企業の利益を管理する上で、経費や購買をはじめとした支出を統合的に把握したり、シミュレーションしたりできることは大変重要です。支出管理を把握すると、コスト削減を始めとする様々なメリットが得られます。支出管理を適切に行うためのシステムもご紹介します。
支出管理(BSM)とは
支出管理とは、企業の経費や購買といった取引データを管理し、支出を適正化することをいいます。英語ではBusiness Spend Management(BSM)といい、欧米などの先進国では、大企業はもちろん、中小企業まで広く浸透している言葉です。
企業の支出管理の歴史は1973年まで遡ります。1973年に、支出を一元管理することを目的として、「R/1」という業務システム(ERP)がドイツのSAP社からリリースされました。これが、企業がシステムで支出管理を行うようになったきっかけです。その後欧米でERPの導入が進み、日本でも1992年頃からERPが導入され始めました。
2010年代以降のDX技術の推進により、支出管理の方法はSaaS型のツールへと推移しています。支出管理がデジタル化されることで、「誰が」「いくら」「どこに」支払いをしているのかが一目瞭然になります。支出に無駄がないかを手軽に分析でき、また、適正な金額での購買が可能になっています。
しかし日本では、現在でも支出管理方法が紙ベースまたはExcelやGoogleスプレッドシートを使用して、支出を勘定科目のみで管理している企業が少なくありません。
今、企業にとって支出管理が重要な理由は?
なぜ今、企業にとって支出管理が重要なのでしょうか?それは、グローバルな競争に勝ち続けられる企業を目指すには、適切な支出管理が必須だからです。
近年、DX技術の発達を背景として、世界中の企業の支出管理方法が大きく変化しています。クラウドを介したSaaS型支出管理ツールを駆使することで、企業全体の支払いに関する情報が一目瞭然になり、その結果、企業の無駄な支出を可視化できます。従来の勘定科目のみでの管理では不可能であった、色々な切り口からの細かい分析も可能です。どこに無駄が潜んでいるかを分析し、改善することで、企業のコスト削減を実現できるのです。
間接費(経費)は、企業の総支出のうち10%から15%を占めると言われます。日本の多くの企業では、その多額の間接費を管理するのが、管理部門の特定の社員に偏っていることも、支出管理の問題点のひとつです。支出管理を行う人が偏ってしまうと、支出が場当たり的になりがちです。支出管理ツールを使用することで、「どんな支払いが、いくら、どの部署で発生しているのか」を、社内の誰もが把握することができるため、支出管理の属人化を防ぐことができます。
国内外の競合他社に勝ち続けるためには、このようなツールの導入は不可欠です。
支出管理の対象となるコスト
支出管理の対象となるコストは、主に「経費」や「間接費」です。
「経費」とは、企業が収益を得るために必要となり支払った費用のことをいいます。具体的には、人件費、交際費、消耗品費、旅費交通費、通信費、福利厚生費、広告費などをいいます。このような支出は、所得税の申告時に企業の総収入から控除することができ、結果として企業が支払うべき所得税額を抑えることができます。ただし、経費の申告が不適切であると国税庁にみなされると、追徴課税などの重い罰則が科されます。社員の申告ミスや知識不足など、不正が意図的でない場合でも、ペナルティの対象になるのでご注意ください。社員から経費の申請を受ける際、その金額が正しいかどうか、そもそも経費として認められるものなのかをチェックする仕組みが必要です。
経費が「税法上」管理するべき費用である一方、間接費とは、「原価計算上」把握しておくべき費用です。間接費とは、製品やサービスの製造のために間接的にかかったコストのことをいい、具体的には間接労務費、材料費、減価償却費、賃借料、社会保険料などがあります。間接費の計算方法は、製造に直接関わる費用である直接費に比べて把握が難しく、また、配賦計算が必要になるため計算が複雑ですが、企業が製造するサービスや製品の原価を計算する上で必要になるため、正しく把握しておく必要があります。
経費は、その正しい申告のため、不適切な使用を防ぐためにきちんと管理を行うことが求められます。間接費は、売上原価を正しく把握し、経営戦略の策定に役立てるために管理する必要があります。
支出管理に重要なシステムの活用
経費や間接費などの支出管理を適切に行うには、「システムの活用」がカギを握ります。
システムの活用により、資材の調達から決済までを一元的に把握できます。どの資材をどのサプライヤーに発注するのかを固定し、自動化することで、発注作業にかかる時間を低減できるほか、より低価格のサプライヤーに固定して仕入れをすることができます。シミュレーションも可能になります。その結果、企業のほとんどの支出を管理することができ、支出をより適切・適正なものにすることができます。
