会社の中に存在する部署の多くは、利益を創出するために活動しています。営業部は販路拡大や販売増加を目指し、製造部はより品質の高い商品を作ろうと努力します。企画開発部は市場分析により売れる商品を日夜考えています。
これとは反対に、会社のお金を使うことが役割とされた部署があります。それが調達部です。会社によっては「プロキュアメント」や「購買部」と呼んだりもするでしょう。この調達の仕事について意味と役割を十分理解していない人が多いように感じます。
調達は単にお金を使う部署ではないこと、経営や製造にとって欠かせない部署であること、利益を創出するため重要な役割を担っていることなど、ここでは調達の意味や役割についてご紹介します。
調達の仕事
まずは調達がどんな仕事をしているのか?そこから紐解いていきましょう。
①直接資材の調達
直接資材とは製造業において製造に直接かかわる資材のことです。原材料や部品などが該当します。生産計画にのっとって必要な時に必要な資材を、適切なタイミングで供給することが重要になります。
②間接資材の用達
間接資材とは製造や事務処理に直接かかわりはないものの業務遂行に欠かせない資材のことです。たとえば従業員が使用するメモ用紙やクリアファイル、製造部なら工具や制服なども間接資材に該当します。間接資材は定期的なタイミングで各部署から集まった依頼をもとに発注します。
③調達計画の立案
製造では生産計画があり、そのスケジュールに沿って生産が進みます。生産計画は商品のQCD(品質、コスト、納期)を維持するために重要な役割を持ち、計画通りに進めることで会社や顧客にとって良い取引ができます。調達計画とはこの生産計画に従って資材調達のためのスケジュールを立てることです。製造では生産に必要な資材を一気に集まればよいのではなく、資材の種類によって適切なタイミングが変わります。従って調達計画を立てることがスムーズな生産を助けます。
④注文書の作成および発行
資材調達では仕入先に対して注文書を作成し発行します。多くの場合は依頼された注文内容をもとに情報をシステムに転記し、作成および発行をします。
⑤仕入先の開拓および選定
会社にとって仕入先は一定である必要はないので、新しい仕入先を開拓したり選定することも調達の仕事です。特に原価低減などを考慮するのであれば、常に最適な仕入先を考え開拓・選定することが大切です。
⑥見積価格の評価および交渉
仕入先から提示された資材の見積価格は適正なものかどうか?これを評価し、必要に応じて価格交渉をします。調達する数量に応じて価格交渉をすれば、通常よりも原価を下げることができます。
⑦受け入れ検査および検収
仕入先から届いた資材は現場に供給する前に、調達で検査や検収を行います。注文した資材の種類と数量を確認し、品質に問題がないかをチェックしたら承認して次工程へと渡します。何か問題が発生することを想定して、仕入先と予め対処方法を協定しておくことも大切です。
⑧仕入先管理
新しい仕入先を開拓したり選定するだけではなく、既存の仕入先を管理することも大切な仕事です。仕入先ごとの生産能力や経営状況を把握し、万が一のトラブルを考えて別の調達計画を立てておくことも重要になります。
以上が調達の主な仕事内容です。会社によって若干の違いはあるかもしれませんが、多くの場合がこれらの業務を基本として活動しています。
[RELATED_POSTS]調達はなぜ必要か?
実は調達の仕事について「会社のお金を使うだけ」と軽視している人が少なくありません。これは会社にとって大問題です。なぜなら、会社の利益創出に最も近い存在こそが調達だからです。
多くの人は会社の利益を確保するために重要な役割を担っているのは、営業や企画開発だと考えています。確かに、販売量が増加したり高く売れる商品を開発すれば、それに比例して利益は拡大するでしょう。しかしそれよりも、原価を低減することで得られる利益創出の方がはるかに高いことをご存知でしょうか?
たとえば年間100億円の売上高を持ち、利益率3%の企業があると仮定します。会社にとっての純利益は3億円です。この会社が販売量の増加によって売上高を10%拡大すると、売上高は110億円になり純利益は3,000万円アップします。
今度は売上高が拡大するのではなく、原価が10%低減すると純利益はどうなるでしょうか?100億円の売上高は変わらなくても純利益はなんと12億7,000万円になり、9億7,000万円も増加します。同じ10%の努力でも、原価を低減する方が販売量を増加するよりも圧倒的に効率良く利益を創出できるということです。
以上のように調達は会社の利益創出にとって以外にも近い存在です。なので調達の仕事を軽視したり、その重要性を理解していないままだとせっかくの利益創出の機会をみすみす逃していることになるでしょう。
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調達に必要な能力とは?
会社が調達を通じて利益創出を達成したり、生産計画をスムーズに進めていくためにはまず調達の重要性を再認識することが大切です。その上で、調達の人材に求めるべき能力と確保するべき人材とは何でしょうか?
①原価計算の知識
「調達は原価計算の要」とは言っても、調達自身のその知識が無いと原価低減は実現できません。なので細かい原価計算もできる能力が強く求められます。原価に強い調達は、コスト削減に大きく貢献します。
②ステークホルダーと良好な関係を保つ
調達が関わるステークホルダー(利害関係者)は多岐にわたります。社内のほとんどの部署と仕入先が調達のステークホルダーなので、それらと良好な関係を築くことが全体業務をスムーズに進行します。
③国内外の情報収集に長けている
日本企業のオフショアなど他国でのビジネスが増えたことから、海外から資材を調達することが多くなっています。そのため、国内外の情報収集に積極的な人は仕入先の比較が的確に行え、それによって仕入先選定が適切に行われます。
④経済や国勢に関する知識
会社が仕入れる資材の多くは仕入先となっている国の経済や国勢によって、仕入れ値が大きく変動します。特に中東など国勢が安定しないような国から仕入れを行っている場合、急な原価高騰によって売価の上昇を余儀なくされる可能性があります。ですので、調達は仕入先となっている国の経済や国勢を理解し、有事の際はスムーズに仕入先を切り替えられるよう計画しておくことが大切です。
以上が調達に求められる能力です。もちろん、各人材がこれらすべての能力を持っていることは難しいでしょう。ただし何か一つの能力に特化した人材が集まりチームとして活動すれば、会社の調達業務を最適化して積極的に経営の一部を担っていけるはずです。
調達にERPを
調達が各ステークホルダーと良好な関係を築いたり、あらゆる情報を網羅して調達業務を行うためには会社にとって一元化された情報基盤となるERP(エンタープライズ・リソース・プランニング)の存在が重要です。
ERPは会社全体の業務システムを単一データベースで管理し、スムーズなデータ連携によって調達はもちろん会社全体の業務を最適にします。調達から経営を変えていく、という新しいアプローチを計画する際はERPの導入をぜひご検討ください。
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