サプライチェーンマネジメント(SCM)とは?基礎から導入方法までを徹底解説!

 2018.11.21 

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サプライチェーンとは、製品を製造し販売するまでの一連の流れを指す言葉です。製品の質を一定に保ちつつ、生産性を向上させるためには、サプライチェーン全体を最適化する「サプライチェーンマネジメント(SCM)」が欠かせません。本記事では、サプライチェーンマネジメントの意味や目的などの基本知識に触れながら、導入のメリットや課題などを解説します。

サプライチェーンマネジメントとは?

サプライチェーンマネジメントを理解するためには、まず「サプライチェーン」という言葉の意味を知っておく必要があります。ここでは、サプライチェーンの概要に触れながら、導入の目的や期待できる効果などを紹介します。

サプライチェーンマネジメントとは?

サプライチェーンとは?

サプライチェーンとは、原材料を調達し、完成した製品を消費者のもとに届けるまでの一連の流れを指す言葉です。製品を製造するとき、まずは他社から必要な部品や材料などを仕入れ、加工したり、組み立てたりするプロセスを踏みます。製品が完成したら小売業者に買い取られ、さまざまな方法で消費者のもとに届くことになるでしょう。このように、製品の製造・販売は必ずしも自社だけで行うわけではなく、工程によって多くの業者が携わることがあります。

サプライチェーンの特徴は、自社の業務に加え、他社との取引による受発注、製品の入出荷といったモノの流れにも着目し、製品が販売されるまでのフロー全体をとらえることです。さまざまな工程があり、場合によっては原材料の調達などで予想外の時間がかかることもあるでしょう。状況にかかわらず、常に質の高い製品を生産し、需要に見合った適切な数量を供給し続けるためには、サプライチェーンを最適化する仕組みをつくることが大切です。

サプライチェーンマネジメントの目的

サプライチェーンをコントロールし、フロー全体を最適化できる仕組みをつくることを「サプライチェーンマネジメント」といいます。業務プロセスを見直し、無駄をなくしたり、タイムラグを最小限に抑えたりすることで、業務効率の向上が期待できます。

サプライチェーンマネジメントの目的は、製品を製造・販売するまでに必要なモノや情報、お金の流れを管理、最適化して効率化を図ることです。生産性が向上するため、最終的には利益の向上が見込めます。各プロセスを個別の部署や企業が管理しているケースも見受けられますが、場合によっては必要な情報を得られず、在庫過剰や機会損失などを招いてしまう可能性があります。サプライチェーンマネジメントは、携わる部署や企業が必要な情報に素早くアクセスし、包括的に管理できる仕組みをつくることが大切です。

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サプライチェーンマネジメントが注目された背景

サプライチェーンマネジメントという言葉が最初に使われたのは1982年と、今から40年以上昔のことです。

米国のバージニア州マクリーンに本社を構えるコンサルティング会社、ブース・アレン・ハミルトンのK.R.オリバーとM.D.ウェバーが最初に用いたと言われています。しかし、サプライチェーンマネジメントという言葉をよく耳にするようになったのはごく最近のことではないでしょうか?その背景には、ビジネスのグローバル化や労働力人口の減少、IT技術の進歩、ニーズの多様化があります。以下で各項目について解説します。

ビジネスのグローバル化

近年、ビジネスのグローバル化により製品の販売エリアはますます広がりつつあります。海外の企業が日本に拠点をつくるケースは多く、反対に日本の企業が海外に進出するケースも少なくありません。海外の拠点で現地生産をしたり、輸出先で製品を組み立てる生産方式を取り入れたりと、コスト削減や効率化のためにグローバル化を展開する企業も多くあります。

グローバル化により、国内のみを管理する昔ながらのシステムが通用せず、新たな仕組みづくりが求められるようになりました。例えば、国内の本社と海外拠点をまたぐ業務がある場合、作業をスムーズに進めるためには現地の状況を正確に把握しなければなりません。情報の伝達に時間がかかってしまうと最適なアクションが取れず、製品の供給に影響を及ぼしてしまうこともあるでしょう。

このようなリスクを防ぐために、フロー全体を俯瞰しコントロールするサプライチェーンマネジメントの考え方が近年見直されています。離れた拠点での業務を円滑に進めるためだけでなく、海外企業との競争に打ち勝つために導入を検討する場合もあります。

労働力人口の不足

総務省統計局が発表した「労働力調査(基本集計)2021年(令和3年)平均」によると、2021年の労働力人口は前年に比べて8万人減少しており、2年続けての減少でした。また、15~64歳の労働力人口は2021年平均で5,931万人と、前年に比べて15万人減少しました。

