経営者に限らず社会人であれば誰でも自分の所属する会社が成長してほしいと思っていることと思います。しかし、その一方で日々の業務に忙殺される社会人にとっては、成長に関して真剣に考える機会は意外と少ないものです。皆さんは自社がどれくらい成長しているのかを考えたことがありますでしょうか?企業の成長性に関して日々考え、「成長性」に関して把握していないと、今後も継続的に成長することが難しいかもしれません。
そのためには整調性分析が必要になります。成長性を分析することにより、なにが要因になって成長することができたのかが明確になりますし、来年度、再来年度にはどれくらいの成長が見込めるかを把握することにも貢献できます。本稿では「成長性分析」について、基本とやり方を紹介します。
成長性分析とは?
成長性分析とは、企業の売上高や総資産などの規模が、どれくらい変化しているかを分析することで、企業がどれほど成長しているか、業績が伸びているかを判断するための分析です。
ちなみに成長性とは、企業における経営拡大の度合いや、今後の可能性のことを指しています。企業の成長性は売上高や利益を見れば一目瞭然だと思われがちですが、実際は売上高や利益を伸ばすために設備投資をしたり、製造や販売にかかわる人材を増やしたり、少なからずコストが発生しています。
さらに、売上高や利益が伸びているからといって、市場シェアを拡大しているとは言えません。たとえば前年比20%の売上高増加に成功したとしても、市場成長率が30%ならば市場シェアを減少させていることになります。
このように、企業が成長しているかどうかは売上高や利益の増減だけでは一概に判断できない部分も多く、だからこそ成長性分析を実施し、企業がどれくらい成長しているかを明確にすることが大切なのです。
成長性は高いほど良い、わけではない
企業の成長性は高ければ良いというものでもありません。前年比200%成長といった急激な成長率は、資金面や人材育成面において問題を起こすことがあるかもしれません。よくある問題が、急激な売上高増加に伴って借入金の増加による安定性の低下が起きたり、債権回収や棚卸資産の管理が追い付かなかったりといった問題がおきます。
人材育成面においては、組織規模の急激な拡大によって新入社員や管理職の教育が間に合わなくなり、業務プロセスに混乱が生じたり、顧客満足度が下がってしまったりと様々な問題が発生します。
このことから、企業の成長性は業界全体の成長も考慮した上で、バランスの取れた成長性があるかどうかを確認することが肝要です。
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成長性分析で使用する9つの指標
成長性分析で大切なのは、前年度に対してどれくらい売上高がアップしたかなど、単一の指標だけで成長性を判断しないことです。前述のように、売上高や利益がアップしたからといって市場シェアまで伸びているとは限りませんし、市場シェア拡大を企業の成長と定義するのならば衰退している可能性もあります。成長性分析を実施する際は、下記に紹介する9つの指標を用いて、総合的視点から成長性を判断しましょう。
1.売上高増加率
成長性分析の基本になるのが、前年に対していくら売上高が伸びたかという指標です。今年の売上高が前年よりもプラスになっていれば「成長」、マイナスになっていれば「衰退」を意味します。ただし、売上高増加率は1年分のデータで判断するのではなく、数年単位での推移を把握することと、市場規模情報など外部データと擦り合わせて成長性を判断することが大切です。
(当期売上高-前期売上高)÷前期売上高×100
2.経常利益増加率
経常利益とは、営業利益に営業外収益を加えて、そこから営業外費用を差し引いた後の利益のことで、企業の正常な収益力を示します。つまり売上高に加えて経常利益が増加していれば、企業の利益は上昇傾向にあるということです。
(労基経常利益-前期経常利益)÷前期経常利益×100
3.営業利益増加率
営業利益とは、企業が本業である絵業活動で生み出した利益のことです。営業利益の増加率を算出することで、企業が本業によってどれくらい稼ぐことができたかを判断できます。
(当期営業利益-前期営業利益)÷前期営業利益×100
4.総資本増加率
総資本が前年に比べてどれくらい増加したかを把握するための指標であり、企業としては継続的に総資本が増えていくことが望ましい状態です。ただし、総資本には「資本と「負債」が合わさっているので、負債の増加が影響して高い指標になっている可能性もあります。そのため、基本的には純資本増加率と併用して成長性を判断します。
(今期総資本-前期総資本)÷前期の総資本×100
5.純資本増加率
純資本とは、企業が持つ総資本から負債を差し引いて残った資本を指します。前述のように、総資本は資本と負債を合計したものなので、そこから負債を差し引いた純資本の値を合わせて成長性を確認します。純資本は「自己資本」とも呼ばれます。
(当期末純資本残高-前期末純資本残高)÷前期末自己資本残高×100
6.従業員増加率
従業員数の増減で成長性を判断するための指標が従業員増加率です。企業の売上高が増加するということは、事業規模が大きくなっていることを意味しているため、それに伴い従業員数の拡大が必要になります。一方で、設備投資に注力することで人員削減を図っている場合もありますので、従業員増加率だけでは成長性は判断できません。
(当期従業員数-前期従業員数)÷前期従業員数×100
もっと読む:成長企業が 大規模なライバル企業から学び、 追い越すための4つの秘訣
7.一株あたりの当期純利益
企業の、一株あたりの利益額を示す指標を「一株当たりの当期純利益(EPS:Earnings per Share)」と呼びます。株価指標の1種として用いられるものであり、当期純利益と普通株式の期中平均株式発行数からその値を求めます。企業にEPSは成長性の目安になり、この値が高いということは、企業が外部から高い評価を受けているということになります。
当期純利益÷普通株式の期中平均発行済み株式数
8.新規顧客増加率
企業が成長しているかどうかは売上高や利益、資産が増えているかどうかだけでなく、新規顧客数が増加しているかでも判断できます。ただし、やはり新規顧客増加率だけでなく、複数の指標と合わせて成長性を分析することが大切です。
(当期新規顧客数-前期新規顧客数)÷前期新規顧客数×100
9.顧客単価
新規顧客増加率が減少していても、顧客単価が増加していると売上高が減少したとは限りません。また、売上高や利益、純資本とともに顧客単価も増加していれば、企業努力によって著しく成長していることを意味します。
当期総売上高÷総顧客数
必ず複数の指標を用いて成長性分析を実施しましょう
いかがでしょうか?いずれの指標も、特別な知識やスキルなく算出することができるので、今日からでも成長性分析が始められます。これらの指標を基本に、企業独自の指標を加えていくことでより正確な成長性を把握するのもおすすめです。
注意点としては、市場規模情報や競合他社成長性など、必ず外部データと合わせて成長性分析を行うことです。外部の成長性を比較分析することで、本当の成長性や自社が置かれている立場を把握できます。企業の強みと弱み、成長要因などを明確にするためにも、成長性分析をぜひ実施してみましょう!
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