旬のテクノロジーである「予測分析(Predictive Analytics)」。今日の企業が直面している最大の課題は、先行きが不透明な現代社会においていかに予測をたてて経営の舵取りを行うかにかかっていると言っても過言ではありません。そのためには、増え続ける大量のデータをどう活用するか?という方法を探ることが重要となります。本稿は、解決策の一つである予測分析について解説しています。
予測分析とは?
企業が実施する分析にはさまざまなものがあります。顧客分析は、顧客にかかわる多種多様なデータや市場データから、顧客満足度アップや売上アップに有効なインサイト(洞察)を得るために実行されます。また成長性分析では、売上高増加率や純資本増加率など、企業成長に係る様々な分析指標から、企業の成長性を把握し、成長要因の分析と将来的成長の予測などを行います。
こうした分析の中でも、予測分析は高度な分析手法の1種であり、履歴データにもとづいて特定の変数が発生する可能性がある値を予測するために持ち入れられます。つまり、端的には「過去の履歴データから、これから起こるであろう事象の予測するための分析」ということになります。
予測分析が重要視されるようになった背景
予測分析自体の歴史は数十年と古く、人々は昔から履歴データをもとに将来的に発生する事象を予測しています。たとえば気象予報も予測分析の一つですし、ECサイトにおけるレコメンド(別の商品をおすすめする)機能も、ユーザーの履歴データから「この商品を購入するかもしれない」という将来的事象を予測した予測分析だと言えます。では、今になってこの予測分析が重視されている背景には何があるのでしょうか?
1.データ量の増加
世界のデータ量は今、急激なスピードで増加を続けています。ある調査では、デジタル上に存在するデータの9割は直近2年間で生成されたものと考えられており、年間で生まれるデータ量はここ数年で10倍近く増加しています。それに比例して、企業でも同じようにデータ量が増加しています。
2.データ活用の需要
2013年の流行語大賞候補にもなった「ビッグデータ」は(IT業界では断トツの流行語大賞)、多くの日本企業にデータ活用の重要さを教えました。当時、世界の大企業や中小企業が大量のデータを分析することで、新しいビジネスチャンスを掴んだという話題に溢れ、「我が社もビッグデータ分析に取り組もう」と意気込んだ日本企業も多いでしょう。 そうしたすべての企業がデータ分析によって有用なインサイトを獲得したわけではありませんが、データ活用への需要は今もなお増えています。
3.コンピューターの進化
コンピューターの性能は進化の歴史であり、今現在も高性能化と低コスト化が進んでいます。これにより、膨大な量のデータを分析するための、高速処理を可能にするコンピューターがより安価に手に入るようになり、大企業だけでなく中小企業でも予測分析を実行する基盤が整えられる時代になっています。
4.ソフトウェアのコモディティ化
さらに、コンピューターだけでなくソフトウェアでもコモディティ化は進み、高度な予測分析は特定の企業だけのものではありません。対話型操作で予測分析を行うツールと、クラウドサービスの登場によって統計学者やデータサイエンティストでなくとも、高度な予測分析を可能にする時代になっています。
5.競合他社との差別化
日本の経済市場は今成熟化の一途を辿っています。その中で、海外市場に目を向ける企業もあれば、国内市場で競合他社との差別化を実施し、より価値の高い商品やサービスを提供しようとする企業もあります。競合他社との差別化には予測分析が不可欠であり、需要はさらに増しています。
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予測分析に取り組むメリット
前述した背景より、大企業だけではなく中小企業も予測分析に取り組む時代です。特に最近では、中小企業の間でクラウドERP(クラウドサービスとして提供される統合型基幹システム)を導入するケースが多く、BI(Business Intelligence)を統合した製品を採用することで、財務情報や顧客情報、製造情報などあらゆるデータの種類を組み合わせて、高度な予測分析を実施しています。そんな予測分析のメリットとは何でしょうか?
1.マーケティングキャンペーンの効果最適化
マーケティングや予測分析と非常に相性の良い分野です。なぜなら、現代マーケティングではデジタル上から取得できる顧客データの量も種類も多く、様々な予測モデルを仕様することでクロスセル・アップセルの機会を見定めたり、最も収益性の高い新規顧客を効率良く獲得したりできるからです。近年では、予測分析機能を搭載したMA(Marketing Automation)ツールも多く登場しており、マーケティング分野における更なる発展が期待されています。
2.オペレーションの改善
多くの企業が、工場におけるリソース管理などに予測分析を活用しています。たとえば、航空会社ではチケットの価格設定に予測分析を用い、またホテルは客室稼働率を最大化し、それぞれの収益増を図っています。つまり、予測分析を用いることでリソースを積極的に投じるべき場所、日時、商品、サービスを把握することができ、より効率的なビジネス遂行が可能になります。近年では、IoT(Internet of Things)と予測分析を融合し、フィールドサービスの収益化を図っている企業も増えています。
3.適正在庫維持
企業にとっての資産である在庫は、過不足なく管理されていることが理想的な状態です。しかしながら、ビジネスチャンスを逃さないように過剰在庫を抱えている企業は多く、また別の企業では適正在庫維持に苦慮し、在庫不足によって機会損失を生んでいます。在庫管理に予測分析を取り入れると、需要予測や販売予測、仕入予測等によって適正在庫の維持が可能であり、収益増加を図りつつ企業のキャッシュフローを改善できるメリットがあります。
4.不正検知によるセキュリティ強化
予測分析は企業を、そこに働く従業員を、管理されている情報を保護するためにも活用されています。予測分析によって不正検知を徹底し、第三者による内部ネットワークへの不正アクセス等を防ぐことにより、セキュリティ強化に繋がり、ひいては企業とその利害関係者を護ることになります。
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5.企業が予測分析に取り組むポイント
予測分析によって企業にもたらされるメリットは他にもたくさんあります。しかし、いざ予測分析に取り組もうとしても、分析のためのデータが揃っていなかったり、技術者が在席していないという企業が大半になります。そこで、企業が予測分析に取り組むポイントとして知っておいていただきたいのが、先ほど登場した「クラウドERP(クラウドサービスとして提供される統合型基幹システム)」です。
ERPは財務会計システムや顧客管理システム、生産管理システム等の経営活動に欠かせない基幹システムを複数統合した製品であり、各基幹ステムが単一のデータベースで管理されているため、今まで組織内に点在していたあらゆるデータを一ヵ所に集約することができます。さらに、ERPにBIが統合されていたり、BIを連携させたりすることで予測分析を自動化し、技術者が不在でも企業が能動的に予測分析を実行することが可能です。
高度な予測分析を実現するためにも、ERPをぜひご検討ください。
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- データ分析/BI