RFP(提案依頼書)は、システム導入やリプレイスなどにおいて、ベンダーからの提案を受けるために欠かせない重要書類です。本記事では、RFPを効率的に作成するための注意点を解説するとともに、無料でダウンロード可能なサンプルも紹介します。書き方に悩んでいる方はぜひ参考にしてください。
RFP(提案依頼書)の無料サンプルを紹介
RFPを効率的に作成するには、実際の項目や書き方がわかるサンプルや雛形などを参考にするのが有効です。ERP(統合基幹業務システム)導入を想定したRFPサンプルが無料で用意されているので、ぜひ活用してみてください。
このサンプルは、全世界で4万社以上が利用しているクラウドERPシステム「NetSuite」に基づき、提供元の企業であるOracle社が制作しているものです。システム導入を検討する企業にとって参考になる内容が多く盛り込まれています。
RFPは「提案を依頼する」ための書類
RFP(Request for Proposal)とは、日本語で「提案依頼書」と呼ばれる、「提案を依頼する」ための書類です。企業がシステムやサービスを導入する際、複数のベンダーやSlerにRFPを送付、もしくは自社ホームページなどで全体公開し、それぞれ提案を受けます。提案内容の比較により、自社にとって最適なソリューションを選定可能です。
あらかじめ前提条件や評価基準を統一するため、寄せられた提案を同一条件で比較できるのがRFPの大きなメリットです。また、要望を口頭ではなく書面で伝えることで、伝え漏れや認識の食い違いといったトラブルの防止にもつながります。
自社と各ベンダー間で認識の統一を図るためにも、RFPは欠かせない書類です。
RFPに必要な項目
RFPを作成する際には、一般的に次の項目を盛り込みます。
- 本書の目的
- プロジェクトの背景
- 現在抱えている課題
- プロジェクトの目的
- プロジェクトのゴール
- プロジェクトの範囲
- プロジェクトの方針
- 現在のシステム構成
<提案依頼内容> - 提案依頼内容
<選考の進め方> - 選考の進め方
これらの項目は提案に欠かせない情報をベンダーに提供し、提案内容を具体化させるために必要なものです。具体的な書き方については、次の記事でも詳しく解説しているので参考にしてください。
全体の概要
RFPの冒頭部分には、プロジェクト全体の概要を記します。各ベンダーなどから最適な提案を受けたいというRFPの趣旨を簡単に記載したのち、システム導入の背景や現状の課題、導入の目的やゴール(目指す成果)を明示しましょう。また、プロジェクトでベンダーに求める提案の範囲や方針も定めておく必要があります。
この全体の概要は、ベンダーなどに対し自社が求める要件を理解してもらう部分です。シンプルかつ明確に伝えることで、ベンダーは発注側のニーズに対応したソリューションを用意しやすくなります。
例えば、上で紹介しているRFPサンプルでは、企業の現行システムの限界や課題を具体的に示し、それらを解決するために新たなシステム導入をしたいという目的が明確に記載されています。また、プロジェクトのゴールとして、データの統合管理や業務の効率化、従業員の負担軽減などが設定されています。
提案依頼内容
提案依頼内容とは、提案書に記載してほしい情報項目を発注元が提示する部分です。提案システムの概要やプロジェクト体制、進行のスケジュールなど、提案を比較するにあたり知りたいと思う情報、ベンダーに記載してほしい情報の項目を明確に記載します。
一般的に、用意しておくとよい項目は以下のとおりです。
- 会社・組織情報
- 提案システム概要
- システム構成
- プロジェクトスケジュール
- プロジェクト体制図
- プロジェクトマネジメント方法
- 会議体一覧
- サポート体制・運用方法、SLA
- 納品物一覧
- ドキュメントサンプル
- 概算費用
- 契約条件
これらの項目が明示されていることで、ベンダーが的確な提案書を作成しやすくなります。ほかにも自社の特殊事情など、提案に必要と思われる情報があれば別途記載しましょう。
選考の進め方
