SAP Business ByDesignは、SAP社が提供するクラウドERPです。従来のオンプレミス型ERPは「導入までに時間がかかる」「コストがかかる」「技術的に難しい」などの課題がありました。この課題を解決する製品のひとつがSAP Business ByDesignです。
SAP Business ByDesignは、短期間で簡単に導入でき、低コストで利用できるのが特徴です。拡張性の高さや、国際基準をクリアする高いセキュリティ対策、保守・運用のサポート体制にも優れており、システム担当者の人数が少ない中小企業でも導入しやすい製品となっています。
本記事では、SAP Business ByDesignの概要や主な機能、特徴について解説します。SAP BusinessOneとの違いについても解説しますので、ぜひ参考にしてください。
SAP Business ByDesignの概要
SAP Business ByDesignはSAP社が提供するクラウドERPで、クラウド上にあるソフトウェアをインターネット経由で利用できるSaaS型のサービスです。
ソフトウェアのダウンロードなしに、会計・財務管理、顧客管理、人事管理、プロジェクト管理、調達・購買、サプライチェーン管理などの機能をクラウド上で利用できます。SAP Business ByDesignは、2007年に提供開始されて以来、日本を含む130カ国以上の企業で利用されています。
以下では、クラウドERPについて簡単に説明した上で、SAP Business ByDesign導入の対象となる企業や、SAP BusinessOneとの違いについて解説します。
そもそもクラウドERPとは
クラウドERPとは、クラウド環境で利用できるERPのことです。クラウドERPには以下の特徴があります。
- 導入コストを抑えられる
- 自社内にサーバーなどのハードウェアを用意する必要がない
- インターネットに接続できればどこからでも利用できる
クラウドERPは、保守や運用がクラウドERPを提供する事業者に任されるため、導入コストだけでなく、運用に費やす労力も抑えられます。そのためシステム担当者の人数が少ない中小企業でも導入しやすいのがメリットです。
本記事で紹介するSAP Business ByDesign以外に、Microsoft社の「Microsoft Dynamics 365」や、Oracle社の「Oracle Fusion Cloud ERP」など、他社からもクラウドERPがリリースされています。
SAP Business ByDesignは中小企業向けのクラウドERP
SAP Business ByDesignは、コストを抑えて必要な機能だけを導入したい中小企業向けのクラウドERPです。
SAP Business ByDesignには、世界の企業の業務ノウハウがテンプレートとして用意されています。これを利用することで、短期間で簡単にERPを導入することが可能です。
また、SAP Business ByDesignはERPとしての機能を網羅的に備えていながら、必要な機能だけを選択して利用することも可能です。必要な機能だけを選んで利用できるため、低コストで運用できます。
SAP BusinessOneとの違い
SAP Business ByDesignと似た製品にSAP BusinessOneがあります。どちらも中小企業向けの製品ですが、想定する利用者が異なるため、ニーズに合わせて適切な製品を選ぶことが重要です。主な違いは以下の通りです。
SAP BusinessOne
- 最低1ユーザーから利用可能
- オンプレミスまたはプライベートクラウドで導入可能
- 自動アップデートなし
- 製造、貿易、流通、小売、電子商取引、サービス業界に特化
SAP Business ByDesign
- 最低5ユーザーから利用可能
- クラウドで導入可能
- 四半期ごとにクラウド経由で自動アップデート
- あらゆる業界に対応
SAP BusinessOneは、中小企業向けの製品として提供されており、製造、貿易、流通、小売、電子商取引、サービス業界に特化した機能が充実しています。
基本的な会計ERPからステップアップしたいスタートアップ企業や、中小企業におすすめの製品です。オンプレミスで構築するSAP BusinessOneの場合、クラウドを介さないため、ハッキングなどの攻撃を受けにくいといったメリットがあります。しかし、自動アップデート機能がないため、更新はユーザー自ら行う必要があります。
一方、SAP Business ByDesignは、20 ~ 700程度のユーザー管理が可能なため、規模拡大をめざす中小企業や、グループ会社をいくつもかかえる企業におすすめです。
利用環境はクラウドベースのみとなっており、四半期ごとにアップデートによって自動で更新が行われます。SAP Business ByDesign は、流通、製造、ソフトウェア、IT、人事、コンサルティング、建設、製薬、医療、化学、サービス業界などあらゆる業界に対応しており、会計や財務管理だけでなく、プロジェクト管理などの機能も含まれています。
これらのことから、ERPの主要機能だけが必要な場合は、SAP BusinessOneの導入が妥当です。一方で、プロジェクト管理などの機能が必要な場合は、SAP Business ByDesignが適しているといえます。
SAP Business ByDesignの主な機能
SAP Business ByDesignには、あらゆる業務データをリアルタイムで統合し、業務を効率化する機能が多く備わっています。SAP Business ByDesignの主な機能を以下で紹介します。
会計・財務管理
会計・財務管理は、複数の部門を横断して企業の会計をリアルタイムで管理する機能です。
顧客や取引先との取引データを利用して、リアルタイムに売上予測やキャッシュフローを確認できるため、企業が扱う資金の状況や動きを適切に管理できます。また、さまざまな通貨に対応しているため、海外展開にも対応可能です。
