業務自動化への取り組みにより、生産性の向上やヒューマンエラーの防止など、さまざまなメリットが期待できます。ただ、メリットだけでなくデメリットもいくつかあるため、取り組みを始める前に把握しておかねばなりません。本記事では、業務の自動化が注目を集める背景や、取り組みに必要なツール、メリット・デメリットなどについて解説します。
DX時代に求められる業務の自動化とは
企業における業務の自動化とは、デジタル技術やITツールを駆使し、単純作業や定型業務を自動処理できる環境・体制の構築を指します。OCRやRPAなど自動化の方法は多々ありますが、詳しくは後述します。
業務自動化が注目されている理由は、日本の労働人口が減少しているためです。少子高齢化が進む現代日本では、労働人口が減少傾向にあり、このままでは従来の生産性を維持できなくなる懸念があります。従来と同様、もしくはそれ以上の生産性を求めるには、業務自動化によりリソースの最適化を図らなくてはなりません。
また働き方改革の推進も、業務自動化が注目を集めている理由のひとつです。働き方改革における課題として長時間労働の解消が挙げられますが、その実現には業務を効率よく遂行できる環境が必要です。そのためには、業務の自動化は避けて通れません。
業務の自動化における代表的なツール
業務の自動化に使用されるツールとして、OCRやRPA、ERPなどが挙げられます。それぞれ自動化できる業務が異なるため、導入前にきちんと把握しておきましょう。
OCR
OCRとは「Optical Character Recognition(またはReader)」の略であり、画像として取り込んだテキストデータをデジタル化する技術です。OCRの活用により、スキャンした画像データに記載されている文字を認識し、テキストデータへと変換できます。
OCRなら、ビジネス文書をスキャンするだけでテキストデータとして保存できるため、データ入力作業の大幅な効率化が可能です。
RPA
RPAとは「Robotic Process Automation」の略であり、さまざまな作業の自動化に役立つツールです。データ入力や受発注処理、データ収集、分析、カスタマーサポートなどの業務領域に対応できます。
基本的に非定型業務の自動化には適していませんが、近年ではAI技術を活かしたRPAも登場しており、従来よりも自動化に対応できる業務が増えています。
ERP
ERPとは「Enterprise Resource Planning」の略で、日本語では「基幹システム」や「統合基幹業務システム」などと訳されます。生産管理や販売管理など、組織内のシステムを統合して一元的に管理できるシステムです。
ERPの導入により、社内に散在していた情報を一元管理できます。また、各システムを連携できるため、業務効率化や業務プロセス自動化が進み、リソースの最適な分配を実現できます。
[RELATED_POSTS]業務の自動化を行うメリット
業務の自動化を行う主なメリットとして、従業員の業務負担軽減が挙げられます。また、ヒューマンエラーを防止できるほか、生産性の高い業務に注力できるようになり、DX推進の基盤も構築できます。
業務負担の削減が見込める
定型業務の自動化に成功すれば、それまでその作業を担当していた従業員の負担を軽減できます。その結果、モチベーションアップやストレスの軽減なども期待できるでしょう。また、自動化した業務は人手が必要なくなるため、人手不足の解消にもつながります。
ヒューマンエラーの防止が可能となる
どれほど完璧な人間であっても、集中力の低下や体調不良などでミスを犯すことはあります。一方、ITツールやシステムは集中力の低下や体調不良を起こす心配がなく、ミスも犯しません。
ヒューマンエラーの防止は、業務品質の向上につながります。二度手間やクレームの発生も抑制できるため、生産性の向上も期待できます。
生産性の高い業務にシフトできる
定型業務の自動化により、従業員がより生産性の高い業務に注力できる環境が整います。誰でもできる簡単な仕事にリソースを割く必要がなくなり、利益に直結するコア業務に注力できるため、生産性が高まるのです。
また、業務自動化に成功すれば、それまでの担当者が不要となるため、人件費の削減にも貢献できます。
DX推進の基盤が構築できる
DXとは、デジタル技術を活用したビジネスの変革を指します。「DX=デジタル化」ではありませんが、DXを実現するには業務や情報のデジタル化・自動化を進め、技術的な基盤を整備する必要があります。
情報のデジタル化により、データを資産として蓄積・管理できるのもメリットです。デジタルデータは物理的な管理スペースを必要とせず、分析によるデータ活用も実現できます。
業務の自動化を行うデメリット
業務の自動化に伴うデメリットとして、導入・運用時におけるコストの発生や、業務がブラックボックスしてしまう可能性などが挙げられます。
導入や運用にコストがかかる
業務を自動化するには、OCRやRPAなどのITツールを導入する必要があります。導入時のライセンス料をはじめ、月額料金やメンテナンス費用などが発生することを覚えておきましょう。本格導入する前にトライアル利用し、コストに見合った成果が期待できるかどうかの確認が求められます。
業務がブラックボックス化する可能性がある
ITツールやシステムで自動化した業務は、人が介在しなくなるためブラックボックス化しやすい傾向にあります。ツールへの依存が過ぎた結果、何らかの理由でツールが使えなくなったとき、誰も対応できないといったことが起こりかねません。
また、複数ツールの導入により、システムの管理が煩雑化するリスクもあります。ただ、これに関してはERPとRPAを組み合わせて活用するなど、工夫次第で対応が可能です。詳しくは以下の記事をご覧ください。
関連記事:「ERPとRPAを組み合わせるメリットをわかりやすく解説」
業務の自動化を成功させる基本原則
既存の業務プロセスを自動化しただけの状態を変革とはいえません。DX時代の業務自動化を成功させるには、いくつかのポイントを押さえて取り組む必要があります。
Simplify: 簡素化
業務自動化へ取り組むにあたり、まずは各工程を見直し、複雑なフローやプロセスは簡素化を進めましょう。業務プロセスやフローそのものが複雑では、自動化が困難です。プロセスマッピングなどで業務プロセスやフローを可視化し、無駄を抽出しつつ簡素化に取り組みます。
Standardize: 標準化
業務の標準化ができていないと、品質のばらつきや特定従業員への負担増加などを招きます。スムーズな自動化も阻害するため、誰が担当しても同じように業務へ取り組めるよう仕組みづくりを進めなくてはなりません。よくある標準化の手法としては、業務マニュアルの作成が挙げられます。
Centralize: 集中化
標準化した業務プロセスの集中化により、マネジメントの手間を軽減し、リソースをより有効に活用できます。マネジメントの手間が軽減されればコストダウンにつながり、コア業務へ優先的にリソースを投入できるため利益拡大にもつながります。
Automate: 自動化
ここまでのステップをクリアし、初めて変革を実現する自動化へと取り組めます。大切なのは、いきなり既存の業務プロセスを自動化しようとするのではなく、簡素化と標準化のステップをクリアすることです。
既存の業務プロセスを自動化しただけでは、ただの業務効率化で終わってしまいます。業務の簡素化と標準化でしっかりとした土台をつくり、そのうえで集中化から自動化へと進めることで組織変革へとつながるのです。
まとめ
業務の自動化により、業務負担の軽減やヒューマンエラー防止などのメリットを得られますが、コストの発生や業務のブラックボックス化といったリスクがあることを理解しておきましょう。また、変革をなす自動化には、業務の簡素化と標準化をクリアすることが大切です。
自動化を進めるにあたり、ITツールの導入やデジタル化も必須です。現在では、DXと自動化を実現できる優れたツールやシステムもあるため、そのような製品であればスムーズな変革を実現できるでしょう。
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