最近「会計ソフトの導入は簡単」というフレーズをよく見聞きするようになりました。
会計ソフト業界では現在、クラウドサービスとして提供されている製品が台頭し導入への障壁が低くなったのは確かです。しかし、簡単かと言えばやはりそうではない気がします。
あくまで「以前に比べて簡単になった」という話であり、実際に導入に失敗している企業も少なくないのです。不明確な導入目的、製品の選定ミスなど理由は様々あります。
今回は会計ソフト導入のステップをおさらいしつつ、それぞれのポイントを改めて確認していきましょう。
1. 目的の明確化:なぜ会計ソフトを導入するのか?
「Excelでの会計管理に限界を感じる」「ソフトを導入して会計を楽にしたい」などなど、会計ソフトを導入する目的としては様々なものがあります。しかし、目的を明確にしてから導入に踏み切るというケースが少ないようです。
会計ソフト導入の目的を明確にすることは、失敗しない導入や製品選びのために非常に重要です。今一度「なぜ導入するのか?」を考えてみましょう。
ポイント:“導入自体”が目的になってはいけない
会計ソフト導入で失敗するケースの多くで“導入自体”が目的になってしまっているということが挙げられます。つまり、導入後のことまで考慮していないがために「とにかく良い会計ソフトを導入しよう」という状態になっているのです。
この状況に陥ると適切な製品選定ができなくなり、単に多機能な製品や低コストな製品に目が行きがちになってしまいます。結果自社に合わない製品を選んでしまい導入失敗となるのです。
会計ソフトの導入の目的というのはあくまで「現状課題の解決」であって「多機能や低コストな製品を導入する」ことではありません。まずは会計に関する現状課題を一つずつ整理し、会計ソフトでどのように解決していけるかを考えていきましょう。
2. 機能要件の定義:目的を機能に落とし込んでいく
会計ソフトの導入目的が明確になれば、どのような機能が必要なのかが自然とわかってくると思います。そこで自社にとって必要な機能を要件として落とし込んでいきましょう。
機能要件の定義は製品選定の基準ともなるステップなので、慎重に行う必要があります。
ポイント:不要な機能は省いていく
このステップで注意しなければならないのが、必要のない機能までを盛り込んでしまうことです。「こんな機能があったらいい」という考え方で機能要件を定義していくとあっという間に膨らんでいくことが多々あります。
しかし実際に、その中に5割程度の機能は実務で使用しません。つまり多機能だから良い製品というのではなく、あくまで自社に最適な会計ソフトが良い製品となるのです。従って「絶対的に必要な機能」という考えを軸に機能要件を定義していきましょう。
また反対に、自社にとって必要な機能が不足しているというケースも少なからずあります。このケースでは機能要件に現場の意見を反映していないという原因が考えられるので、定義段階から会計管理に関わる社員を巻き込んでいきましょう。
3. 予備知識を付ける:会計ソフトのすみ分けを知る
ここで、会計ソフトのはどのような製品が提供されていて、どのような製品を導入するべきかという大まかな舵を切ります。それでは会計ソフトのすみ分けを簡単に解説していきます。
システム型会計ソフト
主に中堅・大企業向けに開発されている会計ソフトであり、サーバの管理・運用が必要になります。このため情報システムリソースが必ず必要です。
製品の特徴としては柔軟にカスタマイズできることから、自社に最適な会計ソフトを構築しやすいのがメリットとなります。ただし、開発・導入費用が数百万~数千万円かかることも少なくありません。
パッケージ型会計ソフト
主に個人事業主や中小企業に導入されている会計ソフトであり、PCにインストールするだけで利用できる手軽さがあります。
メリットはやはりその低コストさにあり、1パッケージ数万~十数万円程度で導入することができます。ただしシステム型のようにカスタマイズはできないので最適な製品を選ぶことが難しいというデメリットもあります。
クラウド型会計ソフト
クラウド型とはサーバの管理・運用もPCへのインストールも必要なく、インターネット経由で利用するサービスを指します。個人事業主を始め中小・中堅企業に幅広く導入されている会計ソフトです。
クラウド型のメリットはまず運用の手軽さです。
サーバの管理・運用は不要なもののシステム型と同規模の会計ソフトを導入することができます。また、月額料金性であることから低コストで導入でき、製品によってはカスタマイズできるケースも少なくありまんせん。
デメリットとしてはインターネット環境に依存するため、オフラインでは利用できないといった点でしょう。
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ポイント:おすすめはクラウド会計ソフト
どの会計ソフトを導入すればいいのかと悩んだ場合、クラウド型会計ソフトを選ぶことがおすすめします。提供している機能はパッケージ型とほぼ変わらず、製品によってはシステム型のような機能を提供しているものもあります。