顧客管理
顧客管理は、マーケティング、契約、アフターサポートまでの販売プロセスを管理する機能です。
顧客との契約や請求処理を自動化するだけでなく、ターゲットに合わせたキャンペーンの実施などによってマーケティングの効率化も期待できます。
人事管理
人事管理では、勤務時間、給与計算などの管理を自動化します。
他の給与計算アプリケーションや代行業者と連携することもでき、効率的な人事業務でコストを削減できます。
プロジェクト管理
プロジェクト管理では、プロジェクトの実施状況をリアルタイムで確認できます。
SAP Business ByDesignを使えば、見えなくなりがちなプロジェクトの収支も追跡して管理することが可能です。プロジェクト管理でメンバーの役割やリソース、進捗状況、予算などを管理することで、プロジェクトを効率的に進め、収益を高めることができます。
調達・購買
調達・購買は、仕入先の選定、価格交渉を効率化する機能です。
データベースで取引先と製品に関する情報を管理し、その情報をもとに最適な仕入先を選定できます。有利な価格交渉や複数の契約管理が容易になり、購買業務にかかる時間とコストを節約できます。
サプライチェーン管理
サプライチェーン管理は、生産から在庫管理、物流に関わるデータをリアルタイムに統合し、サプライチェーンの状況を可視化する機能です。
製品の製造から出荷までの管理はもちろんのこと、最新の在庫状況も把握できるため、需要と供給を管理してサプライチェーンを最適化し、市場の変化に迅速に対応できます。
SAP Business ByDesignの特徴
SAP Business ByDesignには、以下の特徴があります。
- 必要なシナリオが用意されているので簡単に導入できる
- ビジネスの成長に合わせて拡張できる
- 場所を選ばず利用できる
- 低コストで利用できる
- 国際基準をクリアする高いセキュリティを備えている
以下で、それぞれ詳しく解説します。
特徴1.必要なシナリオが用意されているので簡単に導入できる
SAP Business ByDesignは、業務で利用するシナリオが用意されているため、簡単に導入できるのが特徴です。
36種類の豊富なビジネスシナリオをプリセットで選択でき、自社の業務に柔軟に対応します。
また、SAP Business ByDesignはクラウドERPであるため、管理する分野ごとに個別のソフトウェアを用意する必要がありません。もともと用意されている機能の中から、部門の要件に応じて必要な機能だけを使うことが可能です。
海外の税制や通貨にも対応しているため、海外拠点の展開にも利用できます。海外でビジネスを展開する企業であっても、SAP Business ByDesignを利用することで、複数の国の拠点をひとつのシステムで同時に管理できるというメリットがあります。
特徴2.ビジネスの成長に合わせて拡張できる
ビジネスの成長に合わせて機能を追加したり、既存の機能を変更できるのも、SAP Business ByDesignの特徴です。導入時は最小限の機能のみを利用し、あとから機能を追加・変更することも可能です。
また、SAP Business ByDesignは、企業の規模拡大に応じて2層ERPとして導入するのにも適しています。拠点の増加や新規事業の立ち上げ時に、短期間かつ低コストで導入できるSAP Business ByDesignを導入することで、迅速に企業全体で情報を連携でき、業務の最適化を図れます。
特徴3.場所を選ばず利用できる
SAP Business ByDesignは、インターネットとPCがあれば場所を選ばず、すぐにERPを利用できます。モバイルアプリにも対応しており、経費精算や休暇申請の提出、顧客情報の登録など主要なタスクを直接モバイル端末から実行できます。
従業員のリモート勤怠を確認したり、外出先で給与管理をしたりすることも可能です。
特徴4.低コストで利用できる
月々の利用料は、利用する機能やユーザー数にもとづいたサブスクリプションで決定します。利用する機能を絞ることでコストを抑えられるため、中小企業の予算でもERPを利用できます。
また、保守・運用はSAP社が担うため、運用にかかるコストも抑えられます。
複雑なインフラやデータベース、アプリケーションの維持管理は全てSAP社に任せて、ERPをビジネスに活用することに注力できます。
特徴5.国際基準をクリアする高いセキュリティを備えている
SAP Business ByDesignは、米国国立標準技術研究所 (NIST)、国際標準化機構 (ISO) などの業界標準によって定められたガイダンスを採用しており、国際基準をクリアする高いセキュリティ対策がとられています。
IP制限、データの暗号化、データバックアップ機能などに加えて、データセンターレベルでのセキュリティ対策も万全です。すべての業務データは隔離されたSAPのデータセンターで管理されるため、自社のサーバールームで運用するよりも安全な環境でERPを利用できます。
また、四半期ごとのアップデートにより、最新のセキュリティにも対応しています。
まとめ
ここまで、SAP Business ByDesignの概要や主な機能、特徴について解説しました。
SAP Business ByDesignは、ビジネスの規模に合った投資額でERPを導入し、低コストで運用したい中小企業向けのクラウドERPです。ソフトウェアのダウンロードなしに、会計・財務管理、顧客管理、人材管理、プロジェクト管理、調達・購買、サプライチェーン管理などの機能をクラウド上で利用できます。あらゆる業務データをリアルタイムに統合し、業務を効率化するのに役立つ製品です。
本記事で紹介したSAP Business ByDesign以外に、他社からもクラウドERPがリリースされています。クラウドERPを導入する際は、自社のニーズや将来的な目的に合う製品を選びましょう。
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