日本が世界に誇る「ものづくり」の技術は、技術者や職人ばかりではありません。生産管理システムというITツールも、その一翼を担っています。工場を持つ企業では当たり前となっている生産管理システムとはどのようなものなのでしょうか?
一つのものを製造するまでの過程には、生産計画に立案、計画にもとづいた仕入れ、在庫管理、部品・原材料供給、製造など様々な工程が存在します。さらに、販売に関しても生産の一部だと言えるでしょう。
生産管理のための生産管理システムはいわば、これら生産に関わる工程の業務アプリケーションを包括的に提供するITルールです。このため「生産管理スイート」と呼ばれることもあります。
基本的な機能は「生産計画」「仕入管理」「在庫管理」「品質管理」「原価管理」「販売管理」であり、それぞれの機能が連携していることで、生産管理全体を最適化し、生産性の高い経営を行うことができます。
さらに、生産管理システムはERP(統合基幹業務システム)の一部として提供されることも多く、より総合的なシステム環境により組織全体の業務最適化を図ることも可能です。
ただの「生産指示システム」になっていないか?
生産管理を効率化して様々な効果を得るための生産管理システムも、活用しきれていないケースが少なくありません。生産管理システムの導入目的が曖昧であったことが原因で、単なる「生産指示システム」になってしまうことが多いのです。
指示伝票の出力はシステムからされるが、肝心な管理データについては経営者すら見ていないというケースでは、生産管理システム本来の効果を引き出すことはできません。
このため生産管理システム導入時は、管理目的を明確にした上で、効果を最大限引き出すような導入を目指す必要があります。
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生産管理システム本来の導入効果とは
では、生産管理システム本来の導入効果とは何でしょうか?
各リードタイムの短縮
生産には調達、製造、出荷など各工程ごとにリードタイム(ある一工程を完了するまでの時間)があります。生産管理システムを活用することで、どの工程がどれくらいのリードタイムなのかをまず把握することができます。
リードタイムが短縮の予知ありと判断した場合は、ボトルネックになっている原因を洗い出し解決し、リードタイムを短縮していきます。リードタイムを短縮するということは生産性を高めるということなので、以前よりも効率的に生産していくことが可能です。
また、リードタイムを短縮できれば納期も短縮されるので、顧客満足度の向上にも貢献できるでしょう。
納期管理精度の向上
各工程のリードタイムが明確になると、より精度の高い納期回答を行うことができます。これまで実際の納期よりも大幅に遅れてしまったり、逆に早すぎてしまったりといった経験をされた企業は多いでしょう。
これらはいずれも顧客満足度を下げる原因です。納期遅れを気にして長めに納期を回答しても、顧客満足度低下につながってしまいます。
生産管理システムで各工程のリードタイムを把握すれば、今まで以上に制度の高い納期回答を行えるようになります。遅すぎない、かつ無理のない納期でスケジュール通りに納品できれば、顧客満足度を向上できますし現場負担も軽減することができます。
生産負荷の標準化
部門ごとにシステムが分断化している環境では「リソースの共有化」という概念が存在しません。つまりA部門は日々生産に追われているのに対し、B部門では楽に業務をこなしているという状況が発生します。
現在こうした生産環境を持つ企業は危機感を持ったほうがいいでしょう。
生産負荷が偏っている場合、負担がかかっている作業員のフラストレーションは想像以上に大きく、いずれ重大なトラブルを起こしかねません。また、リソースを活用しきれていないことから、生産性の低下をも招いています。
生産管理システムを導入するということは、各部門ごとのリソース状況を把握できるということです。このため生産負荷を分散させ、標準化された負担と生産性の向上という効果があります。
不良率管理による品質向上
生産現場における品質管理で重要な作業の一つと言えば「不良率管理」です。不良率とは生産した製品の総和に対し、どれくらいの不良品が発生するかを表したものです。不良率のボーダーラインは各社異なりますが、2%以下と設定するのが一般的です。
この不良率管理を行っていない企業と行っている企業とでは、製品の品質に大きな差が出ます。不良率が低いということはそれだけ質の高い製品を生産しているということであり、不良率を下げるためには不良率管理が必要なのです。
生産管理システムには不良率管理機能があり、日々の生産における不良率を管理し、問題があればすぐに原因究明できるという導入効果があります。
適正在庫の維持
生産管理システムに包括されている在庫管理機能では、部品や原材料、あるいは完成品の在庫を適正に保つための機能が備わっています。適正在庫を維持することはスムーズかつ無駄のない生産を実現し、キャッシュフロー改善など様々な効果があります。
このように、生産管理システムが持つ導入効果は多岐にわたります。こうした生産管理システム本来の効果を理解することが、導入効果の高い生産管理システムへの第一歩だと言っていいでしょう。
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生産管理システムのトレンドは?
企業システムのほとんどを統合的に提供するERPまではいかなくとも、生産管理システムは比較的大規模なITツールです。そのため、業務アプリケーションを単独で導入するよりも大きなインフラが必要になることが少なくありません。
インフラが大きくなると導入プロジェクトは長期化し、さらに導入コストがかさみます。こうした点から生産管理システムを導入しないという企業は多いのではないでしょうか?
そんな生産管理システム市場のトレンドといえば「クラウド」です。多くの市場で中心になりつつあるものなので、今更クラウドと言われても驚かない方が多いでしょうが、実際に資産管理システム市場ではクラウド型を導入する企業が年々増加しています。
やはり、インフラを調達する必要がないことから、導入プロジェクト短期化と導入コスト削減を狙う企業が多いようです。また、導入後の運用効率化という効果もあるので、総合的に見てクラウド型生産管理システムは非常に導入価値の高いITツールだと言えます。
クラウド黎明期には危険視されていたセキュリティ性に関しても、近年では自社でシステム環境を構築するよりも、クラウドにデータを置いた方がセキュリティ性が高いという認識が強まってきました。
特にセキュリティ専門技術者を確保することが難しい企業にとっては、セキュリティが堅牢に保たれたクラウドを活用する方が、サイバー攻撃から機密情報を守れる可能性が高くなっています。
こうした様々なメリットから、生産管理システム導入時はクラウド型の優先的な検討をおすすめします。
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まとめ
生産管理システムは複雑なITツールなので、完璧に使いこなせている企業は多くありません。しかし、生産管理システム本来の導入効果を理解し、ポイントを押さえて運用すれば非常に高い導入効果を得ることができるでしょう。
まずは現状の生産課題を洗い出し、生産管理システムでどう解決できるかを考えていきましょう。その上で導入目的を明確にし、適切な生産管理システム導入をしていただきたいと思います。
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- サプライチェーン/生産管理
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