予測財務諸表とは?思い描くビジネスを実現するための道しるべ

 2019.08.09 

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予測財務諸表は、将来的な事業状況や経営状況を予測するための財務諸表です。たとえば新しい商品やサービスを展開した場合に、どの程度利益が出せそうか、損益分岐点はどこかなどを予測することで、計画的な事業戦略・販売戦略を立てていきます。

財務諸表は経理部や財務部が管理すべき情報で、営業や生産に携わっているビジネスパーソンには関係ない、と考える方も多いでしょう。しかし、財務諸表は事業にかかわるすべてのビジネスパーソンにとって欠かせないツールです。中でも予測財務諸表は、思い描くビジネスを実現するのに重要です。

本稿では、予測財務諸表の基礎についてご紹介します。

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予測財務諸表の目的

予測財務諸表作成は定性分析と定量分析にもとづき、その事業が将来どうなりそうかを予測することが主な目的です。ただし、完璧な財務諸表作成を目指してはいけません。そもそも予測なので、将来的な事業状況や経営状況について、ある程度の予測が出来れば目的は達成したと言ってよいでしょう。

予測財務諸表を作成した後は、以下のポイントに注意します。

  • 将来的な売上高はどうなるのか?
  • 将来的に資金が枯渇せずに、事業活動を続けられそうか?
  • 資金が枯渇しそうならばどの程度の借入金が必要か?
  • 資金繰りは問題なく、成長のための設備投資をする余力はあるか?
  • 業績に影響を与えそうな数字はどれか?
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損益計算書、賃借対照表、キャッシュフロー計算書

予測財務諸表も一般的な財務諸表と同じように、損益計算書、賃借対照表、キャッシュフロー計算書を作成します。

1.損益計算書

ある期間において会社がどれくらいの損失と収益を出しているかを計算し、最終的な利益を算出するための資料です。損益計算書から会社の利益構造を知ることができ、以下のような構成で示されます。

3つの収益

売上高、営業外収益、特別利益

4つの費用

売上原価、販売費および一般管理費、営業外費用、特別損失

5つの利益

売上総利益、営業利益、経常利益、税引前当期利益、当期利益

各利益について説明します。

1.売上総利益

会社の核になる商品やサービスによって得られた利益が把握でき、“粗利”とも呼ばれます。売上高から売上原価を差し引くことで売上総利益は算出できます。

売上高-売上原価

2.営業利益

会社の本業における営業力で得た利益のことです。売上総利益から商品やサービスを販売するのに欠かせない経費である、“販売費および一般管理費(販管費)”を差し引くことで営業利益が求められます。

売上総利益-販売費および一般管理費

3.経常利益

会社の本業で得られる利益が営業利益なのに対し、本業以外の収益や費用をまとめた情報を経常利益といいます。営業利益に営業外収益を加えて、営業外費用を差し引くことで求められます。

営業利益+営業外収益-営業外費用

4.税引前当期純利益

法人税など、その期に納めるべき税金を支払う前の利益です。経常利益に特別利益を加えて、特別損失を差し引くことで税引前当期利益が算出できます。

経常利益+特別利益-特別損失

5.当期純利益

決算期における最終的な利益を当期純利益といいます。会社の純粋な利益になり、この数字がマイナスであれば事業は赤字ということになります。税引前当期利益から法人税・法人住民税・法人事業税を差し引いて算出します。

税引前当期利益-(法人税+法人住民税+法人事業税)

2.賃借対照表

資本の調達先と運用形態を表した表を賃借対照表と呼びます。資産の部と負債、資本の部が必ず釣り合うように作られています。そのため賃借対照表のことをバランスシートと呼びます。主な項目を説明します。

1.資産

流動資産

1年以内に現金化が予定されている資産を表します。主に当座資産と棚卸資産が該当し、当座資産は現金や有価証券など短期で資金化できるもの、棚卸資産は販売することで現金化できる資産です。

固定資産

長期にわたって使用、保有できる資産です。主に有形固定資産と無形固定資産があり、有形固定資産は建築物や車両など、具体的な形態を持つもので、無形固定資産は特許権など形態を持たないものです。

繰延資産

流動資産にも固定資産にも該当しない資産で、損益計算上は費用として処理されるものです。ただし、費用としての支出効果が長期にわたって期待できるため、支出時に一気に費用化せず、賃借対照表上は資産として扱います。

2.負債

流動負債

買入債務、短期借入金など1年以内に返済を要する負債のことです。1年以内に返還見込のある長期借入金や社債なども流動負債になります。

固定負債

1年を超えて支払い義務が発生する負債です。長期借入金や引当金、社債などが該当します。

3.キャッシュフロー計算書

会社の一定期間における、実際の現金や預金の流れを表すものです。日本では2000年3月移行に、決算におけるキャッシュフロー計算書の開示義務が課せられるようになりました。損益計算書や賃借対照表をベースに作られます。

損益計算書に記されている収益と費用は、あくまで発生時点での計上です。しかし実際には、収益が上がっても現金を回収するのは何カ月か先になることがあります。費用にしても売れた商品にしか計上しないため、どれだけ在庫を持っていても損益計算書上は費用になりません。在庫にも色々な評価基準や評価方法があり、会社ごとに同じになってはいけないものです。

このように、利益は会計上のルールに沿って計算されます。そのルール上の計算と現実のキャッシュの動きが乖離している状態です。一方、実際の現金の動きを示しているキャッシュフロー計算書は、実際に現金が動いた事実を示しているので、企業ごとのブレが少なくなります。

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予測財務諸表の作り方

1.損益計算書の予測

予測財務諸表はまず、損益計算書から行います。企業が将来どのくらいの売上をあげ、どれくらい利益を出すのかを見積もらなければ財務予測が始まらないためです。

売上高は会社の商品やサービスが今後どういう伸びを示すか、市場の伸びや会社のポジションなどを勘案して予測します。利益は前年の売上高利益率を参考にしたり、直近何年かの費用を変動費と固定費に分けた上で、売上高から費用を計算します。

2.賃借対照表の予測

賃借対照表は売上高、繰延利益、今後の設備投資計画があれば作成できます。売上高がわかれば売上債権、棚卸資産、仕入債務などを計算することができます。

繰延利益からは利益剰余金の積み立てが額が求められ、今後の設備投資計画からは有形固定資産がどのように増えていくかを予測できます。最終的には現預金と借入金で調整を取ります。

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3.キャッシュフロー計算書の予測

損益計算書と賃借対照表があれば、それらの数字を使ってキャッシュフロー計算書を通常通りに作成します。

最終的には感度分析を実施して、ある特定の指標が予測からぶれたときに財務に及ぼす影響を明らかにし、その会社にとってどの指標が財務に大きな影響を与える要素なのかを把握するための分析です。

加えて、シナリオ分析によって会社に影響を及ぼすリスクをいくつか想定し、そのリスクが実際に起こった時に財務に及ぼす影響を明らかにするための分析です。感度分析がひとつの指標の変動しか見ないのに対し、シナリオ分析はシナリオごとに複数の指標を動かして、財務に与える影響を見ます。

この機会に、皆さんも予測財務諸表を作成してみましょう!

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