「請求書」といえばこれまで、これまで紙で作成されてきたのが当たり前でした。しかし現在では「Web請求書」が注目を集めており、多くの企業に支持されています。クラウドサービスが普及したことで様々な業務をWeb上で実行できるようになりましたが、請求書作成および請求業務もWeb上で実行できるようなサービスが続々誕生しています。
皆さんの企業でも、請求書などをWeb化してペーパーレス化したいというニーズは少なからずあるのではないでしょうか?
今回はそんな、Web請求書システムの基本情報について紹介します。
Web請求書システムってなに?
端的に言えばWeb請求書システムとは「従来紙によって作成されていた請求書をWeb上(主にPDF文書)で作成し、かつWeb上で取引先に送付する」というものです。メールで送付する請求書ともまた違い、Web請求書システムではあくまでシステムを介して請求書が送付されます。
取引先はゲスト用のインタフェースから、請求書の閲覧やダウンロードができるということです。
メールで送る請求書とは何が違う?
請求書をPDFで作成し、メールで送付するという企業は多いかと思います。請求書の電子化という視点では十分ですし、メールという電子ツールを利用すれば即日送付することも可能です。
ですので、Web請求書システムはいらないという意見もあるでしょう。では、メールで送る請求書とWeb請求書システムで送る請求書では何が違うのでしょうか?
第一にセキュリティ性の違いがあります。電子メールというのは不特定多数のサーバを経由して送信されるので、セキュリティ性の観点からあまり重要な文書を送付するのには向いていません。皆さんが思っている以上に、送受信データを簡単に傍受されてしまいます。
一方Web請求書システムはシステムベンダーが運営するデータセンター、あるいはクラウドサーバ上に請求書が保管され、そこから閲覧やダウンロードがなされます。電子メールに比べて経由するサーバが一つで済み、かつセキュリティ対策の取れた環境に置かれるので、データを傍受されるリスクが低減するのです。
次にメールで多い誤送信ですが、Web請求書システムを利用することで誤送信を防止することができます。たとえ取引先を間違えて請求書を送信してしまったとしても、完全に送付されるのではなくシステム上に保管されているので、請求側からデータを削除することも可能です。
メールでは一度送信してしまえば後戻りはできないので、誤送信によって企業の信頼性を失ってしまうケースも少なくありません。
Web請求書システムが人気の背景
2005年に「e-文書法」が施行されて以来、多くの企業が文書電子化を取り入れてきましたが、経済全体で言えば非常に小さな規模での電子化が進んでいました。次第にクラウドサービスやITソリューションの発展に伴い、文書電子化の基盤が整えられてきたことで中小企業にとっても電子化の敷居が低くなり、現在の人気に至っています。
e-文書法とは?
正式名称を「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」をいい、それまで紙文書での保存を前提としてきた法定保管義務のある書類を、電子データによる保存を許容したという制度です。
省令 |
財務省令の国税庁告示に定められた要件 |
厚生労働省の省令に定められた要件 |
対象 |
契約書、領収書(3万円未満)および これらの写し、請求書、注文書、見積書など |
診療記録など、厚生労働省の定める書類 |
解像度 |
200dpi (8ドット/mm)以上 |
診療等の用途に差し支えない精度 |
カラー |
24bitカラー(RGB 各色256 階調)以上 |
なし |
e-文書法にのっとればこれまで電子化が不可能であった文書を電子化し、ペーパーレス化によって大幅なコスト削減を狙うことができます。施行当時の経団連の試算によると紙文書の年間管理コストは3,000億円にものぼるとされています。
参考:「文書の電子保存について」
中小企業では3,000億円といかなくとも、年間で数千万~数億ほどの管理コストを削減できる可能性があります。
2015年の要件緩和によりさらに大幅な電子化が可能に
2015年9月31日にはe-文書法の要件が緩和されたことで、さらに広範囲の文書を電子化できるようになりました。
≪e-文書法要件緩和のポイント≫
- 額基準を廃止
- 領収書、契約書の全てをスキャナ保存の対象にすることが出来る
- 内部統制を担保するための社内規程整備と適切な事務処理が必要
- 関連帳簿の電子帳簿保存法の承認は不要
- 入力者に関する情報の保存が必要(ユーザID等。電子署名法で規定された電子署名は不要)
- タイムスタンプは必要
- 大きさ情報の保存不要
- カラーもしくはグレースケール
[SMART_CONTENT]
Web請求書システム導入を検討すべき企業とは
Web請求書システムは導入することで様々な効率化・コスト削減効果のあるITツールですが、必ずしも導入すれば効果が出るというわけではありません。ですので、Web請求書システムを導入する前に、本当に必要かどうかを検討する必要があります。
ここでは参考までに、Web請求書システム導入を検討すべき企業の特徴について紹介します。
紙文書が多すぎて保管スペースがない
請求書や見積書など、あらゆる書類を紙文書として保管している企業では、保管スペースに困っている企業も多いでしょう。「紙文書を大量に保管しているキャビネットの床が抜けた」という企業もいるほどです。
こうした企業では「保管スペース」が足りないという問題以前に「管理コストがかかり過ぎている」という問題があります。
社員が目的の書類を探すのにも一苦労で多くの時間を費やしたり、定期的な書類整理にかかる時間も計り知れません。現在このような環境に悩んでいるという企業では、Web請求書システムを導入することで大幅な管理コスト削減と、業務効率化が得られます。
請求書発行がいつも遅れてしまう
請求のタイミングは取引先によって異なるのが基本です。しかし、社内での請求書発行のタイミングが異なるために、毎度発行が遅れてしまう取引先が生じているという企業も少なくありません。
取引先からすれば「できるだけ早く請求書を受領して処理を行いたい」というのが心情ですので、請求書発行が遅れているという事実は取引先との関係性を維持する上で阻害にしかならないでしょう。
Web請求書システムを導入することで、異なる請求書発行のタイミングにも柔軟に対応し、発行の遅れを無くして取引先と良好な関係性を築いていくことができます。
[RELATED_POSTS]
まとめ
皆さんの企業でもしも、紙文書の保管スペースや請求書発行の遅れといった問題があればWeb請求書システムをぜひ検討してみてください。導入によって得られるコスト削減や業務効率化効果は想像以上に大きいはずです。
また、Web請求書システムを単体で導入するのではなく、ERP(統合基幹業務システム)の一環として導入するのも非常に効果的です。ERPで全体最適化を行いつつ請求書発行や請求業務を効率化できるので、システム単体として導入するよりも大きなメリットを得られるでしょう。
- カテゴリ:
- 会計
- キーワード:
- 会計ソフト