「クラウドコンピューティング」という言葉が世に浸透してから、すでに10余年が経ちます。今では、クラウドといえばインターネット経由で提供されるサービスを指し、その言葉を知らないという人はいないほど、ビジネスでも私生活でも重要な立ち位置にあります。
しかし時に、クラウドに関する話の中で「SaaS」や「ASP」といった専門用語のような言葉を見聞きすることもあります。クラウドの意味は知っていても、それらの意味は知らないという方はまだ多いのではないでしょうか?
本稿では、今さら人にはきけないSaaSとは何か?PaaS・IaaS・ASPとの違いを解説します。
「SaaS」って、なに?
「SaaS」というのは「Software as a Service」の略であり、日本語では「サービスとしてのソフトウェア」と解釈されています。「そもそもソフトウェアってなに?」という方のために、そこから解説していきます。
ソフトウェアというのは、パソコンやサーバーにインストールすることで利用できるようになるプログラムのことを指します。たとえば、パソコンの中には様々なアプリケーションが備わっていますが、それらはすべてソフトウェアとも呼ばれます。
また、業務システムを一から開発するのではなく、IT会社から購入したパッケージ製品もサーバーにインストールして利用するソフトウェアです。「それら全てはソフトウェア」と理解して差し支えありません。
そして前述のように、ソフトウェアとは本来パソコンやサーバーにインストールすることで利用できるになります。しかし「SaaS」ではソフトウェアをインストールする必要がありません。
ではどのようにして利用するのか?そこでインターネットが登場します。SaaSは本来パソコンやサーバーにインストールして利用するソフトウェアを、インターネット経由でその機能を提供するサービスを指すのです。ソフトウェアを製品として購入するのではなく、継続的にサービスとして利用することから「Software as a Service(サービスとしてのソフトウェア)」と呼ばれています。
例として挙げるならば、世界的にユーザー数が多いGmailやDropboxなどインターネット経由で提供されるサービスは全てSaaSということになります。
「PaaS」「IaaS」との違いは?
「SaaS」について解説したところで、「PaaS」「IaaS」についても解説し「SaaS」との違いを明確にしていきます。まず、「PaaS」「IaaS」に関しては概念的に同じものとなります。違うのは、「何をサービスとして提供しているか?」という点です。
「PaaS(Platform as a Service)」
「PaaS」は日本語で「サービスとしてのプラットフォーム」という意味です。プラットフォームというのは、「何らかの目的を達成するための機能が整えられた空間」だと解釈してください。たとえばYouTubeは「動画配信プラットフォーム」であり、ユーザーが動画を配信したり共有したりするための機能が整えられており、ユーザーはそれらの機能を利用するだけで色々なことができます。
そして「PaaS」におけるプラットフォームとは、ソフトウェアを開発したりITシステムを構築したりするために必要なサーバー・OS・ミドルウェア・その他ツールを指します。要するに開発者が目的を達成するために必要な環境がセットとして整えられており、「PaaS」を利用することでその環境を瞬時に調達できるというメリットがあります。
「IaaS(Infrastructure as a Service)」
「IaaS」は日本語で「サービスとしてのインフラストラクチャー」という意味です。インフラストラクチャーとは「基盤」を意味する言葉で、「IaaS」においてはアプリケーション開発やITシステム構築の最も基本的となる機能(CPU・メインメモリ・ストレージ)を指します。
通常、社内でアプリケーションを開発したりITシステムを構築したりするためには、必要な機能(CPU・メインメモリ・ストレージ)を備えたサーバーを購入し、設置します。その上にOSやミドルウェアをインストールしていき、開発・構築環境を整えます。
つまり「IaaS」は、その最も基本的な機能をインターネット経由で調達することができるサービスです。
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「ASP」との違いは?
多くの方が混乱しがちなのが「SaaS」と「ASP」の違いです。「ASP」というのは「Application Service Provider」の略であり、日本語では「アプリケーションサービス提供者」という意味です。アプリケーションサービスというのは、SaaS同様にインターネット経由で提供されるサービスのことであり、「ASP」はそのサービスそのものやサービスを提供する事業者を指します。つまり、「SaaS」と非常に類似した意味を持つのが「ASP」です。
では、何が違うのか?まず「ASP」が登場したのは1990年代後半であり、インターネット経由でアプリケーション(ソフトウェア)を提供するという点は「SaaS」と何ら変わりありません。その特徴から、当時は中小企業を中心に普及するのではないかと予想されていました。
しかし、インターネット環境がまだ整備されていなかったことや、セキュリティへの不安が残っていたこと、他のアプリケーションとの連携性が低いことを背景に普及には至りませんでした。
「SaaS」はなぜ普及したのか?
「ASP」が普及せずに「SaaS」が普及した背景には、高速なインターネット環境の整備がありますが、それよりも大きな理由がマルチテナント方式によってサービスが提供されるようになったことです。
マルチテナント方式とは、1つのサーバーに備わっている機能を論理的に分割して、複数のユーザーに提供するという方式です。「ASP」の時代はシングルテナント方式といってユーザーごとにサーバーを容易する必要があったため、コスト低減が難しく、セキュリティ要件も厳しくなっていました。
一方で、マルチテナント方式を採用した「SaaS」は圧倒的な低コストを実現し、セキュリティ対策を講じやすいというメリットから、世界中で一気に普及していくことになります。これが「SaaS」と「ASP」の違いです。
現在では「SaaS」のことを「ASP」と呼ぶこともありますので、明確な違いを理解した上で、「SaaS」と「ASP」は同義なのだと考えておきましょう。
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「SaaS」のメリットとは?
最後に、「SaaS」を利用するメリットをご紹介して終わりたいと思います。
- パソコンやサーバーへのソフトウェアインストールが不要
- それに伴ってサーバー調達コスト等を抑えられる
- 大規模なシステム環境もSaaSで導入できる
- インターネット経由なのでどこでも利用できる
- セキュリティ対策がSaaSベンダーによって講じられている
- ユーザー数に応じた料金で適正コストを保てる
- SaaSベンダーがシステム運用を行っているので管理負担が少ない
- 必要に応じてプランを変更したユーザー数を増減できる柔軟性がある
- ランニングコストが固定化するので予算計画が立てやすい
もはや企業がクラウドを活用するのは当たり前になりました。クラウドERPなどの基幹業務システムにおいてもOracle ERP CloudやOracle NetSuiteなどのSaaSが活躍しています。「SaaS」を利用したことがないという場合は、この機会に検討してみましょう。
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- DX/クラウドコンピューティング
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