RFPを公開した後はベンダーからの提案を受け、選考プロセスに移ります。受発注者双方が余裕を持って進められるよう、選考スケジュールや提出先の情報、提案評価過程などを整理しておくことが大事です。
一般的に、RFPを公開してから提案書を提出してもらうまでには、2〜3週間程度かかります。ベンダーの意見や状況を反映しつつ、現実的で無理のないスケジュールを設定しましょう。提出期限だけでなく、選考結果の通知日、メールや郵送など選考結果の通知方法も明確に伝えます。
同様に、提案書の提出先も明示しておきます。郵送先の住所やメールアドレス、データの送受信に使用するWebプラットフォームなど、提出方法を具体的に記載しましょう。電子ファイルでの提出を求める場合は、PDFやWord、PowerPointなどのファイル形式やファイルサイズの制限、パスワードなどのセキュリティ対策なども記載するのが理想的です。
また、RFPの選考過程では、提案の評価基準を明確かつ透明にしておくのも重要です。評価基準が曖昧だと、適切なベンダーを選定できないだけでなく、自社の課題解決に特化した提案も受けにくくなります。「コスト」「機能」「信頼性」「納期遵守」などの評価項目を明示し、それぞれの重要度を伝えておくことが、より具体的かつ適切な提案を得るためにも欠かせません。
さらに、参考としてベンダーに提供するデータや情報がある場合、それらの取り扱いについても取り決めます。守秘義務契約(NDA)の締結や、情報の取り扱いに関するルールの明示が必要なケースは多いため、データのセキュリティやプライバシーに関しても十分な配慮を行いましょう。
RFP作成時の注意点
サンプルに沿ってRFPを作成する際、プロジェクトの成功を確実にするためには次の点にも注意しておく必要があります。
目的や要望を具体的かつ明確に伝える
RFPに記載する目的や要望は、できる限り具体的かつ明確にすることが大切です。例えば「経営判断のためのデータやレポートをオンデマンドで閲覧できる」「今後店舗数が3倍になっても業務プロセスがシンプルかつ統合的に行われる」など、具体例や詳細な要件を提示しましょう。具体性が高いほど、ベンダーとのコミュニケーションエラーを防げて、かつ理想的な提案を引き出せます。また、より現実的な見積りが可能になるのも大きなメリットです。
各部署との連携を重視して作成する
RFPの作成には、関係するすべての部署や部門との密な連携が欠かせません。営業部門や在庫管理部門、経理部門など、システムを利用する各部署の具体的な要望を反映させることで、より使いやすいシステムを導入できます。特に現場のニーズは優先して反映させましょう。現場の声を聞くことをおろそかにしてしまうと、導入しても使いにくく、期待どおりの効果が得られないことがあります。
RFP作成段階で各部署の意見を十分に集約できていれば、システム導入後のトラブルや要件追加のリスクを低減できます。
抜け漏れに注意し、RFP提出後の要件追加は避ける
RFPを提出ないし公開する前に、複数名や複数部署での慎重な確認を行い、要件の抜け漏れがないか徹底的にチェックしましょう。提出・公開後に要件を追加してしまうと、今後の進行に大きな影響を与えかねません。スケジュール遅延やコスト増大といったリスクのみならず、プロジェクトそのものが失敗に終わる可能性も懸念されます。ベンダーとの信頼関係が失われ、訴訟に発展してしまったケースもあるので注意が必要です。
どうしても追加要件が発生してしまう場合は、その内容を必要最小限に留めるとともに、ベンダーに対してあらかじめ追加要件が発生する可能性を伝えておきましょう。受注側の負担を減らす配慮を欠かさない姿勢が大切です。
まとめ
RFPは、システム導入やプロジェクトの成功を左右する重要な書類です。今回紹介した注意点を踏まえ、正確かつ詳細なRFPを作成すれば、ベンダーから最適なソリューションの提案を得られやすくなります。ぜひ、無料のRFPサンプルをダウンロードし、プロジェクトの成功に役立ててください。
- カテゴリ:
- RFP
- キーワード:
- RFP