソースを利活用して流通加工という役割を担います。
単に荷主を増やすことで事業拡大を図ろうとすると、競合他社との差別化が難しくなったり、設備投資が大きくなりリスク分散も難しくなってしまいます。そのため、昨今の物流業界では流通加工を重要機能として位置づけて、戦略的な事業拡大を図っているのです。
物流の効率化・最適化に必要なものとは?
生産者の「商品を早く届けたい」、消費者の「商品を早く届けてほしい」というニーズを満たすためには、物流の効率化・最適化が欠かせません。ムダを一切省いた物流プロセスを構築することで、円滑・迅速・的確に商品を届けることができます。
そのためには、あらゆる物流プロセスで生成されるデータを収集して、それを可視化・分析し、物流の効率化・最適化のために情報利活用を推し進める必要があります。しかしながら、そうしたデータ収集や可視化・分析を実行するには人手では不可能ですし、物流プロセスを効率的に進めるためにも、新しいソリューション(解決)が必要になります。
そのソリューションとなるのが「物流システム」です。あらゆる物流プロセスを、IT基盤を使って統制することによって、物流の効率化・最適化を実現するための手段として利用します。
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一般的な物流システムは、いくつかのアプリケーションによって構成されています。物流は単に商品を配送・輸送すればよいわけではないので、物流システムは必然として統合的なシステムを構築することになります。以下に、物流システムを構成するアプリケーションについて解説します。
配送管理
物流コストの削減やサービス品質の向上、さらにはCO2排出量削減による社会貢献は、配車プランナーの力量が大きく影響すると言われています。また、熟練の技術を持つ配車プランナーのノウハウ伝承が大きな課題です。配送管理では荷主別、乗務員別、傭車別などあらゆる視点から物流状況を可視化し、配車プランナーのノウハウを数値化することによって、ノウハウ伝承と技術平準化を実現します。
運行管理
物流業者は社会的責任としてCO2排出量削減に取り組まなければいけません。急発進、急加速、急ブレーキ、空ぶかしはしないなどのルールや、アイドリングストップを心掛ける取り組みが大切です。また、原油高騰下における燃料費削減に関わる問題でもあります。運行管理は輸配送車両の運行状況を可視化することで、こうした問題に貢献します。
在庫・倉庫管理
物流業者の多くは、荷主から受けた商品をそのまま消費者のもとへ配送するのではなく、いったん自社倉庫に保管することが多くあります。そこから卸業者へ配送したりするので、在庫・倉庫管理は欠かせない業務です。物流システムにはもちろん在庫・倉庫管理の機能も備わっています。
貨物追跡
物流におけるSCEM(Supply Chain Event Management)を効率良く行うためには、各種イベントを如何にタイムリーに把握できるかが成功のポイントになります。そして物流業者自身はもちろん、消費者に対しても配送中の商品がどういった状態にあるかを明確に提示する必要があるため、貨物追跡機能でそれを実現します。
●SECMとは?
受注から納品にいたるまでに発生する各種イベント(配送中、商品の到着、積み込み完了など)を時系列で詳細に把握し、計画通りに物流プロセスが進んでいるかを管理すること。
EDI
物流取引を効率化させるために欠かせないのがEDI(Electronic Data Interchange)です。EDIには全銀やJCAといった従来の電子取引プロトコルに加えて、インターネットを活用した新世代のプロトコルが搭載されています。
●EDIとは?
通信回線を介してコンピューター間でやり取りをし、プロトコルにもとづいて企業間の商取引データを交換するもの。
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物流業界の新潮流「4PL」とは?
いかがでしょうか?物流とは想像以上に広範囲のプロセスを指すものであり、物流システムもまた統合的な大きなシステムであることを解説しました。最後に、物流業界における新潮流とも言われる「4PL」についてご紹介します。
関連記事:物流の4PLとは?3PLとの違いを解説
4PLとは「fourth Party Logistic」の略であり、「優れた3PLのノウハウを持つ物流企業が、別の物流企業に対して自身の3PLノウハウを伝授し、サービス化すること」だと解釈されています。ちなみに3PLとは、「企業が抱えるさまざまな経営問題のうち、物流部門における業務を第三者である物流企業に委託する業務形態」です。
要するに、高度な3PLノウハウを持つ物流企業が、そのノウハウを他の物流企業に伝授して3PL事業を立ち上げたり拡大したりするためのコンサルティングを4PLと呼びます。
3PLを事業展開している物流企業の多くは、余剰社員を抱え込んでしまったり、過剰な設備投資を行ってしまったりするリスクを抱えています。そのため、継続的に事業を拡大していけば利益率が自然と向上する、というわけではないのです。
そこで、そうした物流企業は自身が持っている3PLのノウハウを他の物流企業にコンサルティングサービスとして提供することで、無駄なリソースを作らずに新しい利益を創出することができます。これが物流業界の新潮流、4PLです。
物流は経済全体においてとても重要や役割を担っている業界なので、今まで物流に着目していなかったという方は、この機会に物流への理解をぜひ深めてください。
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