サステナビリティレポートとは、企業が投資家に向けて用意する報告書のことを指し、SDGsやCSR、ESGなどとも関連しています。サステナビリティレポート作成の際は、これらとの関係を把握しておくことが大切です。本記事では、企業の発展にも役立つサステナビリティレポートの基礎知識と、成功させるためのポイントを紹介します。
サステナビリティレポートとは
サステナビリティレポートとは、持続可能な社会を実現させるために、企業が取り組んでいる活動をまとめた報告書のことを指します。サステナビリティレポートの提出は、法律で義務付けられているわけではありません。しかし、大企業を中心に、近年多くの企業が自主的にレポートの提出を行っています。
そもそもサステナビリティレポートが生まれた背景には、1980年代頃に企業が環境問題に対する責任を問われ始めたことが挙げられます。企業活動によって環境が破壊される懸念や、それによりかえって企業活動に影響が出るという懸念がされるようになったためです。また環境問題だけでなく、社会問題についても注目され始め、これらの問題に対する企業の社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility)が重要視されるようになりました。そこで、CSRに基づく企業の社会的な活動をまとめた報告書として、サステナビリティレポートが発行されるようになりました。海外では1990年代、日本では2000年代からサステナビリティレポートが作られています。
また、現在では環境・社会・ガバナンスに関する問題を、それぞれの頭文字を取ってESG(Environment、Social、Governance)と呼んでおり、サステナビリティレポートはこのESGに対する企業の取り組みを判断する材料としても使われています。
サステナビリティレポートに関連して、「SDGs(Sustainable Development Goals)」という言葉もあります。SDGsは、持続可能な開発目標という意味で、2015年に国連サミットで定められた「2030年までに持続可能で、よりよい世界を目指すための国際目標」のことをいいます。SDGsはサステナビリティレポートより遅く作られた概念ではありますが、企業の持続可能性をよりわかりやすく伝えるものとして、近年ではSDGsを取り入れたサステナビリティレポートが作られることもあります。
サステナビリティレポートと統合報告書の違い
サステナビリティレポートと同様に、社会や環境について記載される報告書に、「統合報告書」というものがあります。これらの違いは、報告書の内容と想定している読者です。
サステナビリティレポートは、社会や環境に対する貢献を記載しているもので、ステークホルダーやESG評価機関が主な読者です。一方で統合報告書は、企業が長期的な価値をいかにして創造していくかを記載したものでESG情報と財務報告を統合したもので、主に投資家に読まれることを想定しています。どちらも会社の社会的信用を得るために大切な報告書です。日本では統合報告書が主流ですが、サステナビリティレポートも発行することで、ESGに対する意識の高さと具体的な取り組み内容をより多くの関係者にアピールしている企業も増えています。
[RELATED_POSTS]サステナビリティレポートが重要視される背景
では、サステナビリティレポートはなぜ重要視されているのでしょうか。
その裏には、サステナビリティレポートが生まれた背景と同様に、企業の経済活動によって環境問題や貧富の差などの問題がますます広がり、このままでは巡り巡って経済的にもよくないのではないかと懸念されていることが挙げられます。その結果、各企業が社会や環境に対する社会的責任として、どのような役割を果たしているかという情報を開示する必要性が高まってきたのです。
また近年では、サステナビリティレポートやサステナビリティサイトなどを元に、たとえばMUFGなど第三者からスコアリングやランキングが発表されることもあります。このようなことを通して企業の評価がなされる場合もあるため、サステナビリティレポートの発行はさらに重要性が増しています。
サステナビリティレポートはESG投資家の判断材料になる
ESG投資家とは、財務情報だけでなく、企業がいかにESGに力を入れているかを基に投資を行う投資家のことをいいます。近年ではこのESG投資家が増えており、企業は投資家にESGへの取り組みをアピールすることが求められています。
そもそも投資においてESGが重要視されている背景には、今後の企業の長期的な発展や投資に値する価値を、企業の社会や環境に対する活動から評価できると考えられていることが挙げられます。そこで、ESGに対する取り組みをより詳しく投資家にアピールできるものとして、サステナビリティレポートが活用されているのです。
サステナビリティレポートの作成は企業の義務ではありません。しかし、企業のESG活動を公的にアピールし、社会的な信用を得て投資家から関心を向けてもらえるようにするものとして、サステナビリティレポートの発行は欠かせないといっても過言ではありません。
サステナビリティレポートを成功させるには
では、自社をより効果的にアピールするサステナビリティレポートはどのように作ればよいのでしょうか。ここでは、サステナビリティレポート作成の際に気をつけたいポイントをご紹介します。
まず大切なのが、経営層も含めて全社的な取り組みとして社員にも認知させることが重要です。それには経営層がサステナビリティレポートの発行が自社にとってどれだけのメリットがあるかをよく理解し、ESGに関して自社の現状がどうなっているのか、成功に向けて何が必要であるかを把握することです。
とはいえ、全社的にサステナビリティレポートの作成に取り組むことは難しいため、専門チームを作ることは欠かせません。スケジュールを作成して部署横断で作業が進められるようにし、ときには利害関係者からニーズを聞き出す機会を設け、連携して進めることも大切です。
また、サステナビリティレポートを作るにあたって、ESGに関する目標も立てなければなりません。これは現実的で達成可能な目標である必要があります。その方が結果に対する信頼性が高まります。最後に、発行後は社内外にヒアリングを行い、反響を確認するとよいでしょう。
サステナビリティレポートの書き方や作り方で悩んだ際には、世界的に利用されているガイドラインを利用するのがおすすめです。GRI(Global Reporting Initiative)が提供しているガイドラインや、ISO(International Organization for Standardization)が規定したISO26000などのガイドラインを参考にするとよいでしょう。
まとめ
サステナビリティレポートは、社会問題や環境問題に関して、企業が持続可能な社会のために取り組んでいる活動内容をまとめた報告書のことを指します。法律で発行が義務付けられている訳ではありませんが、企業が社会的な信用を得て、投資家などから高い関心や信頼を得るために必要とされています。
まだサステナビリティレポートの発行に取り組めていないなら、企業の発展のためにも組織的に取り組むことをおすすめします。取り組む際には、今回ご紹介した成功のポイントを参考にしてみてはいかがでしょうか。
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