今では当たり前のように使用されている経理ソフトとは、一体どんなものなのか?経理業務を効率良く行うためのソフトウェアということは知っていても、その実態まで知らないという方は、「経理ソフトって何?」と今さら同僚には聞けないでしょう。本稿では、経理ソフトとは何かに加えて、経理ソフトが普及した背景やその特徴までご紹介します。
経理ソフトとは?
経理の仕事は、大きく分類すると日次業務、月次業務、年次業務にわけられます。
日次業務
現金の出納管理や立替経費の精算、伝票への記帳や整理など。受注、出荷、売上情報などを集計して会計伝票を作成したり、在庫の入出庫処理を行ったりすることもある。
月次業務
取引先への請求と仕入先への支払い、入金確認、社員への給料支払いなど会社の経営資源にかかわるもの。それぞれに一定の締め日を設け、まとめて集計/処理するのが一般的。月次決算を行い予算計画の比較や、経営会議のための会計レポート提出などを行う場合もある。
年次業務
年次決算として税務申告、会計監査対応、決算短信、有価証券報告書などの財務諸表を作成する。株主総会の準備や社会保険、労働保険関係の事務処理、源泉徴収税の管理および支払いなど、総務や人事の仕事を経理が担当することもある。
このように、経理業務は多岐にわたりますが、その中で経理ソフトが効率的な作業を提供するのは一部の業務になります。一般的には取引情報や金銭の入出金情報の記録/集計などを自動化し、それに応じた帳票を発行する機能を備えています。
経理ソフトが誕生したのは1980年代とされており、それまで高価だった汎用コンピューターも中小企業が購入できるほど廉価なものになり、それに応じてさまざまなソフトウェアが開発されました。経理ソフトもその一部というわけです。
当時の経理ソフトは「仕訳を入力して決算書を作成する」という、シンプルでいて経理の本質そのものを突いたソフトウェアでした。その後、パソコンが安価になり、普及するにつれて経理ソフトの高度化と、安価な経理ソフトが次々と登場しました。
クラウド経理ソフトの登場
代表的な経理ソフトといえば弥生株式会社の「弥生シリーズ」です。1987年に最初のバージョンがリリースされてから、20年以上にわたって多くの中小企業の経理ソフトとして人気を集めています。今では非常に多くのソフトウェアベンダーから経理ソフトがリリースされており、経理ソフトごとに特徴的な機能が備わったり、度重なる法改正へ対応したりと進化を続けてきました。
その後、経理ソフト業界にとって大きな転換期を迎えたが2013年のクラウド経理ソフトのリリースでしょう。freeeと言う経理ソフトは、日本発のクラウド経理ソフトとしてそのサービスをスタートさせました。
クラウド経理ソフトとは、従来はパソコンやサーバーにインストールして利用していた経理ソフトをインターネット経由でその機能のみを提供し、定期契約によってサービスが利用できるという製品です。クラウドコンピューティングの潮流に乗って登場したクラウド経理ソフトは、またたくまに市場を席巻し、今では経理ソフトを導入する上でクラウド経理ソフトの検討は当たり前だとされています。
クラウド経理ソフトの多くは「複式簿記知識がない初心でも使える」をコンセプトにしており、ネットバンキングのオンライン明細やクレジットカード明細から自動的に取引情報を記帳したり、経費計算を自動化したりと業務をより効率的に行えるような機能を提供しています。ただし、複式簿記知識が一切無くても使えるわけではなく、やはり最低限の知識は必要です。
[RELATED_POSTS]インストール型経理ソフトとクラウド経理ソフトの特徴
パソコンやサーバーにインストールするタイプの経理ソフトと、クラウド経理ソフトとではその特徴に大きな違いがあります。自社にとって適切な経理ソフトを導入するためには、まずその違いを理解することが大切です。
インストール型経理ソフト(オンプレミス)
1.オフラインで処理できる
パソコンやサーバーにインストールするタイプの経理ソフトウェアは、たとえインターネットに接続していなくても利用できるため、ネットワーク障害によってインターネット接続が遮断されても難なく利用できます。
2.パフォーマンスが高い
インターネットを介していないことから、パフォーマンスが高く軽い操作性によってストレス無く経理業務にあたることができるでしょう。ただし、パフォーマンスは経理ソフトをインストールしたコンピューターに依存します。
3.安心のセキュリティ
インターネット接続によって利用するクラウド経理ソフトでは、第三者による不正アクセスや情報漏えいは無いか?という不安が付きません。それに対し、インストール型経理ソフトは閉じられたネットワークの中で利用するため、外部からの干渉を受けないことでセキュリティ面での安心を生みます。
4.買い切りタイプ
インストール型経理ソフトは基本的に買い切りタイプなので、継続的に費用を支払う必要はありません。ただし、毎年のバージョンアップや、消費税および固定資産税、償却率に変更があったり、会社法の改正などによって大幅な法改正が起こったたりした場合は、更新費用が必要になる製品もあります。
クラウド経理ソフト
1.経理知識が乏しくても使える
クラウド経理ソフトは複式簿記や経理に関する知識があまり無い人でも、直感的に操作できるインターフェースを備えています。サポートも充実している製品が多いため、最低限の複式簿記知識でもサポートデスクを利用しながら経理業務を行うことができるでしょう。
2.自動仕訳に対応している
経理業務を効率良く行うには、現金や取引情報の仕訳作業を効率化するのが近道です。クラウド経理ソフトには銀行口座やクレジットカードと連携するための機能が備わっており、入出金や取引明細を自動的に取り込み、仕訳してくれる機能が備わっています。さらに、それらの情報をもとに財務諸表や確定申告書を自動的に作成するなど、多数の機能を備えているため業務効率化が実現します。
3.社外からでもアクセスできる
インターネット経由で提供されるサービスということもあり、クラウド経理ソフトは社外からのアクセスに対応していますし、異なるデバイスからでも同じアカウントにアクセスすることができます。そのため、経営者はリアルタイムに財務状況を把握したり、従来の経理ソフトには無い使い方ができます。
4.バージョンアップが自動で行われる
企業会計にかかわる税制改正は毎年施行され、経理ソフトはその度にバージョンアップが行われます。インストール型経理ソフトではバージョンアップの度にインターネットに接続したり、業務を中断したりしなければいけないことが多いのですが、クラウド経理ソフトでは常に最新の状態が保たれているため、個別にバージョンアップ対応する必要はありません。
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自社に最適な経理ソフトを検討しよう!
これから経理ソフトを導入しようと検討している企業では、まず現状把握から始め、自社にとって必要な経理ソフトの形とは何かを明確にしましょう。必ずしもクラウド経理ソフトがベストというわけではないため、十分に検討した上で自社にとって最適な経理ソフトを選んでいただきたいと思います。
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