ビッグデータ活用がビジネスにもたらす効果が大きい反面、いくつかの課題があります。こうした課題をしっかりと解決してこそ効果が最大化するでしょう。特に、中小企業では大手企業に比べてこの課題が多いという傾向にあるので十分注意が必要です。
今回はビッグデータ活用と課題から、今後中小企業が取るべき行動について考察していきたいと思います。
急成長の割に成功事例をあまり聞かない
IDC Japanの調査によると2015年の国内ビッグデータテクノロジー/サービス市場規模は947億7,600万円になり、前年比32.3%増という高成長を見せています。また、2020年までに平均年間成長率25.0%で拡大していき、市場規模や2,889億円にまで到達するようです。
ビッグデータ市場は海外に限らず国内でも確実に伸びている市場であり、今後もその傾向は続きます。
にも関わらず、周囲からビッグデータ活用で"売上拡大に成功した”や"マーケティングが成功した”といった話を聞くことは少ないと感じませんか?むしろ「聞いたことない」という方もいるくらいでしょう。
つまりビッグデータというキーワードだけが先走り、市場が成長してしまっているという可能性もあります。これは多くの企業がビッグデータを活用し切れていないというだけであり、十分な効果を得ることができません。
しかし継続的に市場が拡大しているのは"ニーズはある”という裏付けでもあるので、ビッグデータ活用はやはり現代ビジネスのトレンドだと言えるでしょう。
こうした市場拡大と現場とのギャップには、ビッグデータ活用に隠れた課題が潜んでいる原因があるのです。
ビッグデータ活用の課題
ビッグデータ活用が目的になっている
ビッグデータ活用を検討する切り口には、主に2つのパターンがあります。
A:「ビッグデータ活用がきてるから、うちも導入すれば課題解決になるのでは?」
B:「現状優先的に解決すべき○○という課題について、ビッグデータ活用で解決できないか?」
上記2つの切り口は似ているようでまったく違います。どちらがビッグデータ活用に失敗しやすいかというと、パターンAです。
パターンAではまず明確な目的がなく「ビッグデータ活用さえすれば大丈夫だろう」という曖昧な目的なため、正確な分析を行うことができません。いわばビッグデータ活用自体が目的となってしまっているのです。
一方パターンBではビッグデータ活用をあくまで手段と捉え、現状課題を解決するための導入使用と考えています。このように目的が明確になっていることで適切なビッグデータ活用ができるようになるのです。
スモールスタートで分析価値を検証していく
ビッグデータ活用を行う上では分析環境のシステム化や内部体制の確立が必要で、それなりのコストが発生します。しかしビッグデータ活用の導入効果は見えづらい部分もあるので、いきなり全力投球でのシステム化・内部体制の確立はリスクが高すぎます。
だからこそ、まずはスモールスタートでビッグデータ活用の価値を見極めていく必要があるのです。
つまりシステム投資を最小限に抑えて小さいところからビッグデータ活用を始め、効果があれば徐々に拡大していきます。じれったい方法のように感じますがリスクが低く確実性の高い導入方法です。
そのためにも前述したように目的の明確化が重要です。明確な目的があれば製品選定時もかなり絞り込め、スモールスタートに適した製品を選ぶことができます。
限られたリソースを最大限に活かす
ビッグデータ活用が注目されてからというもの世界中でデータサイエンティストという職業に注目が集まり、データ分析人材の争奪戦が加熱していることから人材確保は難しい課題です。
特においそれと人材増加ができない中小企業にとっては、限られたリソースの中で戦っていかなくてはなりません。
人材確保以外に残された選択肢として"データ分析人材の育成”か”データ分析初心者でも利用できる分析環境の整備”でしょう。そして最も現実的かつ堅実な選択は後者です。
データ分析人材を育成するというのは簡単なことではなく、知識もスキルも十分な人材に育てるためにはかなりの時間とコストが必要です。また、ビッグデータ活用のノウハウがない企業でこれを実現するのは難しいでしょう。
それならばその分の時間とコストを分析環境に投資し、最低限の知識があれば誰でもビッグデータ活用ができる環境を整えることの方がよほど費用対効果は高いと言えます。最近ではクラウドサービスによる分析環境の整備により、低コスト化と設備に縮小化が可能なのでやはり最も現実的な方法でしょう。
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中小企業がこれから取るべき行動とは
ここまでの内容を踏まえ、ビッグデータ活用において中小企業がこれから取るべき行動についてまとめていきたいと思います。
ビッグデータ活用はあくまで手段と理解する
限られたリソースを最大限に活用するというのは人材だけの話ではなく、コストに関しても同じことが言えます。リソースが豊潤な企業であれば1度の失敗から学ぶということもできますが、それができない環境ではやはり失敗を避けるべきです。
ですのでビッグデータ活用自体が目的化しないよう、あくまで手段であるとしっかり理解しておく必要があります。
人材確保よりも環境整備
中小企業がビッグデータ活用を行う上で必要なのはやはりデータ分析人材の確保ではなく、誰もが分析を行える環境の整備です。従って導入検討の初期段階から人材確保という選択肢を捨て、いかにして分析環境を整備していくかという点に注力する必要があるでしょう。
最低限の分析知識を付ける
分析環境を整備したからと言って、まったくの知識ゼロでビッグデータ活用ができるわけではありません。ですので担当者はある程度の分析知識をあらかじめ付けておく必要があります。
そしてそれよりも大切なのは、分析結果をマーケティングや経営戦略に活かすスキルと発想の柔軟性です。結局のところ分析結果を"どう活かすか”の世界なので必須条件と言えるでしょう。
クラウドERPでの分析環境を検討
クラウドERPとは顧客管理システムや会計システム、販売システムなどビジネスに不可欠な複数の基幹系システムを一括で導入することができるソリューションです。
これがなぜ分析環境に影響するかというと、クラウドERPでは各システムで連携の取れた環境を同時に導入することができるため、各システムから生成されるデータを一元的に管理し可視化することができるのです。
つまりクラウドERPで組織全体のデータを可視化する分析環境を整えることができます。加えてクラウドサービスとして提供されるので、初期コストダウンと運用管理業務の効率化も狙えるでしょう。
「NetSuite(ネットスイート)」をはじめとしたクラウドERPソリューションの導入をまだされていない場合は、導入の検討をされてみてはいかがでしょうか。
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まとめ
いかがでしょうか?ビジネスにおいて新しい価値を生み出し、売上拡大や顧客獲得に繋がるかもしれないビッグデータ活用ですが、まだまだ多くの課題が残されています。特に中小企業ではその課題が多いので、ビッグデータ活用に踏み出すときは慎重さが重要でしょう。
ただし正しく活用できれば導入効果は非常に大きいので、ぜひクラウドERPなどのソリューションを活かしつつビッグデータ分析を実現していただければと思います。
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