近年、注目を集めている役職がCDOです。日本における知名度はそれほど高くない役職ですが、DXの推進やデジタルマーケティングに対応するため、CDOを設置しようと検討する企業も増えています。本記事では、CDOに期待される役割や必要とされる背景、求められる資質などについて解説します。
CDOとは?経営側でDX推進を担う「最高デジタル責任者」
CDOとは、Chief Digital Officerの略であり、日本語では最高デジタル責任者と訳されます。企業におけるデジタル戦略を統括する役職であり、DXを推進するリーダーとしての役割も期待されています。
日本における知名度はそれほど高くはありませんが、欧米ではすでに多くの企業が設置している役職です。ただ、近年では日本でも徐々に広がりを見せつつあります。PwCコンサルティング合同会社が実施した「2020年CDO調査」の結果を見てみましょう。
同調査の「デジタル化推進を狙う専門役職の設置状況」において、「CDOという役職を設置」と答えた企業は2016年の段階で8%でした。しかし、2018年には10%、2020年には13%と少しずつではあるものの増えています。
https://www.strategyand.pwc.com/jp/ja/media/chief-digital-officer-study-2020-jp.pdf
CDOに期待される3つの役割
CDOに期待される役割は大きく3つ挙げられます。デジタルを活用した企業価値の革新や業務プロセスの見直し、データの徹底活用です。役職を設置したあとのイメージを掴むためにも、どのような役割が期待できるのか把握しておきましょう。
CDOの役割1:デジタルを活用した企業価値革新とビジネスモデルの創造
もっとも期待される役割が、デジタルを活用した企業価値の革新です。限定的な部門にITツールを導入して業務を効率化するといった小さな話ではなく、デジタルに関するスペシャリストとして、組織そのものの変革が期待されています。
また、デジタルを活かした新たなビジネスモデルの創造も、CDOに期待する役割です。現状のリソースや市場の状況を理解したうえで、デジタルを活かしどのような新ビジネスを立ち上げるべきかを考えます。
CDOの役割2:業務の自動化など業務プロセスの見直し
既存の業務プロセスを見直し、状況に応じてデジタル技術を投入し業務の自動化・効率化を図りつつ、デジタルマーケティングを推進する役割を担います。
すでにデジタルマーケティングへ取り組んでいるのなら、現状における成果や課題を洗い出し、必要に応じて改善策を練ります。加えて、必要なツールの選定や導入を進めるのもCDOの仕事です。
また、移り変わりが激しいデジタルマーケティングの世界に対応すべく、最新のトレンドや情報をキャッチする役割も求められます。
CDOの役割3:データの徹底活用
SNSに公式サイト、オウンドメディアなど、顧客との接点が増加したことで企業が扱うデータは従来に比べて増加しました。増え続けるデータを遊ばせておくのではなく、うまく活用する役割もCDOに求められます。
データにもさまざまな種類があり、目的によって必要なデータは異なります。そのため、いたずらにデータを収集するのではなく、目的を定めたうえで集めなくてはなりません。集めるデータや整理の定義づけ、利活用の方法を考えるのにもCDOの力が必要です。
[RELATED_POSTS]CDOが必要とされる理由
CDOが求められる背景として、DXを推進するリーダーの必要性が挙げられます。また、デジタル時代やデジタルマーケティングに対応するためにも、デジタルの専門家たるCDOの知見が求められます。
DXを力強く推進していくリーダーが必要になるため
DXは企業全体で取り組む必要があります。そのためには、一部門の責任者などではなく、ある程度強い権限のもと従業員をけん引するリーダーが必要です。
DX推進の取り組みでは、従来と働き方が大きく変わる可能性があります。そのため、一部の従業員から反感を買うケースも珍しくありません。
反感をもつ従業員に納得してもらうには、DXの意味やメリットなどを正しく伝える必要があります。デジタルの専門家であるCDOなら、その役目を果たせるでしょう。また、強い権限をもたせたCDOであれば、トップダウンでスムーズに取り組みを進められる可能性があります。
デジタルマーケティングの普及に対応するため
デジタルマーケティングとは、SNSやIoT、CRMやMAツールで管理しているデータなどを活用したマーケティングです。たとえば、MAツールで管理している顧客にステップメールを配信する、CRMのデータに基づき個々の顧客にマッチしたアプローチをするといった手法が挙げられます。
デジタルマーケティングは、従来と取り組み方が大きく変わるため、専門的人材の存在が欠かせません。また、取り組みにより組織へどう貢献できるか、必要なツールを導入するのにどの程度費用が発生するのかを考えなくてはならないため、デジタルの専門家と経営側の視点を併せもつCDOが求められるのです。
デジタル時代に対応するため
デジタルを活かしたビジネスモデルも次々と登場している中、時代に取り残されないためにはCDOのような専門家の活躍が欠かせません。
デジタル時代の到来により、バックオフィスのDX化に取り組む企業も増えてきました。バックオフィス業務のDX化を進め効率化が実現すれば、組織の利益を最大化できます。バックオフィスのDX化を成功させるためにも、CDOのような人材が必要なのです。
CDOに必要なスキル・資質について
CDOを設置したいと考えている企業であれば、外部からの採用も検討しているのではないでしょうか。外部からの採用でも社内からの登用であっても、CDOに必要なスキルや資質を把握しておくことが重要です。
CDOに必要なスキル1:ITやデジタル分野の知識
組織におけるITやデジタルの活用を統括する立場になるため、これらの分野に関する知識は必須です。ただ、CDOは組織全体のデジタル活用、DX推進を統括する立場であるため、現場で求められる高度な専門知識や技術までを求められるわけではありません。しかしながら、どのようなIT・デジタル技術が存在し、どうビジネスに活かせるのかを考えることができるレベルの知識は求められます。
CDOに必要なスキル2:コミュニケーション能力
DXの推進は組織全体で取り組むため、CDOはさまざまな部署の従業員と接する機会があります。中にはDXに対し否定的な考えをもつ従業員もいるため、うまくコミュニケーションをとりつつ取り組みを進める必要があります。
従業員への接し方をうまく変えるスキルも必要です。従業員にただ寄り添うだけでなく、ときには経営サイドの人間として権限を発揮することも求められます。
場合によっては、デジタル事情に疎い経営層からの理解を得なければならないケースもあります。そうした際にも、円滑な意思疎通を実現する高いコミュニケーション能力が問われます。
CDOに必要なスキル3:リーダーシップやマネジメントスキル
DX推進を組織全体で成功させるには、プロジェクトをけん引できる強力なリーダーシップが重要な役割を果たします。また、従業員だけでなく、ときには経営層に対しても実施する施策について納得させなくてはならないため、より高度なマネジメントスキルも求められるでしょう。
CDOには、ITやデジタルを用いて企業文化や組織の構造を変革する役割が期待されています。その役割を全うするためにも、強力なリーダーシップやマネジメントスキルが必要なのです。
CDOはデジタル社会の中でこれからも必要とされていく
デジタル技術は日々進化しており、将来においてもその重要性が失われることは想定できません。企業が扱うデータは多様化し、デジタルサービスも増え続けると考えられるため、より一層CDOの必要性は増していくでしょう。
まとめ
デジタル時代への対応やDXの推進を成功させるには、CDOのような専門家が欠かせません。デジタル環境はより高度化しつつある中で、デジタル化やDX化は長期的な取り組みが必要であるため、CDOの重要性はより一層高まると考えられます。
CDOの採用や育成を考えているのなら、その人材がもつITやデジタル分野の知識はもちろん、マネジメントスキルやコミュニケーション能力などを見極めつつ検討するとよいでしょう。
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