企業経営を左右する大事な戦略の指針として、自社の志を世に知らしめる「パーパス」を重視する企業が増えています。この記事では、今話題となっているパーパスが一体どのようなものなのか、その関連用語や重要性までを含めて説明します。さらに、パーパスを導入するメリットや実施する際のポイントについても解説します。
パーパスとは?
企業経営やブランディングに関する戦略を語るうえで、「パーパス」という言葉が脚光を浴びています。パーパスがビジネス界の流行語となりつつあることを物語るように、パーパス経営やパーパスドリブン、そしてパーパスブランディングなど、パーパスを冠した言葉をあちらこちらで目にするようになりました。
さて、パーパスとは、「目的」や「目的達成への決意」などの意味を持つ「Purpose」という英単語のカタカナ表記です。そして、ビジネス用語として使われるときは、企業の社会における「存在意義」や「存在理由」、ひいては「志」を表す言葉となります。企業が独自のパーパスを定めることにより、社会に対して自社がどのような存在理由を持つのかを表明でき、事業を展開するうえでも柱となる方針の一つとして機能するでしょう。
パーパスが注目される理由
それでは、パーパスがなぜ注目されるのか、その理由について考えていきましょう。
企業のサステナビリティが注目されている
パーパスが注目される理由の一つとしては、企業のサステナビリティ(sustainability)、つまり企業活動における持続可能性が重要視されるという時代の要請があります。
二酸化炭素などの温室効果ガスによる地球温暖化やマイクロプラスチックが及ぼす生態系への影響など、人々の環境問題への関心が高まるにつれ、持続可能性の追求に取り組む企業が増えています。
モノを単に安く作って大量に販売するという、大量生産・大量消費のビジネスモデルから脱却し、これからの時代に即した持続可能性を考慮したビジネスモデルへの転換が必要です。時代の流れに乗り遅れないために、サステナビリティ的な視点を踏まえて、自社のパーパスを決める必要性があるでしょう。
企業の社会的意義がより重視されるようになった
パーパスが注目されるもう1つの理由としては、企業の社会的意義がより重視されるようになったことがあげられます。
近年では、企業が長期的に成長していくために、「ESG(環境・社会・ガバナンス)」が重要であるとして、真剣に取り組む企業が増えています。ESGは、投資家が企業への投資を行ううえで、参考にしている指標の一つでもあり、決して軽視できません。ESGという指標で高い評価を受けるためにも、「社会とのつながり」や「社会的意義」を重要視するパーパスが、時流に合ったものとして注目を集めているのです。
パーパスと関連用語
パーパスには、様々な関連用語がありますが、ここではその中から、よく使われるものをピックアップして、以下に紹介します。
パーパス・マネージメントとパーパス・ブランディング
まず、パーパス・マネージメントとパーパス・ブランディングについて説明します。
パーパス・マネージメントは、パーパス経営とも呼ばれ、企業が策定したパーパスに沿って、経営を行うことを意味します。パーパス・マネージメントという経営手法は、パーパスを独自の企業活動に反映することによって、社会貢献を果たしていくものであるとも言えるでしょう。
また、パーパス・ブランディングとは、自社のパーパスを社内はもちろん、対外的にも積極的にアピールすることによって企業パーパスを世の中に広め、その認知度が高まるように働きかけるブランディング手法です。
パーパスとミッション・ビジョン・バリューとの関係
パーパスと似ていて間違われやすい用語に、ミッション、ビジョン、バリューの3つがあります。
社会における企業の存在意義や志を内外に明示するパーパスは、まさしく企業の根幹に関わる最も大切な部分を担う言葉です。パーパスが変われば、それと連動して他の3つも変わってしまいます。
ミッションは、企業がパーパスを遂げるために果たすべき使命を意味し、ミッションもパーパスも、ともに企業の存在理由に関わる言葉です。しかしながら、パーパスが、社会とのつながりなしには成立しないのに対し、ミッションの方は、社会とのつながりを特に意識しなくても構いません。なお、ビジョンという用語は、企業がパーパスを遂げるために実現を願う未来を表します。そして、バリューは、パーパス、ミッション、ビジョンによって生み出され、顧客に対して企業が約束する価値や強みを意味します。