労働力人口の不足によって人手不足に陥っている企業は多くあります。労働力が枯渇しているなか、企業が生産性を向上させるには、限られた人材を活用し効率よく業務を進めることが大切です。これまでの業務プロセスを見直し、新たなITツールの導入などで根本的な改革を行うことも必要でしょう。

サプライチェーンマネジメントは、製造におけるフローを最適化し、業務の無駄を省く効果があります。そのため、限られた人材で利益を最大化する手段として近年再注目されています。

IT技術の進歩によってサプライチェーン全体の管理が現実的になった

サプライチェーンマネジメントという言葉が初めて用いられた1980年代のIT環境は、まだメインフレーム(汎用機)が中心となってシステムを構成している時代であり、現在のようなITシステムを持つ企業は大企業に限られていました。そのITシステムというのもあらゆる業務アプリケーションがネットワークによって接続されているのではなく、特定のコンピューターで特定の演算処理を行うというのが一般的でした。

それがサーバー&クライアントという新しいITシステムの時代になり徐々に変化していきます。企業では複数の業務アプリケーションがネットワークに接続され、各部門はそれにクライアント(パソコン)からアクセスし業務を遂行することが当たり前になりました。この頃からIT製品のコモディティ化が急速に進み、中小企業でもITシステムを構築する時代に突入します。

そこからさらにインターネットが普及し、消費者がスマートフォンを持つことが当たり前になったり、クラウドコンピューティングがIT業界を台頭するようになったりと、日々IT技術が革新的に進歩しました。これによって原材料メーカーから部品メーカー、製造メーカーから卸業者、店舗から消費者といった大規模なサプライチェーンを全体的に管理するための基盤が整いました。

1980年代当時、先進的な経営手法概念だったサプライチェーンマネジメントに、ようやくIT技術が追い付いたことでこれを実現しようというニーズが大きくなったわけです。

デジタルの影響から消費者ニーズが多様化しその対応策として注目された

IT技術の革新的な進歩とインターネットやスマートフォンの普及は、市場に大きなインパクトを与えました。消費者はテレビCMや広告、雑誌等で製品情報を取得するだけでなく、インターネット検索を通じてあらゆる情報へアクセスできるようになり、情報流通環境が劇的に変化したことに伴って消費者ニーズが多様化しています。

そのため、旧来は少品種大量生産が当たり前だった製造業でも、多品種少量生産が主流の時代に変わり、さらには消費者1人1人のニーズに対応する“マスカスタマイゼーション”が強く求められる時代に突入しています。多品種少量生産やマスカスタマイゼーションは、単純に考えてもサプライチェーンにおける管理項目が劇的に増加します。

これによってサプライチェーンの起点からゴールまでの管理が複雑化し、より高度なサプライチェーンマネジメントによるサプライチェーンの最適化が叫ばれるようになりました。

サプライチェーンマネジメントを導入するメリット

サプライチェーンマネジメントを導入すると、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、導入によって期待できる4つの効果を紹介します。

在庫を適正化できる

原材料の調達から販売・消費までを包括的に管理することで、在庫の過不足を把握しやすくなります。在庫は多すぎても少なすぎてもならず、需要に合った適切な量を供給できるようにコントロールすることが大切です。在庫を抱えすぎると管理費などの費用や売れ残りによるロスなどが発生し、在庫が少なすぎると急な需要増加に対応できず機会損失を招いてしまう可能性があるからです。

サプライチェーンマネジメントは、需要予測や販売先からの情報共有などによって、在庫を適切な量に調整します。需要と供給に合った在庫数を実現することで、利益の最大化に貢献するでしょう。

自社リソースを最適化できる

人材や資金、ツール、情報など企業が持つリソースはさまざまなものがありますが、それらを合理的に活用できなければ生産性を向上させることは難しいでしょう。リソースは限られたものであるため、活用方法を誤ると無駄なコストがかかりやすいからです。

サプライチェーンマネジメントは、フロー全体を俯瞰して管理することで、自社リソースをいつ、どこに、どれだけ投入するかを判断しやすくなります。自動化できる業務に多くの人材を配置してしまったり、繁忙期に必要な人員が足りなくなってしまったりするミスを防止でき、効率よくリソースを活用できるようになるでしょう。無駄なコストをかけずに済むため、コスト削減にもつながります。

迅速な顧客対応が実現する

製造において、原材料を調達し製造工程を経て、製品を出荷するまでにかかる時間のことをリードタイムといいます。受注生産方式を採用している場合は、顧客からの依頼を受けてから製品を製造するケースが一般的でしょう。そのため、リードタイムが長いと受注から顧客に製品を届けるまでに時間がかかってしまいます。製品の性質上、リードタイムが長くなりやすいものもありますが、無駄な業務を省くことや業務効率化を目指すことで改善できる場合もあります。

