経営のために蓄積した情報を活用するという認識は今や当たり前です。中小企業だけでなく、都心から遠く外れた温泉施設でさえビッグデータを活用し経営を改善させています。そんな中注目を集めているITシステムがERP(Enterprise Resource Planning)です。1990年代後半に普及がスタートしたERPも、すでに大企業のためのITシステムではなく中小企業にとっても欠かせないものになりました。
ERPを導入することで企業全体の情報を一元管理し、BIツールやデータマイニングツールと組み合わせることで情報活用を起点とした経営を実現します。
しかしながら、ERPのメリットの認知が上がる一方で、導入に失敗する企業も少なくありません。ERPはオンプレミスにせよクラウドにせよ、他のITシステムに比べて導入プロジェクトや投資が大規模になるので、失敗による打撃は大きいでしょう。
そこで今回はERPの導入で失敗しないためのポイントについてご紹介します。
ポイント①ERP導入の目的を定める
ERPは企業が直面する多くの経営課題において幅広いソリューションを提供します。かといって「ERPを導入すべきかどうか?」というシステムありきの論点で検討することは、失敗の原因になります。「何のためにERPを導入するか?」に重点を置いて検討し、導入の目的を明確にすることが大切だからです。
そのためにはまず現在のビジネスのどこに問題が生じボトルネックとなっているのかを把握します。さらにそれぞれの問題に対してERPがどのようにアプローチ、期待できる効果かを整理していきましょう。
目的は複数あって構いません。そのすべてが最終的にERPで繋がるのであれば、導入による効果は高いでしょう。
「ERPを導入すべきかどうか?」はもはや論争する余地もなく、「何のためにERPを導入するか?」を考えることでより建設的なERP導入を実現できます。
ポイント②ERPのステークホルダーを明確にする
ステークホルダーとは「利害関係者」のこと。では、ERPにおけるステークホルダーとは誰でしょうか?
経営のためのITシステムと称されることの多いERPなので経営層の人間をイメージする方が多いでしょう。しかし、ERPで本当に重点を置くべきステークホルダーはユーザー部門です。なぜならユーザー部門の利用無くしてはERPは成り立たず、それは結果として経営のためでは無くなってしまうからです。
ERPといっても企業全体の業務を完全にカバーするわけではないので、ステークホルダーになるであろうユーザー部門をまず明確にします。ERP導入担当者はその上で経営層の要求をのみながら、ユーザー部門と連携を取り機能要件と向き合っていくことが大切です。
時には予算の関係でユーザー部門の要求に応じれない場合もあるでしょう。そうした際も、ユーザー部門と密に連携が取れていれば解決できる問題も多いのです。
米国の調査会社であるPanoramaによれば、61.1%の企業においてERP実装が予想よりも長くかかり、74.1%のERPプロジェクトが予算を超過しています。この原因の多くはユーザー部門との連携と経営層との調整が甘く、ERP要件定義があいまいなためです。
引用:Panorama「Panorama Consulting Group Issues 2011 ERP Report」
要件定義による失敗を避けるためにもステークホルダーの明確化、ユーザー部門との連携、経営層との調整を徹底しましょう
ポイント③ブレインストーミングで機能を評価する
ERPを導入する企業の3社に1社が導入する製品のデモを確認せず、約4社に1社が最初に検討したERPを導入していると言われます。これはERPが持つ機能を正確に評価していないという状況の現れです。結果として、そのほとんどの企業が導入後のカスタマイズが必要になり、予算超過・カスタマイズによるバグや障害・ERPの塩漬け状態・保守サポート費用の増大といった問題が生じています。
こうした問題を回避するためにも企業は、導入するERPが提供する基本機能とカスタマイズの必要性を十分に評価し、本当に導入すべきERPを選ばなければなりません。
ERP導入の際にはカスタマイズが無いに越したことはありません。しかし、現在のニーズだけでなく将来の要件変更に応じて、カスタマイズが可能な柔軟なERPを選ぶということも大切です。
そこで人気を集めているのがクラウドタイプのERPです。たとばNetSuiteはユーザー向けに独自の開発プラットフォームを提供しており、ユーザー自身がNetSuiteをカスタマイズして要件を満たすことができます。もちろんカスタマイズによるバージョンロックも無く、ERPの塩漬け状態も避けられます。カスタマイズしたからといって契約料金が変わることもないので、費用の増大も避けられるでしょう。
今後ERPを導入する企業は、導入担当者、経営層、ユーザー部門、ERPベンダーを含めてブレインストーミングを徹底して行い導入するERPについて完全に理解することが大切です。
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ポイント④データ移行計画
導入したERPをいち早くビジネスで活用するために重要な作業がデータ移行です。特に既存のITシステム環境をERPで刷新する場合は、すべてのデータをERPに移行できるよう整えておく必要があります。
多くのERP導入プロジェクトにおいてデータ移行に工数見積もりが甘くプロジェクト遅延を発生させています。そこで、まずは重要度の高いデータから優先的に移行し、それ以外のデータは段階的に移行していくよう計画してください。
一度にすべてのデータを移行しようとすると工数が肥大化しプロジェクトが遅延します。
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ポイント⑤ユーザー部門のマインドを変える
だれもが慣れ親しんだ業務を変えられてしまうことを嫌います。ERPを導入することは一種の破壊を生み出し、新しい業務プロセスを構築していくことと同じです。なのでERP導入によるユーザー部門の心理的負担は想像以上です。
そこでユーザー部門のマインドを変えることが重要になってきます。ERPによる変革は組織だけでなく従業員一人ひとりにとっても大切な変革なのだ、ということを十分に理解しもらうのです。なので導入担当者はユーザー部門をステークホルダーだと捉えて、理解を得るために注力すべきです。こちらが真剣かつ誠実にERP導入の理由や目的、さらに従業員にとってもメリットを説けば理解してくれる人も多いでしょう。
もちろん有言実行でユーザー部門に説いたメリットは実現しなければなりません。そうでなければ組織としての信用を失い、結果としてERP導入は行き詰ってしまうでしょう。
ERP導入成功のためには、ユーザー部門の心理的負担をフォローしつつマインドを変えていくことを意識しましょう。
今回ご紹介するERP導入ポイントは以上です。ERPは広範囲に様々な効果をもたらすITシステムですが、その分導入の難易度も高いでしょう。これらのポイントを念頭に置きつつ、失敗しないERP導入を目指していただきたいと思います。
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