パーパスのメリット
企業がパーパスを策定することで、自社にどのようなメリットがもたらされるのでしょうか。以下に、期待されるメリットについて説明します。
ESG推進に貢献しステークホルダーから支持を受けられる
まず、大きなメリットとして期待できるのは、ESG推進に貢献することで、ステークホルダーから支持を受けられることです。先述したように「ESG」とは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)という3つの英単語の頭文字をつないで作られた言葉です。
企業がESG的観点の取り組みに力を入れることによって、投資家などのステークホルダーからの支持をより多く得られ、資金調達などに成功する可能性が高まります。
パーパスを起点とした人材の採用や育成ができる
その他に期待できるメリットとしては、人材を募集する際に、パーパスを起点とした採用への取り組みを行うことで、自社のパーパスに理解を示して賛同する人々が集まり、自社にマッチした人材を採用できることが挙げられます。
また、新人の採用のみならず、社員を育成し、部署間のローテーションを行うことで企業のパーパス達成に効果的な人事を行うことも可能です。
効果的なパーパスの設定方法
次に、効果的なパーパスの設定方法について説明します。
設定するパーパスは、「社会的課題を解決できる」「自社のアセットで実現できる」「従業員のモチベーションを向上させられる」などの条件に当てはまるよう注意しなければなりません。どんなに立派なパーパスであっても、達成困難なものを設定してしまうと、結果を出すことができずにステークホルダーの信頼を失ってしまう可能性があります。
以上の注意点を踏まえてパーパスが作成できたら、適切なパーパス・ブランディングを行って、社内だけでなく外部にもしっかり認知してもらうことが重要です。
パーパスを実施する際に注意するポイント
パーパスを実施する際に注意するポイントには、どのようなものがあるのでしょうか。
まずは、社内にパーパスを浸透させることが、最も重要なポイントとなります。それには、一人の社員と一人のメンターが対話によって、自分のパーパスと自社のパーパスをすり合わせていく「マイパーパスOne-on-One」などの取り組みが有効です。社員たちがパーパスを自分に置き換えて捉えやすくするために、例えば「自分のパーパス―自分の能力―自分の職務」といった枠組みを利用して、対話を進めていくと効果が上がります。
このような取り組みを行うことによって、社員一人ひとりに当事者意識が芽生え、自発的なパーパスの実施が可能となるでしょう。
パーパス経営が目指す新SDGs
一橋ビジネススクールの名和教授は、「DXの時代をリードするCFOと財務部門の役割とは」という資料の中で、「世の中には外してはいけない大きなトレンドがあり、私はそれを『新しい SDGs』と呼んでいます。」と述べています。
(引用元:https://www.clouderp.jp/hubfs/resource/PDF/role-cfo-and-finance-department-in-dx.pdf)
パーパス経営が目指す新SDGsでは、Sustainability(サステナビリティ)・Digital(デジタル)・Globals(グローバルズ)の3つの視点が重要となります。新SDGsとは、現行のSDGsよりも、さらに先を見据えた目標です。つまり、新SDGsは、現在のSDGsが提唱しているものの先にある未来を想像し、現時点で考慮されていない問題、例えば、高齢者の介護、ロボットをはじめとする無生物、地球のみならず宇宙まで含めて言及した、より網羅的な目標です。
まとめ
コロナ禍や国際的な紛争などの影響を受け、先が見えず焦りが先行しがちな時代において、企業が自らの存在意義を策定し、それに沿って経営を行うパーパス経営が注目を集めています。パーパス経営は、不確定な要素が多い現代社会を生き抜く、経営の切り札となり得るでしょう。このような状況において名和教授は、「焦りが先行すると、目の前の危機から逃れるだけで終わる。今こそパーパス、つまり志を先行させてポジティブに考えるべきです」と指摘しています。
(引用元:https://www.clouderp.jp/hubfs/resource/PDF/new-data-centric-system.pdf)
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