月次で実績管理を行っている企業73.2%。予算管理を行っている企業30.1%。これは、株式会社エフアンドエムの中小総研による「管理会計の実態調査」による数値です。
管理会計における予算管理は、予算編成に対する実績を評価して、現状維持でいいのか、あるいは軌道修正するのがいいのかを判断するための指標になります。上記の数値からして、正しい予算管理を行えている企業は半分にも満たない状態です。
多くの企業が予算がない状態で実績を評価している、すなわち的なくして矢を放ち当たったか当たっていないかを判断しているような状況です。
また、事業が利益を生み出すための損益分岐点を分析している企業は、26.2%とさらに低い数値となっています。
中小企業においていかに管理会計が取り入れられていないかが見て取れますね。
最近ではこうした状況に危機感を抱いてか、中小企業の“管理会計システム”導入が進んでいます。管理会計をシステム化することで効率的かつ簡単に管理業務を行い、経営判断に必要な情報を手にするのです。
しかしそれも、適切な管理会計システムの導入あってこそ。自社にフィットしない管理会計システムを導入してしまっては、せっかくの導入プロジェクトも水の泡というものでしょう。
そこで今回は、初めて管理会計システムを導入する企業に向けて、導入のポイントを紹介していきます。
ポイント1.「改善」「情報」「タイミング」を明確に定める
管理会計とは一言でいえば、企業の経営判断を正しく下すために、様々な切り口から会計情報をまとめることです。組織別、事業別、部門別、顧客別、製品別にP/LやC/Fを作成して分析・評価するのが一般的です。
しかし、管理会計において経営者が情報を求めるタイミングと、求める情報は違います。言い換えれば、経営者が意思決定を下すための情報の「軸」「粒度」「タイミング」は企業によって異なるのです。
このため、経営者が必要な「情報」と「タイミング」を予め定義しておかなければ、当然正しい製品選定ができません。また、管理会計を取り入れて「何を改善したいのか?」ということも明確にしておくことで、より具体的な選定ができるようになります。
ポイント2.導入後の運用計画を立てる
管理会計システム導入後は、システムをいかにスピーディに現場に定着させていくかが重要になります。定着が遅くなってしまえばそれだけ導入コストがかかってしまい、また現場従業員の混乱を招いてしまう結果になります。
従って導入後の運用計画は、導入プロジェクトが始動した初期段階で立てておかなければなりません。
基本としては管理会計システムをいきなりフル活用するのではなく、中心機能から使い始め、徐々に既存業務からシステムへと移行していくのがポイントです。少しずつ「使い慣らしていく」ことで現場の混乱を避け、スムーズなシステム化を実現することができます。
しかしこれはあくまで基本的なポイントですので、環境によってはこの限りではありません。自社の管理会計業務を改めて洗い出した上で、どのように定着させていくことがベストなのかを考え、運用計画を立てていきましょう。
ポイント3.機能要件を定義し製品選定を行う
既に管理会計を取り入れている企業は、現状の問題点を洗い出すことで機能要件を定義していきます。何が問題で、どう解決するのか、そして最終的に何を実現したいのかを考えることで自然と要件が固まっていくでしょう。
システムと同時に管理会計システムを導入するというような企業は、まず管理会計について熟知した上で、何を目指すのかを明確にしていきましょう。
機能要件を定義することは、すなわち製品選定時の基準を作ることです。自社にとって適切な管理会計システムを導入できるかどうかは、このポイントで大きく左右するので慎重に機能要件を定義してください。
ポイント4.トライアルを実施して実際の使用感を確かめる
管理会計システムを導入するにあたって、トライアルやデモを活用しない企業は多いでしょう。その分導入期間を短縮できますし、製品選定を慎重に行ったという自負が大方の理由です。
しかし、トライアルやデモを活用せずに導入し、失敗してしまったというケースは往々にしてあります。なぜならば、いかに慎重に選定した製品であっても、実際に導入してみない限りは本当の導入効果を知ることはできないからです。
導入して初めて「期待と現実のギャップ」を知ってからでは遅いのです。本格的に導入する前に、必ずトライアルやデモを活用してこのギャップを限りなく埋める作業が必要となります。
そのためにトライアルやデモを活用する時間は惜しまず、その製品を十分に評価してください。
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ポイント5.適宜導入パートナーのアドバイスを受ける
今では管理会計システムも複雑な機能体系を取っているものも多いので、企業独自に導入するということは少ないと思います。大半の企業が導入パートナーのアドバイスのもと、管理会計システムを導入していくでしょう。
信頼できる導入パートナーを選ぶということが大前提ですが、彼らは管理会計システム導入のいわばプロです。初めて管理会計システムを導入する企業にとっては難しい“客観的視点”を持っているので、自社の管理会計システム導入を心強くサポートしてくれます。
ですのでユーザー企業も導入パートナーを信頼し、適宜アドバイスを素直に聞き入れるということも大切です。
ポイント6.他システムとの連携性を事前に確認する
管理会計システムは単体でも導入効果の高いITツールです。システムによって管理会計を実現させるということは、部門責任者の負担軽減や意思決定の迅速化など、様々な効果があります。
ただし、管理会計システム本来の導入効果を引き出すためには、他システムとの連携が欠かせません。財務会計システムと連携することで経理業務を効率化したり、その他のシステムからデータを取り入れたり、会計情報を含めた様々な情報を一元的に管理したりと、連携してこそ発揮される効果というものがあります。
従って管理会計システム導入時は既存システムとの連携性を考慮した上で、最適なものを選ぶことも重要です。
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ポイント7.効果検証を繰り返し管理会計を改善していく
最後のポイントは「PDCAサイクルを繰り返す」こと。管理会計システムを導入しても、初めから最適化された環境を実現できることはほとんどありません。事前に立てた運用計画に沿って効果検証を繰り返していくことで、自社にとって最適な運用方法というものが見えてきます。
地味で根気のいる作業ではありますが、導入後は最も重要なポイントだと理解して管理会計システム運用に臨んでください。
まとめ
全7ポイントで紹介した管理会計システムの導入ポイントですが、このポイントに加えて企業独自のポイントを盛り込んでいくことで、より最適化された管理会計システム導入を実現できます。
初めて管理会計システムを導入する企業は、今回紹介したポイントを実践し、適切な導入を目指していただきたいと思います。
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- 経営/業績管理
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