今回紹介するのは原価管理システムの機能についてです。適切な原価管理を実現することで、適正価格での製品販売や業務効率化効果があり、原価管理システムはこれを支援してくれます。
原価管理システムを導入して正しい原価管理を行うためには、まず自社にフィットした原価管理システムを選ぶ必要があります。そのためには原価管理システムの機能を理解しておかなければなりません。
原価計算:複数の原価計算方法に対応
原価計算とは、原価管理を実現するために重要な“ツール”であり、様々な原価情報を可視化するために用います。原価計算はその用途に応じて、次のような種類があります。
個別原価計算と総合原価計算
個別原価計算は個々に製品に対する原価を算出します。顧客からの発注に応じて生産する、いわゆる受注生産の場合は個別原価計算を使用することがあります。
一方総合限界計算とは、ある一定期間にかかった費用とその期間に製造した製品数で割り出すものです。大量生産し、かつ同一価格で販売するような場合はこちらの限界計算方法を使用します。
IT業界におけるソフトウェア開発の例で例えると、顧客からの仕様にもとづいてソフトウェア開発を行うのが個別原価計算。パッケージソフトウェアとして定価を付けて販売する場合は総合原価計算を使用します。
全部原価計算と部分原価計算
全部原価計算とは、製造に使った費用のすべてを原価として計上する方法です。対して部分原価計算とは費用のすべてではなく、部分的な費用のみを計上する方法となります。
会計上認められている方法は前者の全部原価計算です。つまり通常の限界計算は、すべて全部原価計算によって計上します。部分原価計算は社内において、特定の管理目的で主に使用されています。
実際原価計算と標準原価計算
実際に発生した原価にもとづいて計上する方法が実際原価計算であり、一つの製品に要する費用の目安金額を設定するのが標準原価計算です。
会計上認められているのは実際原価計算なので、原価計算では前述した全部原価計算と並行して使われています。
この他にもさらに細分化された原価計算が多数存在するのが特徴です。
こうした原価計算を人手(Excel)によって実現することもできます。しかし、原価とは様々な費用の集合体ですので、すべて人手によって計算することは困難です。データの正確性に欠けてしまいますし、手間も大きいのが難点です。
原価管理システム上では、必要情報を入力するだけで自動的に原価を計算してくれます。さらに種類別の原価計算も可能になるので、正確性の高いデータで生産計画に反映することが可能なのです。
原価差異分析:有利差異、不利差異を正確に把握する
原価差異とは予想原価と実際原価の際であり、“有利差異”と“不利差異”という2つの種類があります。
有利差異とは予定原価よりも実際原価の方が低い場合を指し、不利差異とは実際原価の方が高かった場合を指します。一見ただの結果論にも思えますが、実は原価管理において差異分析は非常に重要な役割を持ちます。
不利差異は「予定よりも多くのコストがかかった」ということなので、当然改善策を打ち出す必要があります。逆に有利差異は「予定よりも少ないコストで済んだ」ということですが、ここで喜んではいけません。
有利差異も不利差異も、いずれも予定原価と実際原価に違いがあったということです。多少の差異ならばそれを維持することに努めればよいのですが、大きな差異があった場合、たとえ有利差異だとしても改善策を打ち出す必要があります。
有利差異でも大きな差異があれば、それは「原価予測精度が低かった」ということです。精度が低いと、次回は大きな不利差異を生み出してしまう可能性があります。
原価管理システムの差異分析機能を利用すると、常に正確な原価差異を把握することができます。生じた差異に応じて対策案を継続的に立てていけば、原価予測精度を高め、パフォーマンスの高い原価管理を実現することができます。
[SMART_CONTENT]
損益計算:システム上での損益計算で予算編成を加速する
予算編成を行う際に必ず行うことが損益計算です。製品別損益計算や部門別損益計算、それの計算書を集計して最終的な予算編成を組んでいきます。問題は、予算編成にかなりの時間を費やしてしまうところです。
部門ごとに計画損益計算書を作成してもらい、それを集計した上で仮予算編成に反映させます。そこからさらに修正し、再度部門に落とし込み、新たに部門別予算を提出してもらいます。
このように通常多大な時間を費やして行われる予算編成ですが、原価管理システムの損益計算を活用すれば、システム上で迅速な予算編成を行うことができます。予算編成を迅速化できれば四半期、月次ごとの予算編成も可能になり、さらには適切な原価管理を行えるようにもなるでしょう。
原価シミュレーション:将来的な原価変動リスクを予測し、計画を立てる
原価管理の機能として重要なのが「原価変動リスクを管理する」ことです。原価は常に変動します。原材料の価格や人件費は時代と共に上昇していきますし、日本・世界の経済状況や情勢によっても変動します。
つまり、将来的な原価変動リスクを予測できていなければ、実際に変化が起きたときに対処することができません。それでは競合に後れを取ってしまい競争力まで失ってしまいます。
こうした事態を回避するためにも、原価変動のリスクを考慮し、対応計画を立てなければなりません。
原価管理システムでは、原価シミュレーションにより仕入先を変更したときや、原料費上昇や為替変動などのリスクを考慮した上でシミュレーションを行うことができます。シミュレーション結果をもとに対応計画を立てれば、原価変動リスクが現実になった際も迅速に対応することができます。
アプリケーション連携:生産管理スイートやERPとの連携性を高める
今日、多くの原価管理システムが生産管理スイートやERP(統合基幹業務システム)の一部として導入されています。サプライチェーン管理の一環でもある原価管理は、周辺アプリケーションと連携することで本来の導入効果を発揮します。
このため多くの企業が、生産管理スイートやERPで統合的なシステム環境を導入しているのです。
原価管理システムを単体アプリケーションとして導入する際は、サプライチェーン管理に関係する各アプリケーションとの連携性を確認してください。基本的には汎用的な連携機能を備えていますが、製品によっては既存環境との連携が難しい場合があります。
[RELATED_POSTS]まとめ
細分化すればさらに多くの機能がありますが、原価管理システムで提供されている基本機能は以上の5つとなります。これらの機能をもって、原価管理システムは適切な原価管理を実現し、ひいてはサプライチェーン管理の最適化を支援するのです。
原価管理システム選定時は、第一に基本機能を理解した上で、さらに細かい機能まで把握していきましょう。原価管理システムの機能を把握していればカスタマイズやアドオン開発の必要性について考慮することができるので、より具体的な製品選定が可能です。
本稿によって、正しい原価管理システム導入を実現する企業が一社でも多くいれば幸いです。
- カテゴリ:
- サプライチェーン/生産管理
- キーワード:
- 原価管理