また、インターネット経由で利用するという特性上使う場所やデバイスを選ばないといったメリットもあるので、会計ソフトを活用する幅が広がるでしょう。
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4. 会計ソフトを選ぶ:機能要件を基準に製品を選んでいく
会計ソフトのすみ分けについて理解し、どの製品を導入するか大まかな決断をしたら具体的に製品を選定していきます。まずは定義した機能要件を基準にいくつか製品をピックアップしていきましょう。
その中から自社にとって最適な製品を選んでいくのです。
ポイント:ピックアップした製品の無料トライアルを実施する
製品をいくつかピックアップしていくと、多くの製品で機能が横並びになっていることに気が付くと思います。実は近年提供されている会計ソフトの多くは機能も料金もそこまで大きな差はないのです。
良く言えば「ハズレがない」と捉えることもできますが、導入する側からすれば迷うポイントなのではないかと思います。そこで各製品が提供している無料トライアルを積極的に利用していきましょう。
表面上は横並びに見える会計ソフトも、実際に利用してみると使い勝手の違いを確かに実感することができます。また、会計ソフトはユーザーにとって使いやすいかどうかが大きなキーポイントでもあるので、無料トライアルの利用は欠かせません。
また、無料トライアルで使用感を確かめるのは経理部や担当者に任せましょう。実施に使用するユーザーにとって使いやすい製品でなければ導入は失敗してしまいます。
参考記事:おすすめの会計ソフト17選
会計ソフトの導入は簡単ではないと認識する
ここで冒頭の話題に戻りますが、会計ソフトの導入というのはやはり簡単なものではありません。各ステップには重要なポイントがあり、それらをしっかりと守らなければ失敗するということは十分にあり得るのです。
ですので、今後会計ソフトを導入する企業ではここまで紹介したステップとポイントに十分注意していただきたいと思います。
会計ソフトの導入は以前よりも簡単になりました。しかし、何の準備もなしに成功するほど簡単ではないのです。
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クラウド型ERPという選択肢もある
皆さんはクラウド型ERPというソリューションをご存知でしょうか?「クラウド型」については既に説明しましたね。
ERPというのは会計ソフトを始め在庫管理ソフト、販売管理ソフト、顧客管理ソフトなど経営に必要な十数個のシステムを一気通貫で提供しています。これをクラウドで提供しているのでクラウド型ERPです。
つまり、クラウドERP一つ導入することで経営に必要な基盤を手に入れることができるというとです。
連携が取れているからこそのメリットがある
2000年代初頭から国内でも爆発的に普及し、現在も多くの中小~大企業で利用されているERP。その最も大きなメリットは各システムで連携が取れていることです。
これがどういうことかというと、各システムから生成されたデータはすべてマスターとして管理されるので、社内リソースを瞬時に確認することができます。各システムが独立している環境だとデータの収集から加工まででかなりの時間を費やしてしまうので、競合に一歩後れを取っている状態でもあるのです。
しかしクラウドERPがあればすべてのデータを一つにダッシュボードに集約することができるので、経営判断や意思決定が迅速化します。
大幅な業務効率化につながる
各システムで連携が取れているということは、これまで発生していた2重3重のデータ入力業務が必要なくなります。これにより大幅な業務効率化につながり労働生産性が向上するでしょう。
また、クラウド型なのでインターネット環境さえあればいつでもどこでも利用でき、ビジネスが加速します。
堅牢なセキュリティで安心できる
ERPというのは社内リソースのすべてが集約するソリューションであるからこそ、セキュリティには最高のものが求められます。クラウド型ではデータを社外に保管するという点から不安を覚える方も少なくありませんが、実は自社独自にセキュリティを敷くよりも堅牢なケースがほとんどです。
このため安心してデータを預けることができます。
以上のように、会計ソフトだけでなく企業として強い基盤を必要としている場合はクラウド型ERPの導入がおすすめです。以前は「ERP=大企業が導入するシステム」というイメージが強くありましたが、クラウド型の台頭で近年では中小企業の多くで導入されています。
クラウド型なら導入コストを大幅に抑えることもできるので、中小企業が導入するソリューションとして最適でしょう。連携の取れたシステムを導入したい、大幅な業務効率化を実現したいという企業は是非クラウド型ERPを検討してみてください。
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