購買価格を抑えるためには、本社などの特定の部門からの集中購買が効果的です。部品や材料などの購買を行う際、それぞれの事業所や部署からバラバラに発注を行うよりも、本社などの特定の部門に発注作業を集中させると、まとめ買いが可能になり値引き交渉が容易になります。また、在庫管理を一元化でき、無駄な発注や在庫切れを防ぐことができます。この集中購買を行うためには、各部署や事業所からの発注依頼を一元して管理する必要があります。統合したシステムなしには集中購買を行うのは困難でしょう。
業務や拠点の垣根をこえた統合的な支出管理を実現するためには、システムの活用が必須といえるのです。
支出管理を総合的に把握することのメリット
それでは、支出管理のためにシステムを導入するメリットについて説明します。主なメリットは、以下の4点です。
- 社内のコスト削減意識が高まる
コストを可視化すると、社内のコスト削減意識を高めることができます。適正な購買ができているかをチェックする機能が備わることで、適正な支出を継続できます。 - 集中購買が可能になり、サプライヤーとの交渉が有利になる
今まで事業所や部門ごとにそれぞれで発注していた資材なども、本社で一括して購買することでまとめ買いができるようになり、サプライヤーとの価格交渉が有利になります。 - コンプライアンスを遵守できる
取引に使用したサプライヤーや価格などをデータ化でき、調達先を見える化できるため、なぜそのサプライヤーを選定したかという理由を明確にできます。そのため、コンプライアンスの観点からも理想的です。 - 経営方針に合った購買ができる
業績の悪化に悩む企業にとって、支出の無駄を減らし、経営を改善することは大変重要な課題です。不景気が続く現代の企業においては、企業の貴重な資金を戦略的に使用することが求められています。支出管理システムを活用することで、「お金を本当に必要なところに、必要な分だけ使う」という、企業の方針に沿った購買が可能になります。
支出管理に役立つOracleのサービス
ここまで、企業にとって支出管理が重要であること、また、システムによる支出管理のメリットを説明しました。ここからは、適切な支出管理に役立つOracleのサービスを紹介します。支出管理ツールの導入をお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
- 統合経営管理ソリューションの「Oracle Fusion Cloud EPM」
Oracle Fusion Cloud EPMは、「予算管理・計画」「決算管理」「財務・税務管理」「コストマネージメント」「勘定科目残高管理」「レポート作成」の機能を備えています。データの蓄積や計算のほか、数字のシミュレーションとレポートの作成まで統合的に行うことができます。企業の正しい意思決定を効率よくサポートします。 - 調達・支払いを合理化する「Oracle Fusion Cloud Procurement」
OracleのFusion Cloud Procurementは、クラウドで調達から決済までの全てのサイクルを管理し、購買のプロセスを自動化できるシステムです。大手自動車メーカーでも採用され、間接材の調達コストの低減を実現しています。Oracle Fusion Cloud Procurementでは、購買データを蓄積して分析でき、調達戦略の策定のために必要となるデータを算出することが可能です。ペーパレスで承認や決済が可能であるほか、リモートワークでの業務にも対応していることが特徴です。 - クラウド型の調達管理システム「Oracle Procurement Cloud」
Oracle Procurement Cloudは、見積もりから支払いまで、調達の一連の流れをすべて一元管理することが可能な、クラウド型の調達管理システムです。各部門からの購入依頼書から簡単に発注書を作成することができるほか、購買データを可視化することで、購買のノウハウを社内で共有することができます。クラウド型のサービスのため、ユーザー側で設定することなく常に機能を最新の状態に保ちます。そのため、変化し続けるITに遅れることなく対応できます。このOracle Procurement Cloudを採用した大手航空会社からは、このシステムの導入により、購買行動の見える化と、ガバナンスの強化が実現できたという声が寄せられています。
まとめ
支出管理(BSM)とは、企業の購買を適切に管理し、支出を適正化することをいいます。支出管理システムを活用することにより「調達コストを削減できる」「コンプライアンスを遵守した購買ができる」などのメリットがあるため、適切な支出管理を行うためにはシステムの導入が不可欠です。自社に合った支出管理システムを活用することで、企業の経営を健全化できます。正しい支出管理を継続し、グローバルな競争に勝ち続ける企業を目指しましょう。
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