サプライチェーンマネジメントにより効率化が実現することで、リードタイムを削減し、スピーディーに製品を消費者に届けられるようになります。その結果、顧客満足度の向上や利益拡大などの効果が期待できます。

ニーズに柔軟に対応できる

スマートフォンやSNSなどの普及により、消費者のニーズは多様化し日々変化しています。トレンドの移り変わりも早く、今までと同じ方法では企業が消費者ニーズをとらえることが難しくなってきています。

サプライチェーンマネジメントでは、それぞれの製造プロセスにおける情報を一元的に管理します。これまでは異なる部署や企業などで管理していた情報にもアクセスしやすくなり、集約した情報を活用した需要予測が可能になります。扱う情報量が増えることから、より精度の高い分析や予測ができるようになり、急激な需要やニーズの変動にも柔軟に対応しやすくなるでしょう。

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サプライチェーンマネジメントの課題

生産フローを最適化し、利益の拡大が期待できるサプライチェーンマネジメントですが、導入するにはいくつかの課題を克服する必要があります。ここでは、実施にあたって注意するべきポイントを3つ紹介します。

リアルタイムな情報収集が必要となる

サプライチェーンマネジメントでは、製造に携わるサプライヤーや製造メーカー、卸業者、配送業者、店舗などが情報をリアルタイムで収集、共有することが大切です。収集した情報を意思決定に活かすことでフローを最適化し、連携を取りながら製品を消費者のもとに届けられます。

IT化に遅れを取っていたり、ネットワーク環境が整備されていなかったりと、情報を共有できるシステムが構築できていないと、サプライチェーンマネジメントで効果を得るのが難しいかもしれません。サプライチェーンを最適化するために情報は大きな役割を果たしており、需要予測から調達指示にいたるまで情報こそが潤滑油となっているからです。導入を検討している場合、まずは自社や取引先に最適な情報収集システムがそろっているかを確認しましょう。

導入時にコストがかかる

サプライチェーンマネジメントは、必要なサービスやシステムなどを導入するのにコストがかかります。フロー全体を包括的に管理するシステムだからこそ適用範囲も広く、コストは高額になるでしょう。余裕を持って費用を用意する必要があるため、なかなか導入に踏み切れない企業も多いようです。

しかし、近年はクラウド型のシステムなど、比較的安価で導入できるものも増えています。既存のシステムとの互換性や使いやすさ、機能などを考慮して複数のシステムを比較し、自社に適したものを検討しましょう。

組織間の連携が重要になる

サプライチェーンマネジメントは、それぞれの企業だけでは完結せず、組織同士が密に連携を取り合う必要があります。そのためには、情報伝達が必要な部署や企業などをピックアップし、コミュニケーションを取りながら足並みをそろえていくことが大切です。それぞれの方針を擦り合わせ、スムーズに業務に取り組むためには組織を超えたマネジメントが求められるでしょう。

システムを導入する場合も、ただシステムをそろえればよいわけではありません。システムを導入した後の定着や運用までを管理することが大切です。

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サプライチェーンマネジメントにERPが活躍する

ERP(Enterprise Resource Planning)とは、部門ごとに分断されていた業務アプリケーションを1つに統合したIT製品です。Oracle ERP CloudやOracle NetSuiteなどでは、すべての業務アプリケーションは1つのデータベースで管理されるため、企業全体の情報を一元管理し情報活用型の経営が促進します。このERPをクラウドサービスとして提供している製品の場合、サプライヤーやその他のステークホルダー(利害関係者)とのシステム共有が容易になるため、サプライチェーンマネジメントを実現する鍵として注目されています。

サプライチェーンマネジメントに取り組みたいと考えるのならばERPの導入を同時に検討しましょう。

まとめ

サプライチェーンとは、原材料を調達し、製品を消費者のもとに届けるまでの一連の流れのことです。サプライチェーン全体を最適化し、効率化を目指す取り組みを「サプライチェーンマネジメント」といいます。業務の無駄を削減できるだけではなく、在庫・自社リソースの最適化や消費者ニーズへの柔軟な対応、迅速な顧客対応などのメリットが期待できます。労働力人口の減少やビジネスのグローバル化などにも対応できるため、近年改めて注目を集めています。

サプライチェーンマネジメントを成功させるには、ほかの企業や店舗、組織などのあいだで情報をリアルタイムで共有し、状況をひと目で判断できるシステムの構築が大切です。導入コストが課題ですが、クラウドを活用したERPなど、なかには初期費用がかかりづらいものもあります。コスト面も含め、自社に合ったシステムを検討しましょう。

サプライチェーンを成功させる10のポイント

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